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やっぱり僕はモブだった。  作者: 白蛇ちゆき
第1章 ヒロインだからって出番があると思うなよ
20/29

第20話 言葉を重ねて

一旦、CMです。

 あれから約4か月。天園さんとは事件に一緒に巻き込まれ、訳も分からない解決をして以来となる。当時は声を掛けられるかもしれないと毎日ドキドキしていたなぁ。どう答えよう?とか真剣に考えて何パターンか用意していたりする。


 『あっ!君はあの時の!!』

 『………誰?』


 僕に指を向けながら嬉しさに声が弾んでいる天園さんに対して、素っ気なく返す。僕にとっては大したことない、取るに足らない一幕に過ぎないですよ、と言わんばかりの態度。まあ、そんな物は必要なかったけどね。…恥ずかしぃ~。そのことに気付いた時は悶々としたものだよ。


 期待は日々過ぎる時間に薄められ、僕は僕の日常へと戻っていく。天園さんとの関係は特別なただのクラスメイト。ヒロインという認識が、他の生徒より一段上に置いてしまうのは仕方ないよね。


 しかし、今!あの天園朝日が僕に会いに来た⁉―――ここは最初が肝要だぞ!よしっ。


 「あ、ああああ、あああさん!ど、どうしたの?」

 「ふふっ。あ、しか言えてないよ。」


 失礼、噛みました。クソっ、神はいなかった…。まあ、笑ってくれたし、掴みはOKでしょ。やっぱり、無邪気な笑顔はいいね。堪能するのも束の間、天園さんは姿勢を正し、真剣な表情になった。


 「私は今回、代表として君に謝罪しに来ました。それと個人的に感謝を伝えたくて…。」

 「……………?」


 僕は首を傾げることしか出来ない。心当たりが全くない。謝罪?感謝?なんぞや。頭に疑問符を浮かべている僕に気付いた天園さんは説明を始める。それは僕が気絶してからの出来事だった。―――――


♢♢♢


 私達は奇しくも最高の観戦席となった丘から興奮冷めやらぬ舞台へ足を踏み入れた。彼らはちらりとこちらを確認するだけに(とど)まり、敵意を向ける様子はない。


 「久しぶりね。鬼ヶ島くん、久世くん、一式くん。」

 「…識か。さっきヤスに聞いたがスタンバってたんだろ?」

 「介入する前に終わってしまったけどね。それよりも、仲間が迷惑を掛けたわ。謝罪します。ごめんなさい。」

 「気にすんな。ダンジョンじゃあ殺るか、殺られるかのどっちかだろ。魔物も人間もな。―――しっかし、お前らが来てたんなら悠翔も無茶する必要なかったのにな。はっはっは。」

 「仕方ないでやんす。誰がいるかまでは分からないんでやんすから。精々、敵意があるかどうかでやんすよ。」


 どうやら面識があるみたいだけど怒りを露わにするでもなく、気にした様子はない。大柄な男の子の個人的な意見ではなく、パーティー全体としての総意なのが、なんとなく雰囲気から感じることが出来る。とっても気持ちのいい人達ね。なんだか和気藹々としてきた。それにしても凄い!この3人、顔と性格が完全に一致しているわ!


 識さんは胸の(つか)えが下りたかのように一つ息を吐き出した。


 「…そう。ありがとう。―――あなた達が上手くやれているようで安心したわ。それで、あなた達の手綱を握っているであろう彼は、大丈夫なのかしら?」

 「おいおい、俺達は紐で繋がれた珍獣じゃあねぇぞ。悠翔なら気絶してるだけだ。必要があるとすれば、ベッドに放り投げてやることだな。」

 「分かったわ。私達が護衛するから、速やかに外に出ましょう。」


 1番気になっていた男の子は地面に横たわり、女の子が治療を施していた。


 「終わったでやんすか?」

 「うん。…治療と言っても、状態固定と鎮痛効果を与えるくらいの応急処置しか出来ないからね。」


 悔しそうに彼女は言う。治療魔法の使い手は戦闘が苦手な神官タイプの人が大半で、療養棟に詰めているのが実態なのよね。


 「………あれ?この子…。」

 「天園さん、知り合い?」

 「直接の面識はないけど、お母さんの命を助けてくれた人だよ。」


 今まで女の子の陰になって顔が見えてなかったけど、そうだよ!この子だ!わぁ~、こんなことってあるんだ!戦っている時は勇敢で凛々しかったわね。お母さんが惹かれるのも分かる気がする。今は可愛い寝顔をしてるけど。ふふっ。


 「じゃあ、行くか。識、頼むわ。」

 「あっ、待って!私が彼を背負うわ。君、ケガが酷いじゃない。」

 「大したことねぇけど。まあ、やりたいなら任せてもいいか?」


 大したことない⁉制服はボロボロだし、火傷もしてるでしょ⁉………あれ?よく見たら日焼けして真っ赤になった感じで本当に大したこと…いえ、日焼けも火傷………ああ、もう!分かんなくなってきたじゃない!!取り敢えず、どんな体してるのよ!!


 「おっ、いたいた。―――ん?鬼ヶ島じゃん。なんだよ、襲われてたのお前だったのか。」


 私が背負って、そろそろ出発しようとした時だった。突然の第三者からの声。どうやら、斥候の男の子が来てたみたい。


 「どうしたの?合流ポイントはここじゃないわよ。」

 「様子見だよ、委員長。俺はダンジョンを散歩しか出来ない奴とは違うからさ。」


 明らかな嫌味。今まで朗らかだった空に雨雲が覆うように彼らの怒りが爆発寸前まで膨れ上がる。それに気付かず、(とど)めの言葉を続ける。


 「ていうか、そいつ、何で天園さんに背負われてんの?…ああ。鬼ヶ島も大変だな。仲間に足手纏いがいると。いや、文字通りお荷物じゃん。ギャハハ。」


 爆発した。それは私達も同じだった。どうして、そんなことが言えるの?彼は仲間の為に命を懸けて戦った立派な戦士だ。彼女らも認めている。特に前衛の人達は自分が認めた戦士を侮辱されることを許すわけがない。怒気は圧となり、彼は堪らず後退りした。


 「…な、なんだよ!」

 「その口を閉じなさいという意味よ。皆には合流したら、そのまま帰還するように連絡してあるから、あなたもとっとと戻りなさい。」


 孤立無援となったことを感じ、奮い立たせる為か声が大きくなる。みっともない。それに対して、識さんはいつも以上に冷ややかな態度で、辛辣に言い放つ。あっ、逃げるように行っちゃった。


 「ごめんなさい。」

 「…もう、行こうぜ。」


 体の中の熱を吐き出してから答えていたけど、かなり長かった。憤りの強さを感じる。空気が悪くなり、移動中は会話もほとんどなかった。でも、この空気を打ち破ったのは意外にも―――――


 「ん~。今日のモモ、抱き心地、最高…。抱き枕にしたいくらい…。それに、なんか良い匂いがする。モモのくせに生、イキ、な……………。」


 耳元で囁くように言われ、心臓が跳ねる。え?寝言⁉も、もう何言ってるの?…そういえば、汗かいてたんだった。今になって気になり、羞恥に悶える。か、嗅がないでぇ…。


 「はっはっは。間違えてやがんの!」

 「ハル君、意識ないんだから笑っちゃダメだよ。」

 「でも、ユウト殿に教えれば面白い反応が見られるはずでやんす。」


 一瞬で雰囲気が好転する。実は起きてない?そこからは警戒を怠らずに、しかし、会話も弾み楽しい一時となった。…あっ、寝言のことは内緒にしてね。私も恥ずかしいから!絶対よ!!


♢♢♢


 「―――――て、ことがあってね。私がお願いして代表で来ました。ごめんなさい。」

 「気にしなくていいよ。多分、他の誰かが言ったんじゃないかな?」

 「うん…。ふふっ。やっぱり、いいパーティーだよね。皆からも気負わなくていいって言われてたし。―――じゃあ、ここからは私の本題ね。」


 へぇ、そんなことがあったんだ。まさか天園さんのパーティーに合流してたなんて、寧ろ、こっちがお礼を言いたいくらいだよ。帰りの安全性が格段に上がっているじゃないか。おっと、次の話に移るみたいだ。


 「私の大事な家族の命を助けてくれて、本当にありがとう。」

 「………ああ!桜子さんのことか!!」


 最近危ないところを助けたとなると桜子さん以外いない。いや~、ビックリだね。天園さんにお姉さんがいたなんて。よく見たら、そっくりじゃないか。正しく美人姉妹。エロゲの記憶では影も形もなかったのにね。それに、母親が亡くなった事実はなさそうだ。事故現場と日付が分からず、僕には手を(こまね)くことしか出来なかった。偽善かもしれないけど、そのことが棘となり心に刺さっている感じだったんだよね。全くっ!当てにならないじゃないか。利用出来るのはエロシーンだけだよ。


 「…な、名前で呼んでるの?」

 「え?まあ…、成り行きで?」

 「そ、そうなんだ。ところで、美音君。…う~ん、ミネ君?…よしっ!キミのことは悠翔くんって呼ぶね。だから、私のことは朝日って呼んで。」

 「いや…、いきなり名前で呼ぶのはちょっと…。」

 「朝日って呼んで。」

 「でも…。」

 「朝日って呼んで。」

 「あはは!桜子さんと同じこと言ってるよ。」

 「………」


 流石にお姉さんと同じだと知り、赤面して俯いちゃった。おっと、いけない。


 「ごめんごめん。それで、何か言い掛けてなかった?」

 「…もうっ!―――実はお願いがあって、これ、着てみてほしいの。」


 膨れっ面しても可愛いだけだよ。そして、取り出したるは見覚えのある僕のカーディガンだった。複雑な心境ながら、言われた通りに袖を通す。うん、ピッタリだ。そりゃあ当然だよね。僕のだもん!…いや、違う。この違和感…はっ!胸の部分が緩んでる⁉これはもしや…ぐへへ。


 「着てみたけど、このあとは?」

 「ありがとう、もういいよ。おかげでイメージしやすくなったよ。」

 「???」

 「あ、一人で納得してるだけじゃ分からないよね。これは私を助けてくれた人の物なの。ちゃんとお礼がしたいんだけどね…。」

 「………えっと、どんな人なの?」

 「それが、眩しくてよく分からなかったの。」


 なんてことだ!天園さん、いや、朝日さんは僕のことに気付いてなかったらしい。確かに煙が充満してたし、逆光になっていた気がする。じゃあ、と打ち明けようとした言葉を呑み込む。今更、名乗り出たからどうなるっていうんだ。そもそも証明することが出来ないのだから…。一瞬触れた線は結局のところ離れていく運命らしい。


 「そっか、見つかるといいね。」

 「うん。―――そろそろ行くね。このあと、クランの反省会があるの。」


 椅子から立ち上がり、背を向け去ろうとしている。手が届きそうで届かない距離。今の僕達の関係を如実に表している。行かないでと、つい手を伸ばしたくなる。


 朝日さんは最後に振り返り、問う。沈みゆく気持ちが理解を拒み、僕の口から音を発することを禁ずる。


 「―――一応、確認なんだけど、………悠翔くんって未亡人好きなの?」

簡単にまとめると会話の大切さ。

ちゃんと話すことで分かることもあれば、言葉の選択で行き違いが起きることもある的な。


身に付ける防具はナンセンス。

最強装備、『制服』

夢が広がるね。

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