第21話 ヒロインメドレー①
いや…、いきなり未亡人好きを疑われたら誰でも絶句するよね…。気持ちの問題じゃないから!関係ないからー!!しかし、火のない所に煙は立たない。疑惑には根拠があるはず。どこかで僕の話を聞いたことになるけど…。ふむ、犯人は一人しかいないじゃないか。モモめ!お前はどれだけ罪を重ねれば気が済むんだ…。僕のあらぬ情報を朝日さんに吹き込むなんて、万死に値するっ!罪深きモモに引導を渡す時が来たようだ。―――ぶちのめしてくれるわっ!!
「美音さん、診察の時間ですよ。」
「は~い。」
それはそうと朝日さんとは連絡先交換したよ。やったね!他のメンバーとは既に交換したみたいだけど、僕だけお断りされたら今頃は枕を濡らしていた自信がある。あの時は悲劇を演じ、変にネガティブ思考に陥っていたけど、あれでハイ、サヨナラとは普通ならないよね。という訳で、朝日さんと友達になりました。丸。
「ぇ………、あの…、何してるんですか?」
気付けば、僕は祈りを捧げていた。診察室に入り、椅子に座ろうとしていたのにだ。彼女を目の前にして体が勝手に動いてしまったよ。僕の唐突な奇行に驚き、固まっていた彼女が問い掛けるが、正直なところ僕にも分からない。それは彼女が―――ヒロインという存在故か。
掛森美月
同学年のおっとりしたお姉さん系。治療魔法の天才。欠損すら治すことが出来る回復魔法を扱えるが秘匿して、力をセーブしている。手を抜いているのはダンジョンに潜る時間を確保する為。彼女は見た目からは想像出来ないが珍しくも僧侶タイプで、更に戦闘マニアである。服の下には鍛え抜かれて引き締まった魅惑の肢体が隠されており、逆に内側から押し上げる双丘が女性の柔らかさを強調し、完璧な白衣の天使と化している。しかし、騙されてはいけない。武器は拳・棍・メイスを使うのだが、理由が肉を打つ感触をダイレクトに感じたいからだと仰っております。更に付け加えると打たれるのも好きだとか…。脳筋・変態・腐………。彼女を飾り立てる言葉はいくらあっても足りないだろう。
ある事件をきっかけに聖女と呼ばれるようになるが、僕からしたら今の彼女ですら慈愛に溢れ、優しい光を身に纏っているのが見える。それはどこか親しみを感じ、安堵感を与えてくれる。包容力たるや聖母の如し。ママと呼ぶのだけは避けたい。
「申し訳ありません。では、よろしくお願いします。」
返答に窮するので謝罪し、素早く椅子に座る。掛森さんは困惑の表情を浮かべているが、診察の方が重要と切り替えて僕に手をかざす。どうやら、これでメディカルチェックをしているようだ。まるで陽だまりに包まれている感じを受け、気持ちがいい。
「…はい。ケガは完治、体調も万全なので、もう大丈夫ですね。」
「ありがとうございました。…そういえば、病室に来てましたか?」
「ええ。経過観察は必要ですからね。………ふふっ、いい物を見させて頂きました。」
「そ、そうですか…。」
やっぱり掛森さんだったか…。後半のセリフが不穏だけど、男同士の戯れに妄想が膨らんだんじゃないと思いたい。きっと、男の友情に感動したに違いない!だから、気にしてはいけない。掛森さんが僕をどのような扱いをしたか、聞いてはいけないのだっ!!
……………
………
…
♢♢♢
さて、無事に退院したはいいけど、時間に余裕がある。荷物を纏めていた時に気付いたけど、武器がダメになっていたので錬金課に行くことにした。それに、もう一つ気になる物があるんだよね。
ざわざわ…
何やらダンジョンの方から騒めきを感じる。なんだ?もしや、魔物集団暴走かっ⁉―――まあ、違うんだけどね。悲鳴や怒号が聞こえないし、この騒めきは何度か経験しているので分かる。あの人がダンジョンから出て来たのだろう。
通称、赤ずきん先輩。究極のボッチ。ソロ探索者。制服の上にローブを纏い、帰還すると必ずそのローブが真っ赤に染まっている。毎回、出口から暫く赤い点を引いて行くことから、直前まで鮮血を浴びていたことが窺える。その姿に誰もが息を吞み、どよめきが広まるのは仕方がない。
相変わらずだなぁと思いつつ、錬金課へ歩みを続ける。
噴水がある広場に足を踏み入れると同時に通りの向こうから集団が来るのが見えた。女の子2人をトップに据え、取り巻きの男女がぞろぞろ付いて行く光景は非常に目立つ。ツートップがベンチに腰掛けると周囲の者たちは横に展開する。2人の前と後ろに立ってはいけない!ファンクラブ鉄の掟でもあるのだろうか?ていうかヒロインだった。
玖条アリエッタ
見た目は完全に外国人だが、生まれも育ちも日本。ハーフだが中身は日本人なので、異文化コミュニケーションによる勘違いは起きない。…筈なのだが、やたらとスキンシップが激しい。その理由が何故か最初から高い好感度によるものか、はたまた外国人の血なのかは分からない。とにかく彼女は人懐こい可愛い後輩キャラと言ったところ。攻略は比較的簡単だが、稀にヤンデレ化するので注意が必要だ。
「そういえば…、学園で見掛けるの初めてだなぁ…。」
僕はもう一人の女の子を見て呟く。馴染みが深い娘だけど最近会話したことがなかったので、元気で学園生活を楽しんでいるのを知って安心した。まさかヒロインの友達だとは思わなかったけどね。
噴水を挟んで観察をしていたけど、取り巻きが僕に対して警戒する素振りをし始めた。おっと、これ以上はトラブルの予感。しみじみと感じながら足早に広場を抜ける。それまで、背中に警戒とは違う感情の視線が混じっていたが、果たして気付くことはなかった。
今年はもっと頑張りたいと思います!
引き続きお付き合い下さい。
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