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やっぱり僕はモブだった。  作者: 白蛇ちゆき
第1章 ヒロインだからって出番があると思うなよ
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第11話 させないよ

 夏期休暇だー!いっぱい遊ぶぞー!!なんてね。寧ろ、ダンジョンに行く時間の方が増えるってもんだよ。学園からも魔石提出のノルマが課されている。夏休みの宿題ってやつだね。それに大した量ではないので、資源調達のついでで事足りるのだ。元々、探索者たる者、自己管理が大事だから体を休めつつ攻略の計画を練り、期間までにクリアするように設定された昔からの教訓だったりする。探索者は何かとお金が掛かる。それは学園からサポートを受けている学生にも当て嵌まる。僕もその一人なんだけどね。装備品の消耗が何かと激しいので、この期間に資金を獲得したいところだ。だからといって、考えなしでダンジョンに挑んでも無謀だし、効率が悪い。大事なのは計画性なのだ。パーティーの皆と打ち合わせをし、目的・日数・目標などを決める。と、なんだかんだ言ったけど今日は休み。完全なオフなのだ。


 僕は一人、街を散策している。気が付いたら結構遠くまで来ていたらしい。ここは天園さんに会った街だった。う~ん、無意識にこの街へ来てしまったのは未練からなのかな?まあ、折角だからぶらぶらして行こう。風の吹くまま気の向くまま僕は歩を進める。どうやら人通りの少ない道に出たようだ。通りの向こうから来る人が一人、それ以外に人の気配は感じない。買い物帰りなのかバッグを手に提げた女性だ。なんとなく、あの時もこんな感じだったと過去の光景を重ねてしまうのだった。


 「そうそう。その人がまさかの天園さんで、後ろから来た車が突然……………えっ?ウソだろ⁉」


 その女性の後ろからトラックが来ていたのだが、急にスピードが上がり、中央線を越えて暴走していた。運転手は帽子を深く被っていて、表情どころか顔さえ分からない。居眠り運転か⁉と思うのも束の間、女性はまだ気付いていないようで、このままでは轢かれてしまう。僕は一目散に駆け出した。声を掛けるかどうか迷ったが、パニックになったら行動の予測が出来ないのが怖い為止めた。案の定、僕が急に走って来たので女性の足が止まってしまう。でも、距離は稼げた。僕の方が早く届く。女性の足を痛めないよう注意しながら、フワッと浮くように足払いをする。そして、横抱きをして反対側の歩道まで跳んだ。


 トラックが壁に衝突し、ガリガリと削れる耳障りな音が閑静な街に響く。女性の買い物バッグは振り落とされ、トラックに轢かれて中身が散乱していた。卵は割れ、原形を留めていないし、トマトが潰れていたのが妙に生々しい。女性も自分が居たところを見ていたが、次第に青褪めさせ顔を逸らすと震えながら、僕に強く縋りついて来た。落ち着くまで宥めることに尽力したのだった。


 ふぅ~。僕の力でも助けられて、本当に良かったよ。結構嬉しい物なんだなぁ。それに、この女性の異世界転生を阻止することに成功した。おっと、安心したらバカなことを考えてしまった。それにしても、この人誰かに似ている気がするなぁ…。


 騒ぎを聞いた人が集まって来た。閑静だった場には今や野次馬で煩いくらいだ。そして、これは後で聞いたことだが、トラックの運転手は逃げていて捕まっていないそうだ。やれやれだね。


♢♢♢


 「峰君はレインボーマンじゃない。レインボーマンは勇者?」


 峰君から聞いた話が本当ならそういうことになる。もし、本当に勇者が助けてくれたのなら胸が高鳴るのを感じる。でも、これは邪な感情だよね。助けてくれた人が誰であれ、ちゃんとお礼は言いたい。


 峰君と言えば、皆は悪い方に変わったって言うけど、私からしたらあれが素なんじゃないかと思えるのよね。だって、彼のこと何も知らないんだもの。最初の1週間は良かった。峰君のおかげで皆と打ち解けるのが早かったし。不安も消えて、楽しい学園生活が送れると思ってたのに、峰君のあの変わり様にはビックリしたし、付いて行けなかった。今の態度こそが俺なんだ!て感じで堂々としてる峰君には正直近付きたくないなぁ。


 夏期休暇に入り、一度家に帰ることにした。お母さん元気かな?電話では話しているけど顔を暫く見てないもんね。あっ、お母さんから電話だ。


 「どうしたの?予定通り明日帰るけど、何かあった?」

 「………私、惹かれちゃった。」

 「え⁉轢かれたの?ケガは?」

 「?ああ、この胸のときめきのことね。久しぶりでどうしたらいいか困っちゃうわ。」


 お母さんは何を言っているのかな?理解出来ないわ。何故かテンションが高いのは声からも分かるけど、原因は?今日あったことを聞いたら、車に轢かれそうになったのは本当みたい。それで、助けてくれた人に惹かれたって話をしていたのね。いきなりそんなこと言われても分かるはずないじゃない!いい年して乙女かっ!


 「今、失礼なこと考えなかった?」

 「…いえ、全くそんなことはありません…。」


 浮かれた声からの底冷えするほどの低いトーンの落差が怖い…。しかし、ときめきと言うがその感情は吊り橋効果的な物では?一時的な勘違いでしょ?とは言えないわね…。


 「そうそう、お姫様抱っこされたわ。あの人にもされたことないから、初体験ね。」

 「お母さん…。娘の前で初体験とか言わないでくれる…。」


 帰ったら詳しい話を聞かないとダメね。もっとも、お母さんの方が喋りたそうにしてたから聞き役になりそうだけど。…惚気話じゃないわよね?

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