違和感
色々あった休日を終え、今日は月曜日。
今日からまた学校が再開される。
勇也はまだ学校に通って少ししか経っていないが、それでも学校生活に新鮮さを感じ、いつもワクワクしていた。
そもそも、勇也は中学までは所謂お金持ちが通う学校に通っていた。
朝は今の様に歩いて登校するのではなく、全員が高級車に乗って登校していた。
校舎も今の学校も立派だが、前の学校はまるで城の様なモノで、内部も様々な装飾で飾られていたりと全く違う環境であった。
そんな環境の変化が勇也の『学校に行きたい』という気持ちに繋がっている。
さて、そんな勇也なのだがコレにはまだ耐性が付いていなかった。
──殺気。
未だに向けられる殺気に居心地が悪く感じる勇也だが、最近は段々とその殺気も減ってきているのが心の支えとなっている。
恐らく、そのうち収まるだろうという僅かな希望が。
そんな状況から唯一解放される時間が昼休み。
教室から抜け出しいつもの屋上へと向かうのだが、そこにも変化があった。
「……何で先輩がここに?」
「ども、道楽部の部長! 十六夜 凉です!」
いや、知ってますというツッコミすらする気にもならず、それを無視して弁当を頬張る。
「でさでさ、考えてくれた?」
突然過ぎる質問だが、その意味を勇也は理解していた。
「ええ、まぁ……」
「そっかー。入ってくれるだね。ありがとう!」
何故か勇也が入るということになっているが、本人は冷静に対応する。
「いえ、無理ですけど」
暫くの沈黙。
まるで、入らないことが可笑しいとまで思わせるその雰囲気に勇也は呑ませそうになりながら、なんとか持ちこたえた。
「えっと……。マジデスカ?」
純日本人である筈の凉はカタコトの日本語を喋って仕舞うほど困惑していた。
「はい。先輩の勧誘は嬉しいですが、バイトが有りますし時々しか部活に参加できないので……」
「でもでも、本が好きなんだよね?」
「いえ、本は好きですが時々見るくらいです。あの時も雨が降っていたから何となく図書室に出向いたまでです」
勇也が入部出来ない事と、色々と自分の早とちりであったと理解した凉は目に見えてショックを受ける。
「というか、そもそも何で屋上に?」
「それは──」
最初から感じていた疑問を投げ掛け、それに返そうとした凉の言葉は突然開いた扉の音でかき消された。
「先輩!」
それは今頃教室でいつものように女子に囲まれている筈の勝だった。
「やっぱり先輩ここに居たんですね」
「あ、霧野君」
「先輩、もしかして山原を?」
勝は少しうんざりしたように言った。
「何度も言ったじゃないですか。山原は部活に入らないって、態々聞きに来る必要なんて有りませんよ」
「うん。霧野君の言う通り断られちゃった」
なんだか罪悪感が沸いてきた勇也は「入部は出来ないけど、出来る範囲で活動を手伝う」と話したが、勝に大丈夫だと断られてしまう。
それから時間が残り少ないこともあり、三人はそれぞれの教室に戻った。
先程の会話に少しの違和感を感じた勇也だったがそれを気に止めることはなかった。