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 見る間に庭園の様相を呈した空間で、二人──いや、一人と一柱は休息を楽しんでいた。


 「流石神の茶、非常に美味い」


 「でしょでしょ〜? この味にするの割と苦労したんだからね!」


 「そうか、神が苦労するとなればこの味は納得だ」


 そう、発展の話など忘れたかの様に紅茶を飲んでいた。


 「じゃあそろそろお話する?」


 「……」


 「おーい」


 「……あ、すまない。あまりにも心安らいでしまった」


 「それは嬉しいけど、君は妹を助けなきゃいけないんだから」


 「そう、だな。気が緩んでいた」


 「気をつけてね?」


 有り体に言ってしまえばロリっ子神に言われ、少しとても情けない気持ちになる。

こんなのでは妹に顔向けできない……


 「ねぇ、ロリっ子って?」


 思わず地雷を踏み抜いてしまったようだ。

少しずつではあるが、最初の様な凄い密度の厚が広がり、極度の緊張で息が止まる。

どうにか手を合わせて頭を下げると開放された。


 「ッはぁ……すまん、ティティ。その……」


 「アハハハッ、嘘だよ、嘘。これで気が引き締まったでしょ?」


 からからと笑い言い放つティティを見て思わず脱力しかけた。

ここで脱力しては無駄になってしまう。妹の為だ、気を引き締めろ。

前から圧……ではなくジト目が飛んでくるが、気にしない。


 「じゃあ、条件の話をしてくれ。現在の状況も軽く」


 「はいはーい。まずは条件からね〜」


 ティティはそう言って指を鳴らした。

すると目の前に文字の書いてある窓が現れる。

……説明ぐらい口頭でしろよ、茶の意味無いだろ……


 「いやー、久しぶりに人と話すから自慢したくって」


 「良い場所だと思うぞ、茶も美味いしな」


 そう言いつつ条件を読む。




■□■□■□■□■□

・蒸気機関車レベルの科学技術提供

・穀物類の生産倍加

・独占禁止などの商売に関する国際法制定

・生活習慣病対策の公布

地球(アース)の初等教育までの範囲を教える学校の設立

■□■□■□■□■□




 「ほう、わかった」


 「どう? そこに書いてあること、何年で出来そう?」


 「その前に確認したい。これは転生だな?」


 ティティがちょこんと頷く。


 「なら十五歳だ」


 「妹がいたら?」


 「何を言っている、妹のいない人生は土台のない家と同義だ」


 「ん、じゃあ十五年でよろしくね〜」


 割とあっさり決まった。

無理難題をふっかけられたり、五年でやれとかは言われそうではあった。


 「そんな鬼に見える?」


 「何せ神だからな、地球には曖昧な伝承しかなかった」


 「地球含む宇宙は既に自律世界(神の管理外)だから神はもういないの」


 「じゃあティティは何で干渉できたんだ?」


 「魂のリソースは世界でなく、神界の管理だよ〜」


 「ここに妹は」


 「呼べないよ! 君をここに呼んで妹君を引き止めるだけで手がいっぱいなんだから!」


 「分かった」


 神界に幾許(いくばく)かあるらしき世界の魂は、全て大本が預かりリサイクルする。

その管理担当が恐らくティティなんだろう。

断罪の神で、あんな分岐を見張ってるぐらいだ。


 「じゃあ、転生後の妹はどうなる?」


 「君たちが良ければ、前の体をそのまま転生(・・・・・・・・・・)しようかと思ってるよ」


 「双子だな。それで大丈夫だ」


 「了解! 妹君には何も説明してないから、転生したらすぐわかるサプライズになるね!」


 二人で生まれて驚く妹の顔を想像し、思わず笑みを浮かべる。


 「へぇ〜、そんな顔できるんだ」


 ティティがニヤついている。反応しては駄目だ。

別に兄妹仲が良いだけなんだ。


 「いつも通りだ」


 「本当かなぁ?」


 「後、産まれる家はどういう所だ?」


 「あ! 誤魔化した! うーん、産まれる所は内緒だよ〜。あ、悪いようにはしないから!」


 「最低限不利にならないなら何でもいい」


 「……両親を、親族を、大事にしてあげてね」


 ……ティティは、親と接点の無かった──接点を絶たれた事を慮っているのだろう。

妹に手をあげない限り、両親に何をすることもない。

わざわざ言ってくるということは、大事に出来る親の元に産まれる様にする筈だ。

発展(ミッション)を終える年齢まで、貴重な時間を有用に使えるのは重要だ。


 「ありがとう、ティティ」


 「……私は優しい神だからね!」


 優しい神様は一瞬視線を泳がせてからそう言った。

疚しい事でもあるのだろうか?


 しかし何故か妹を思い出す。

最も、妹はもっと短絡的でほわほわしていて可愛いが。


 「はぁ……私も結構良い容姿だとは思うんだけど……」


 「妹に勝てるわけがないだろ」


 「……体型かな……ぶつぶつ」


 自尊心でも傷がついたか、ティティは一人でごにょごにょと喋り始めた。

妹に勝てるのは妹だけだ。神の介入する余地は無い。


 微妙に長いこと独り言をしていたティティは、喉が渇いたか紅茶を飲む。

また独り言をされても嫌なので、先に言うとする。


 「ティティ」


 「ん?」


 「ティティの世界の記録書を読ませてくれ」


 「分かった〜。ちょっと待ってね」


 ティティは虚空から少し厚めの金色の装飾の本を取り出した。

無駄に豪華だ。

これがアースティティアとやらの全歴史になるのか……?


 「一世界の記録はこんな薄みなもんなのか?」


 「アースティティアが出来てからの歴史がそんなに深くないからね……」


 ならこれを覚えればいいか。

紅茶を二口程飲んで、記録書を読み始めた。

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