休まらない休日
待ってた人は居ないでしょうが続きです。
私立南風高等学校は土日は休日であり、殆どの学生は各々の部活動に励むのだが、新入生の中にはまだどの部活動にも所属していない者も多く暇を持て余している。
喜原 勇也もその一人であった。
しかし、暇である勇也なのだが現在はスマホゲームに没頭していた。
『ドリーム・ファンタズム・オンライン』
通称『ドリファム』と略させるアプリで、ダウンロード数が1000万を越えたことを記念して特別なイベントを今日から行っていた。
勿論、勇也がやらないはずも無く何時ものようにエルとパーティーを組んで遊んでいた。
それから一時間程でイベントクエストも落ち着いて一旦休憩することになった。
エル『ねぇ』
勇也が水を飲んで一息ついていると、突然エルから個人チャットが届いた。
勇也は水の入ったペットボトルを机に奥とスマホを手に取り返事を返す。
ユウ『なに?』
因みに『ユウ』というのは勇也のプレイヤーネームで、名前から二文字取って付けた名前だ。
エル『今まで一緒にプレイしてきてどれくらい経つかな?』
突然の質問に勇也は思考する。
勇也がプレイし出したのは、リリースされた直後で3年程前。
エルと一緒にパーティーを組み出したのも丁度初めて直ぐの頃だったから、一緒にプレイしたのは3年程になる。
ユウ『大体3年くらいかな』
エル『そうだよね。大体3年くらい経つよね』
勇也の率直な感想は「だからどうしたのだろう」だった。
それが一体どうしたというのか、全く分からなかった。
エル『でもね……』
この後に続いた言葉に勇也は驚いた。
エル『私達一度もオフであったこと無いよね?』
『そもそもギルドメンバーでオフ会したことなかったよね?』
そう。実はエルを含めた数人とギルドを作っているのだが、それから一度もオフであったことはなかった。
別に同じギルドだからオフで会わないといけないと言うわけでは無い。
それに一度、同じような話題がギルド内で上がったことがあったのだが、ギルド長の勇也が頑なに了承しなかった為結局なかったのだ。
エル『だから、せめて一度だけで良いからオフ会やらない?』
『二人だけって言うのは無理だから出来れば全員で……』
これに勇也はかなり驚いていた。
何故なら、エルは勇也と同じでオフ会に反対であったからだ。
そんなエルがまさか自分から提案してくるなど誰が思えよう。
もしかすると心変わりがあったかもしれないが、エルも勇也同様に頑なに了承しなかった。
つまりこの行動には何かあるのかもしれない。
様々な憶測が出てくるが、本当の理由を知るのは本人以外居ないため、分からなかった。
しかし、エルの思いも無下にすることは出来ないと考えていた。
3年間ずっとプレイしてきてくれたことに、恩も感じていた。
ユウ『分かった。考えておくよ』
それから少しイベントをした後、勇也はバイトがある為ログアウトしてアルバイトに向かった。
制服に着替えた勇也がレジに入ると、店内にはいつもの倍の客が居た。
不思議に思いながらもレジに付くと、急に客の殆ど──主に女性──が勇也のレジに列を作り出した。
その列の長さは通路の邪魔になるほどだった。
勇也が状況を飲み込めず、茫然としていると横から助け船が来た。
「すみません。他のお客さまの御迷惑になるので、こちらのレジにも並んでください!」
「別に私達が何処に並ぼうが勝手じゃない!」
しかし、そんな助けも虚しく撃沈してしまう。
「大丈夫ですよ。急いでレジを回しますので」
勇也は急いでレジを打つ。バーコードを読み取る。
そしてお釣りを返そうと手を差し出すと客の女性から手を握られる。
両手で、それも長い間。
しかし、ずっと握らせている訳にもいかず、丁寧に外に出るよう促し、次の客の対応に移る。
バイトが終わる頃にはくたくたになり、先輩達に心配されながらも帰宅した。
帰宅した頃にはベットに倒れたのは必然だった。
彼の休日はこうして幕を閉じた。
突っ込みどころ満載なのは許して(´・ω・`)