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人生の勝ち組

修正済み。


 『人生の勝ち組』





 それは主に、容姿端麗だったりお金持ちだったり、人に好かれ易い等、第3者視点で「人生を満喫していそう」という観点での人種がコレに当てはまる。


 勿論、人生に勝ち負けなど存在せずにそれを決めるのは自分や周囲の感覚や感じ方だったりする。


 しかし、例え他人から人生の勝ち組だと評価されていても、本人がそう感じているとは限らない。


 例えばこの男、喜原(きはら) 勇也(ゆうや)は中学三年生にして、成績優秀、スポーツ万能、容姿端麗の三拍子を合わせ持つ、所謂人生勝ち組と評価してもいい存在だ。


 しかも、父親が世界的に活躍する企業のトップに君臨し、母親もまた、世界を股に掛ける大女優で大金持ち、そして本人にも人脈があり、優しさもある。誰にでも好かれ、男友達だって多い。

 家族も皆優しく、正しく正真正銘の勝ち組。


 小学生の頃には既に同じ学校の女子は勿論、他校の女子にまでモテていた彼。


 何度も言うが誰が見ても人生の勝ち組。


 しかし、当の本人には大きな悩みがあった。



 彼に好意を懐く女性の殆どが見ているのが、顔やお金、地位だった。


 元々お金持ちの様な人間が通う学校に小学生の頃から通っていたが、それでも勇也の家は他よりもかなりの力を持っていた為、それで狙われることも多かった。


 事実がどうであれ、彼自身そうだとしか思えなかった。


 彼女らが欲しているのは、イケメンでかなりの地位を持っているという優良物件なのだろうと。


 だから勇也は決意した。



──今と逆の立場になって(負け組)、本当の愛を見付ける──








 勇也はまず、両親に相談した。

 勇也の両親は、家族思いで、勇也には別に会社をついでほしい等とも思わず「やりたいことをやれ」と言う様なそんな両親で、勇也の両親はその相談を容易く聞き入れた。

 父親は一代でこの会社を建てた為、母と出会った時も別にそこまでの権力とお金があったわけではない。しかし、互いに惹かれ合い結婚した。

 だから、勇也の「本当の愛を見付けたい」という相談にも真摯に向き合ってくれた。


 その為、勇也の相談を聞いたとき両親は先ず泣きながら謝ってきた。「こんな本当の恋すら難しい環境にしてゴメン」と、勿論両親のせいではないため直ぐに泣き止ませた。


 この時、やはり自分は良い両親を持ったと勇也は改めて感じた。



 ではまず、勇也は独り暮らしの為に、アパートを借りる。のではなく、個人情報管理を徹底するためアパートごと買い取る。

 万が一にも、本当の勇也の情報を漏らさないようにしなければ今回の計画は破綻する。


 そして、高校も、権利を親が買い取り、勇也の計画に支障をきたさないよう進めるために管理する。

 勿論、親は仕事が忙しいため信頼できる代理を用意している。


 その高校の先生も、信頼が置ける人を選別し任命。


 そしてそこに、中学までの追っかけ達に情報が漏れないように入学。

 そもそも学校自体は、中学自体に住んでいた場所から何個か県を跨いだ先にある。

 しかし、稀にそこまでしても追いかけてくる人も居るため、情報管理は徹底しなければならない。


 実はこれ等は両親が行った事であり、あまり両親に迷惑をかけたくないと勇也は反対したが、見事に押し通された。


 コレで下準備は終わり。


 最後に、勇也の容姿を隠すために様々な工夫を施す。

 コレを行うのは、女優である勇也の母だ。


 事前に前髪を目元が隠れるギリギリまで伸ばし、眼鏡を掛ける。


 眼鏡は掛けるだけで印象がガラッと変わる最強アイテム。たかが眼鏡、されど眼鏡だ。


 最後にマスクを付けて完成。春だから花粉症としか思われることはないだろうが、夏になると流石に怪しいため外さなければならない。


「コレが、俺……」


 鏡に写る自分の姿に勇也は思わず言葉が漏れる。


 そこに写るのは、容姿が分からないが暗そうであまり近寄り易いとはいえない雰囲気の青年だった。


 明らかに前の勇也とは全く違う。


 しかし、コレも前準備。

 まだ彼の計画は始まったばかりだった。



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