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やっぱり僕はモブだった。  作者: 白蛇ちゆき
第1章 ヒロインだからって出番があると思うなよ
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第2話 モブの扱い

 『魔神♡くえすと』


 ある日、この世界に魔神が降臨した。暗雲が垂れ込め、その分厚い雲を突き破る雷光が走り、魂に恐怖を刻む音が轟く。正に天変地異。誰もがこの世の終わりを感じた。死を受け入れ始めていた人々に魔神は言った。


 「世界の半分は頂いた。返して欲しくば、勇者よ!我の元に来るが良い!」


 言葉の意味を理解出来ないでいると世界が揺れた。揺れが治まると魔神は消えていた。白昼夢でも見ていたのだろうか?だが、それは直ぐに現実だと証明されることになる。世界各地に塔が出現したのだ。後に洞窟タイプの物も見つかるが、中は動物とは異なる獰猛な生物やオカルトの存在、さらには定番のスライムがいた。物語に出てくるようなこの構造体はダンジョンと呼ばれるようになる。


 人類はダンジョンに挑んだ。現代兵器を用いて果敢に戦ったが結果は芳しくなかった。強力な兵器は広い空間でなくては使えない為、限られた広さのダンジョン内では攻略は困難を極めた。徒らに時は過ぎたが、20年も経った頃には状況が好転する。新人類が誕生したのだ。その者達は魔力を宿しており、超常の力を振るう。魔神が世界に干渉した影響か、はたまたダンジョンから漏れる力の効果か。いつの間にか世界は魔力に満ちていたのだ。


 そこから快進撃が始まる。また、ダンジョンは資源の宝庫だった。魔石と呼ばれる物が採取されるようになるとエネルギー問題は一気に解決する。ダンジョンの恩恵を受けるようになると国は完全な管理下に置くようになったのだ。そして、各地には攻略者を育てる名目でダンジョンの近くに勇者育成校が建てられていく。実際は資源採取をする優秀な者達を集めるという目的だったが、そんな透けた思惑は誰もが理解していた。それでもダンジョンには夢と希望が溢れていた為、若者は挙って学園の門を叩く勢いだったそうだ。


 魔神が降臨して100年余り。世界は平和だった。この歴史は僕も学んだので知っている。でも、エロゲの舞台なんだよね…。ゲームでは基本的にヒロインの好感度を上げる。一定値に達するとパーティーに加入する。そして、パーティーを組んでバトルパートに挑むというものだ。ここで重要なのがラブ・システム。略してLS。このシステムは愛の指数を表し、セックスをするとステータスにその数値を乗ずることが出来る。汝、これで強敵に挑んでも安心だね。更には条件を満たすと乱交シーンが拝める。流石エロゲだね。意味が分からないよ。それに、LSをMAXにするとハードプレイを観賞出来るとやり込み要素満載だ。嬉しいね。最高だよ。


 ちなみに魔神は説明文のみで、最後まで出て来なかったので姿形どころか、どのような存在かも全く分からない。…これ、魔神関係なくない?


 1年近く経ち、夢のことも気にしなくなっていた。勿論、整理整頓して脳内の片隅にしまってある。エロシーンは直ぐに脳内再生が出来るように常にスタンバイしている。なんてね。…ところで、ここはどこだろう?2年生に無事進級することが決まり、春休みを謳歌していたはずなのに…。だが、気が付いたら知らない場所に立っていた。近場のコンビニに寄るだけだったので、スマホを家に置いて来たのが災いした。


 「あっ、向こうから人が歩いて来てる。道を聞いてみるか。」


 その人物がはっきり視認出来る距離になると声を掛けることを躊躇ってしまう。


 「わあ、美少女過ぎる!年も同じ位かな?ああ~、ナンパと思われたら嫌だな。ここはスルーしよう。―――それにしても、あの娘ってやっぱり…。どうして、こんなところにいるんだろう?―――――えっ⁉」


 彼女の後ろから車が近付いていたが、真横で急停止するとドアが勢いよく開かれた。驚いている彼女を余所に降りて来た男が布で口元を塞いだ。すると彼女は体から力が抜け、倒れそうになるのを男が抱えて、車に運び込まれてしまった。…あっ、誘拐犯達と目が合っちゃった。動けないでいる僕の元に男が迫る。無遠慮に繰り出された拳が僕の腹に吸い込まれ、激しい痛みに視界が歪む。そして、遠のく意識の中で僕は思った。


 ―――なんで、僕は腹パンなんだよ…。

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