表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/9

雨の日の図書室

思ったより見てる人がいた事実にビックリしています。


「はぁ…」


 勇也はいつもの様に学校に登校し、いつもの様に女子に睨まれ、いつもの様に昼休みを迎えため息をついた。


 何故ため息をついたのか、別にその理由は今日の天候が関係していた。


「雨か……」


 雨、教室の窓の外にはザーザーと雨が降っている。

 しかし、別に傘を忘れて困ってしまいため息をついたわけではない。


「屋上に行けない」


 そう、いつもの避難場所、屋上に行けないのだ。

 つまり今日は、女子に睨まれながらこの教室で過ごさなければならない。


 とりあえず、弁当を机の上に取り出し、食べる。


(落ち着かない……!)


 女子の視線が気になる。

 何故だろう。今は、勝は別の席で友達グループと食べているのだが、女子の数名が勇也を見ている。


 多分アレだろう。陰キャ設定が通じて、別に勝一緒に居まいが、結局嫌いだ。という思いで睨んでいるのだろう。



 結局、落ち着かなくなった勇也は弁当を仕舞い、教室を出た。


 そして、向かった先は図書室。


 中に入ると、そこには人が一人も居なかった。


 いや、訂正しよう。図書委員以外誰も居なかった。といった方が正しいだろう。


 とりあえず、適当に面白そうな本を手に取り席に着く。


 本を読んでいると段々眠くなってきた。


(昨日エルさんと徹夜でイベントやってからかな?)


 昨日帰ってきてから食後にゲームをやり始め、夢中になりすぎていつの間にか夜が明けていた。


 朝から少しは眠かったのだが、授業中も眠らずに集中できていた。

 だが、多分それはある意味女子のお陰だったのかもしれない。

 女子が授業中も睨み付けていたお陰で勇也は授業中を眠らずに受けることが出来た。


 しかし、ここは図書室で、図書カウンターに居る委員を入れても人が全くいない。


 そんな静かな空間に居て、しかも睡眠不足なら眠くならないはずはなかった。


 段々と瞼が落ちていき、そして勇也は完全に目を閉じた。



~~~~~~~~~~


 篠原しのはら 梨杏りな


 二年で、図書委員を勤めている。


 勤めている理由は単純で、ただ本が好きだから。


 何度か男子に告白されたこともあるが断っている。何故なら皆、自分の話しかしてこないからである。

 此方の話を聞かずにずぅっと自慢話ばかり。


 私は自分の話を楽しそうに聞いてくれる人と付き合うと決めている。


 そして今日も図書委員の仕事を図書室でこなしているのだが、実はいつも人は来ない。来たとしてほんの数名で、今日も人は来ないだろう。


 私はそう思っていた。しかし、今日は来訪者があった。


 彼は変わった格好をしていて、前髪も目に掛かっている。


 彼は、適当に本を選び机で読み出す。


 私は、そんな彼に何故か見入ってしまった。

 何故だか自分でも分からない。彼は何処から見てもただのいつも教室の端に居そうな見た目。


 しかし、彼は不思議な雰囲気を纏っていて、何故か引かれるものがあった。


 そんな彼をボーっと見詰めていると、彼は次第にウトウトし出し、寝てしまった。


 本来なら、図書室で寝るなんて許さない私だが、何故だが注意しようとすら思わなかった。


 そして、気が付いたら彼の目の前に来ていた。


 彼の寝顔を見ていると、その顔をよく見てみたくなる。


 そっと手を伸ばし前髪を掻き分けようとすると、


「何してるんですか?」


「ひゃッ!?」


 いきなり目を覚ました彼に話し掛けられ、後ろに下がる。


「いや、えっと、そう! もうすぐ時間だから起こそうと思って!」


 咄嗟に思い付いた言い訳でその場は回避する。

 まさか相手に「君の顔をよく見たかった」なんて恥ずかしいことを言えるわけがない。


「あ、すみません。ありがとうございます」


 彼はそう言うと、すぐに席から立ち本を直すと出口へと向かう。


「あの、ちょっと待って!」


「はい?」


 私は彼を呼び止めてしまった。

 別にそういう意志があったわけではなく、いつの間にか呼び止めてしまっていたのだ。


「あ、え、えーと。な、名前を教えてくれない?」


 言い終えて、自分でも初対面なのに何を聞いているのだろうと思い、恥ずかしさで顔が赤くなる。


「いや別に言いたくなかったら──「勇也です」─え?」


「山原勇也です。じゃあ俺急ぐんで…」


 そう言って、彼は名前を告げて図書室を後にした。


「山原、勇也かぁ……」


 その日は頭から彼の顔が離れることはなかった。






 そして、二人とも気付いて居なかった。

 物陰から此方を見ていた怪しい視線を。


「ふふふ、ついに見付けた……」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ