第13話 世界の中心は、俺だ!
「ああ、最高の気分だぜっ!」
自室で独り言ちるが誰にも聞かれる心配がないから、ついつい声が大きくなってしまった。常々、リア充共が馬鹿みたいに騒いで、何がそんなに楽しいのか分からなかったが、なるほど、同じ土俵に上がることで、ようやく理解することが出来た。ったく、ずりぃよな。今までの人生がカスで虚無の無価値だったことを思い知らされたじゃあねぇか。いや、元々そう思ってたわ。まっ、そんな人生は既にゴミ箱にポイっしてあるし、これからの人生を楽しもうじゃないか。何たって俺は、この世界の主人公なんだから!
―――――4月上旬、目を覚ますと見慣れた筈の初めて見る天井を瞳に映して起床した。妙な感覚だ。そのズレに気分が悪くなり、眩暈がする。部屋の中を見渡すが、やはり誰かの…いや、俺の部屋だったな。自分の存在があやふやな感じがして姿見で確認した瞬間、頭が覚醒した。
「俺は峰勇人。…なるほど、そういうことかっ!!」
これは所謂、憑依ってやつか。となると前の俺はどうなったんだ?死んだか?まっ、どうでもいいな。それにしても、峰勇人か。確か、エロゲの主人公だ。数多くやったエロゲの内の一つだから内容もうろ覚えになっている。しかも、やり込み要素が多くて途中で諦めたんだったな。ヒロインは可愛いし、エロシーンのクオリティーは高かったけど、面倒臭さが勝ってしまった。もっと気軽に抜ける物作れよ!どこに拘ってんだ!と叫んだのを思い出した。
俺が言うのもなんだが、イケメンだよなぁ。おもむろに部屋着を脱ぎ、パンツ一枚の姿を鏡に晒す。そこには高身長で均整の取れた体。鍛えられ引き締まった筋肉。下を向いても出っ張った腹はなく、大腿部には稜線が走っていた。正直に言ってスゲー。美すら感じる。無駄に鍛えている奴のことを馬鹿にしていたけど、これは考えを改めてやってもいいだろう。さて、肉体美を堪能した後は残すところ一つとなったパンツと言う名のベールに隠された部分の確認だ。エロゲの主人公なんだから、さぞかし立派な物がぶら下がっているに違いない。それでは、いざ!御開帳ー!!
「………あ、あれ?可笑しいな…。なんか見慣れた物が…。」
気付いたら膝を着いていた。い、いかんな。トラウマが蘇ってしまった。見間違える筈もない。これはコンプレックスの象徴たる俺のだ。
「ていうか、なんでココだけ交換されてんだよ!俺の本体はナニだとでも言いたいのか⁉」
落ち着け、俺…。慌てる必要はない筈だ。何故ならここには、あのDQN共はいないのだから…。よしっ、大丈夫だ。俺はイケメン。下半身に脳が付いてる奴らとは違うんだよ。それよりも、状況の確認をしなければ。
俺と峰勇人の記憶の擦り合わせを行っていく。ここは自宅で父は海外赴任、母は世話をする為に付いて行くというテンプレだった。つまり、この家には俺しかいない。まっ、こいつはそれをいいことに女を連れ込んで、ヤリまくりだったしな。………そうか、そうだよな。俺はエロゲの主人公。ヒロインに手を出しまくっても許される存在じゃないか!あの糞ビッチ共を見返せないのは残念だが、まあいい。そんなものは最早些事だ。ハハっ。楽しくなってきたぜ!
この世界を少し見ておきたかったが、記憶の整理をしていたら夜になっていた。明日は学園がある為、その辺の確認をしていたのだが、授業内容、交友関係の情報だけでも膨大な量があり、正直言えば溺れていた。不安を抱きながら明日へと挑むことになった。まっ、結果で言えば楽勝だったな。峰勇人がハイスペックだったのを忘れてたぜ。俺は内心初めての場所に恐々としていたが、体はしっかり動いてくれるし、口は勝手に言葉を紡いでくれた。この時の俺の状態は普段通りにしているのに、記憶を引き出して適応しようと必死だった。このズレに慣れる、または無くなるには時間が掛かりそうだ。その直感は正しく、結局、夏期休暇間近になってしまった。―――――
「この部屋も汚れて来たな。何で世話をしてくれる姉か妹がいねぇんだよ。」
俺が真の意味で峰勇人になった時に取った行動はモブ女共を練習台にして女に慣れる特訓をした。いきなりヒロインとか無理だろ、おいっ。だが、そろそろ行動に移る頃だろう。ヒロインの好感度は0だが、遅れた分も一気に稼いでやるぜ!まずはやっぱり天園朝日だな。なんだかんだ面倒見がいいし、家庭的な所もあるからこの部屋も何とかしてくれるだろう。ったく、エロゲならあらゆる面で世話をしてくれる姉妹を用意して欲しいもんだぜ。
「取り敢えずヒロインとパーティーを組んで格好いい所を見せておくか。」
同じクランとは言え、まだ一緒に行動したことがないんだよなぁ。さて、どうしたものか…。おっ、いいこと思い付いたぞ!俺はスマホでメッセージを飛ばす。クランのメンバーに対して提案、もとい強制イベントの開始を宣言した。




