新入部員は○○
私の名前は十六夜 凉。
二年で『道楽部』の部長を勤めていて、四天何々に選ばれているらしい。友達情報だからよく分からないけど。
しかし、私はついに私が求めていた人物を見つけてしまった。
「ふふ、ついに見付けた……」
凉の目線の先には本を集中している男子生徒の姿があった。
その男子生徒は前髪で目元を隠し、マスクを付けていて、顔を完全に隠している。
そう、その男子生徒とは勇也の事だった。
(態々こんなところにまで来て本を読んでいるということは、かなりの本好きに違いない! ついに見付けた! 部員候補)
『道楽部』は、部員が部長を含めて一人しかいないのだが、それでも一応部活としては認められている。
前までは、部活は最低限の人数が揃わないと出来なかったのだが、今年から何故か一人でも、ただの遊び目的でなければ作っても良い。ということとなった。
勿論、作る場合には先生への相談が必要で、部活の製作を担当するのは山元先生と呼ばれる、見た目からしてスーパー鬼教師のため、ふざけた部活が作られることは無いため安心である。
一応『道楽部』は、あらゆる道楽、遊戯の歴史を研究するという名目で作っているのだが。
そんなことはさておき、ついに部員候補を見付けたのだ。だから、キチンと話に行かないといけない。
そう考えた時には既に彼は扉から出ていってしまっていた。
~~~~~~~~~~
次の日。
やはり、凉が睨んだ通りまた例の彼が居た。
彼は何故か此方を見ている。
理由に気付かない凉だが、実は凉は図書室の扉を勢いよく開けており、そのせいで図書室内の生徒の注目を浴びてしまった。まぁ、二人なのだが。
そして、彼の目の前に行き立ち止まる。
「え、えっと~。何か用ですか?」
彼は、いきなりのことに戸惑っている様子だった。
「ずっと、君を探してたんだよ! やっと会えた!」
そう言うと、凉は彼を抱き締めた。
それから、彼に部員にならないかと提案し、時間が迫っていた為、返事は後にして教室へと急いで戻った。
そして放課後、凉は彼の教室へと行き返事を聞こうと向かおうしていた。
既に、凉の頭の中に今度返事を聞く、という記憶は残っていない。
そして、彼の教室へ向かおうと席を立って思い出す。
「あ、名前もクラスも何にも聞いてないや」
まさかの、クラスや名前すら聞いていないという事実。
ここで凉は痛恨のミスを犯してしまった。流石は天然部長と言ったところか。
「うーん。どうしよう……」
凉にしては珍しく考え込む。
「あの、すみません。十六夜先輩って居ませんか?」
考え込む凉の教室に来訪者が現れた。
やって来たのは男子生徒で、彼は顔立ちも整っていて誰でも分かるくらいのイケメンだった。
「ん~? 私が十六夜 凉だよ?」
教室へやって来た男子生徒の元へと凉は向かう。
「それで君は誰?」
本当に彼の事を知らずに、頭をコテッとして尋ねる。
「ああ、俺は一年の霧野 勝って言います。先輩に道楽部の件で話があったので来ました」
彼の話をよく聞いてみると、どうやら『道楽部』に入部したいらしい。
彼は本を読むのが好きで家でも本を読んでいるそうだ。
「そうなの!? いいよ! 部員は大歓迎だよ!」
彼に他の入部希望者達と違って本当に入部したいという気持ちがあるのが伝わり、凉もすぐにOKをだした。
「今日から、君も道楽部の部員だよ! よろしくね!」
そうして、凉と勝は固い握手を交わした。
「ふ、チョロいな……」