第12話 親友キャラの裏設定は深い…かもしれない
勇人は俺の親友だ。それに、恩人でもある。まあ、あいつはそんなつもりもなかっただろうから言わないけどな。
「帰ったか、聖士。」
「わざわざ呼び出して何だよ、兄貴。報告ならちゃんとやってるだろ?」
「勇者スキルを使った者が目撃された噂を聞いた。直接話を聞こうと思って、な。」
俺は今、実家にいる。普段は寮で生活しているが、夏期休暇だからと言って帰るつもりはなかった。でも、呼ばれたからには顔を出さない訳には行かないんだよなぁ…。溜息しか出ないわ。家族と仲が悪いのかって?それ以前の問題だっての。俺の家族、いや、一族は狂信者の一派なんだけどさぁ、俺はリーダーの次男として生まれた。長男の予備として育てられれば、まだましだったかもしれない。俺は後継者様たる兄貴の道具として扱われた。だから俺には自我という物が存在しなかった。あいつと出会うまでは―――
小学の思い出と言われると正直何もない。指示されたことには素直に従うし、用がない時は席に座り待機状態。そんな俺に友達なんている訳ないだろ。ましてや、俺から話し掛けるなんて有り得ない。周りも俺のことを不気味に思っていたのかも知れないな。だが、小5だったか?勇人と同じクラスになったのは。あいつはクラスの中心になるような人気者だったが、周りの空気を気にせず俺に話し掛けて来た。聞かれたことには答えたが次第にそれも難しくなる。どうして?なんで?と聞かれる度に自分で考えることを余儀なくされたからだ。最初の内はかなり時間を要したが、それでも勇人は俺が答えるまで待ってくれた。そして、俺の言葉を受け止め、肯定してくれるのだ。この頃から、俺の中でモヤモヤしたものが渦巻き始めていた。
中学に上がっても勇人とは何の縁か同じクラスになった。勇人との微妙な関係は続いていたが、最近は俺から距離を取ろうとしていた。自分で思考することが出来るようになると、つい思ってしまう。勇人は人気者だし俺が近付いていい人間じゃない。または、勇人のことは好きだし、友達になりたいとも。この葛藤があるため勇人を遠ざけたかった。皮肉な物だ。壁がないのに周りから壁を作られていた頃とは逆に、自分で壁を作るようになるなんてな…。だが、勇人は俺の気持ちを知ってか知らずか、構わず俺に相も変わらず接して来た。
俺の感情はついに爆発した。モヤモヤと渦巻いていた物を抑え切れなくなり、勇人と初めて喧嘩になった。だからって河川敷で殴り合いとか、いつの時代の青春だよって言いたい。まあ、この経験からこういう、くせぇ青春物は嫌いではない。ていうか、あいつ意外に強くてビビったわ。俺は小さい頃から訓練をさせられてたから同年代の奴らより強いと思っていたのに勇人とは互角だった。だから、終いにはお互い力尽きて倒れていた。妙にスッキリした気分と夕焼けの綺麗さには感動したなぁ。なんだか世界が違って見えた。それから俺はなんとなしに今の気持ちを吐露していた。勇人はもう友達だと思っていたとか呆れていたけど、仕方ねぇだろ!友達の定義とか知らねぇんだから!
―――俺はこの日、村上聖士という一人の人間になれたんだと自覚した。
中学卒業後は一学に行くことにした。勇人が行くってのもあるが、兄貴から命令されていたからでもある。だが、最悪の事態が起きてしまった。勇人が勇者スキルに目覚めてしまったのだ。正直かなり焦った。取り敢えず、人目があるところでは絶対に使わないように言い聞かせた。俺の鬼気迫る様子に何かを察し、素直に頷いてくれたのは助かった。その約束は今まで守られていたのだが…。
俺がこんなに焦ったのには身内が関係している。狂信者の中でも異端扱いされかねない思想を持っているからだ。魔神に会う為ではなく魔神から力を奪うことを本気で考えている。頭可笑しいんじゃねぇかと思う。そして、勇者スキル持ちが現れたらどうなるか。協力的ならまだしも、拒否すれば人体実験を躊躇なくやるだろうな…。勇人の日常は俺が守るんだ!
「『何か隠しているだろ?』………か。」
最近の勇人は可笑しい。まるで勇人の皮を被った別人だ。何故そんな風に思ったのか、よく分からないが…。確かに隠し事はあるが、俺は勇人の為なら命を捨てる覚悟がある。だが、お前は俺を信用出来ないのか?
「どうしちまったんだよ、勇人…。」
かなり疑われていたが、兄貴の追及を適当に躱した。時間が大分経っていたようで、辺りが暗くなったその帰り道。星が輝き出した空に向け呟いたのだが、俺の言葉は夜の闇に吸い込まれ、当然ながら答えは返って来なかった。
初感想頂きました。遅ればせながら感謝です。
早めの更新を心掛け、努めて行きたいと思います。




