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STONES  作者: 風見 坂
第一章 神の暇潰し
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第一話 パワーストーン

 日本に住む高校2年生の江嵜(えざき) (まき)は、始業式が終わると同時に帰宅し、特にすることも無く自室で漫画を読んでいた。


「はぁ……今年のクラス、去年のグループの友達いないとかダルすぎる……」


 漫画を読みながら、今日のことを思い出し愚痴をこぼす。

 去年、仲良しグループとして絡んでいた友達4人と離れたのだ。

 仲のいい友達と一緒のクラスになれなかった子は他にも何人もいる為、特にボッチになる心配は感じていない。

 だが、去年のグループは居心地がとても良かったからこそ、あれ程の仲良しグループが出来るとは思えなかったのだ。

 ハッキリ言って、去年のグループのおかげで学校で一切辛い思いをしたことがなかった。


「この漫画のキャラみたいに、人操れる能力とか、未来を変える能力とか欲しいなぁ」


 そんな現実味のない想像、いや、妄想をしてしまう。


「異能力とかあったらこの世界もっと面白かったりすんのかなぁ」


 言いながら中二病臭いなと笑う槇。

 そんな彼の前に、突如として、どこからともなく、ポっと青年が現れた。瞬間、槇の思考は停止した。

 まず、目を疑い、目を擦るが、確かに目の前には大学生位の青年が立っている。

 ワックスで固めたようなキメた髪型をした金髪の下から覗く目も、口元も、笑っている。

 何を考えているのか、何者なのか、何も分からない。

 得体の知れない不安が槇を襲う。


(は? 何? なんなの? どっから来た?)


 混乱し始める脳にひとつの声が届く。


「君は神の遊戯の参加者として、俺に選ばれました。おめでとう! 神からの招待だし、参加するよね?」


 好奇心に満ちた声を聞いた槇は、脳がキャリーオーバーを迎えたのか、気絶した。


***


 いつの間にか横になっていた槇は、少しだけ頭に痛みを感じつつ目を覚ました。

 身体を起こし、辺りを見渡すが、そこには誰の姿も、何の痕跡も無かった。


「…………夢?」


 ふとそう思うが、手元にさっきまで読んでいた記憶のある漫画がしっかり残っている。


「なんだったんだ……」


 未だ頭の中が混乱し続ける槇だが、ふと脹ら脛(ふくらはぎ)辺りに違和感を覚え、ズボンの裾を捲り、確認すると、そこには赤色の丸が描かれていた。


「なんだこれ」


 よく見ると、その丸には白っぽい線が入っていて、何かの模様のようだ。


「あれ?」


 ふと、漫画の下敷きになっている紙に気づく。

 紙には、“明日”“遊戯”“戦”“始”“異能力”“アンデシン”とバラバラに走り書きされている。


「こんなの書いた覚えないぞ……」


 確かに槇にはこんなメモを書いた記憶がない。

 だが、筆跡が明らかに自分のと同じ。

 その事実に脳が困惑する。


「遊戯って……確かあの時……」


 夢か現実かあやふやな、不可思議な記憶が槇の脳裏を過る。


(あの記憶が――ありえないことが起こっていたあの出来事が――もし仮に、現実だったとしたら)


 勝手にか、それとも無意識にか、神の遊戯とかいう胡散臭いものに参加してしまったのかもしれない。

 アレが、あのチャラチャラした男が、本当に神だとしたら、メモから察するに、おかしな戦いに巻き込まれたのかもしれない。

 そんな考えに埋め尽くされる。


「アンデシンってなんだ? 異能力?」


 ふと、メモの下部に記された2つの単語に目を奪われる。

 早速スマホをズボンのポケットから取り出し、検索する。


『アンデシン――現在の自分が抱える自己矛盾を受け入れ、調和し、その問題を解決することで、本来の自分自身、魂が望む方向への自然な変化を促す力を持つ』


 とあるパワーストーンのサイトにそう記されていた。


(魂が望む「本当の自分」に近づく変化を促す、か)


 “異能力”という単語のすぐ下に“アンデシン”と書かれているのだから、何かしら異能力とかに関係しているのかもしれない。

 そんなことを考えていると、ふと脹ら脛の模様を思い出し、再度確認する。

 そして、あることに気づいた。


「この模様、アンデシンと同じだ」


 脹ら脛の模様は、正しく今調べたサイトに載っている球体のアンデシンと同じ模様だった。


「…………だから何なんだ。勝手に人の脹ら脛に落書きしやがって」


 少しだけ、アンデシンの意味から連想される異能力を得たのかな、などと期待したが、そもそも異能力なんて非現実、ありえないと切り捨てる。

 ただ、確かに妙なことに巻き込まれたのは事実だと直感が告げる。

 身に覚えのないメモと脹ら脛の模様、目を覚ます前に見た(と記憶している)おかしな出来事。

 そこでふと不安が槇に襲いかかる。


「あの男がほんとに居たとして、何も盗まれてないよな!?」


 記憶が正しければ寝てしまっていた時間はほんの数分だけのはず。

 そんな短い時間で、部屋を荒らすことなく金目のものを盗むなんて出来ない……と信じたい。

 そう思いながらも一応金になりそうなものが盗まれていないか確認するも、特に異常は見当たらなかった。


「ほんとになんだったんだ」


 槇はわけも分からず、ただ、分からなさすぎるため、考えることを放棄した。

 特に何か盗まれた訳でもない。

 何かに巻き込まれたかもしれないけど、今のところ問題ない。

 何か起こってからでは遅いが、対策のしようもない。

 だから、考えないことにした。


「考えるだけ無駄だ」


 そうポツリとこぼして、漫画の続きを読み始める槇であった。


***


 結局何も起こらないまま、翌日、天気予報では晴れだったにも拘らず、警報級の大雨が降っていた。

 しかも世界各所で似たような現象が次々起こっている。

 案の定、槇の地域では大雨洪水警報が発令。

 結果、昼の12:00に学校は休みとなった。


「めっちゃ降ってるなぁ……明日は土曜だし3連休になったな」


 自室でダラダラ寛ぎつつ独り言ちる槇だったが、13:00に起こった異様な気候変動に動揺せざるを得なかった。

 13:00になると同時に、今までの大雨が通り雨だったかのように急におさまり始め、わずか1分足らずで止んだのだ。

 しかも、後々槇は知ったのだが、朝から降りっぱなしで、通常なら多数の家が浸水被害にあいそうな大雨だったにも拘らず、浸水被害はなし。

 毎度の如く現れる愚かな人――警報だというのに、用もないのにわざわざ外に出ていく人――による負傷者等さえ存在しなかったのだ。


「昨日今日と嫌な予感しかしねぇ……」


 槇はそう呟くと、ただなんとなく、去年の仲良しグループに連絡を取ることにした。


『一応聞きたいんだけど皆大丈夫?』


 不気味な大雨に不安を覚えつつ、何事もないといいなと願いながら、聞いてみる。

 メッセージを送信して直ぐに既読が2つ付いた。


『特(まさ)に何も無かったわ』

『こ(りゅう)っちもだわ』


 槇はその返信に安堵しつつ、昨日の出来事を話してみようかと考えた。

 コイツらになら大丈夫か。

 何かあったらアニメとかの話にしとけば良いし。

 そう思い、昨日の、不可思議な出来事について話してみる。


『そういや昨日、急に金髪の男が俺の部屋に出てきて、神の遊戯とか言い出したんだけど、なんか知らない?』


 改めて自分が送信したメッセージの奇天烈さに少し後悔し始める槇だったが、1人から予想外の返信が来た。

 それは新たにこのグルを覗きに来た3人目の既読者の新間(あらま) (ゆう)だった。


『そ(u)れ、うちにも来たよ。なんか2人1組らしいじゃん? まき、参加してるならチーム組もうぜ』

『何(りゅう)その中二病全開な話www』

『お(まさ)前ら頭大丈夫か?w』


 (りゅう)誠也(まさや)には馬鹿にされたが、優は明らかに俺と同じ立場の発言だった。

 即座に個人チャットで話を聞く。


『俺、記憶無いんだがなんなんだアレ』

『記憶無いとかホントに中二病かよ』

『え、お前のとこにも来たんだよな? あのヤンキーみたいなの』


 優にまで中二病と言われ、槇の中で焦りが募る。


『来たよ。だからって記憶無いとかあるか?』

『ほんとに無いんだよ』

『とりま、俺が理解してんのは、パワーストーンの意味が由来の異能力を俺らは自称神様から貰ってて、他の能力者と殺し合うらしい』

『は? 殺し合い?』


 なんでそんな物騒なことに巻き込まれなきゃ行けないんだ。

 それよりなんで優は余裕な感じなんだよ。

 沢山の思考が槇の脳内を駆け巡る。


『そう、殺し合い。と言っても遊戯で死んでも生き返るらしいし』

『いや、だから? そんな物騒なことやる意味ねぇじゃん』

『異能力使えるし、勝てば願い事叶うらしいし結構得だと思ったんだけどなぁ。てか、そんなこと言うってことは参加してない訳?』


 あの出来事は現実だったらしい。

 それはそれとして優からのメッセージで疑問が生じる。

 はたして俺は参加しているのだろうか。


『参加してんのか、わかんねぇ』

『はぁ? 選んだパワーストーンの模様身体のどっかにねぇの?』


 槇は脹ら脛の模様を思い出す。

 つまり、自分は参加している、そういうことなのだろう。

 本能的に拒みたい事実を、槇は、理解しようとしていた。

 意を決し、槇は返信を送る。


『脹ら脛のとこにアンデシンの模様がある』

『つまりお前は参加者で、能力はアンデシンにまつわるものなんだろ』

『どうやって能力使うんだ?』

『それに関してはどう説明すりゃいいか分かんねぇけど、なんか感覚?』


 槇は、感覚って……などと思いつつ、アンデシンから連想される異能力――身体変化――をしようとしてみる。

 本当の自分という部分を省略してしまっているが、魂が望む本当の自分がそもそも分からないし、自分が望む姿になろう。

 そう考えたのだ。

 結果、女体化に成功した。


(んんん?)


『女体化したんだけど』

『何それ見せて』

『嫌だわ』


 それも見事に槇好みのカワイイゆるふわ系女子(見た目約17歳)へと変化していた。

 そして当人が部屋の鏡台を見て1番困惑していた。

 

(待て待て待て。俺の魂が望む姿は女なのか? いやちょっと待て色々おかしいだろ。いざなりたいものってなったら確かになんも出てこなかったけど、だからってこれは……)


『今アンデシンの意味調べてきたんだけど、槇、そういう事だったんだな』

『いやほんと待って、そりゃ男子たるもの1度は女子になってみたいとか考えたことあるだろうし俺もあるけどさ!』

『魂が望む』

『俺は男として生きたい派のはずなんだけど!』


 なんと言おうとも説得力がない。

 現に女体化しているから。

 にしても可愛い。

 槇は自分に惚れそうになっていた。

 ほんの数秒、鏡の中の女体化した自分に見蕩れていた槇だが、ふと我に返り、元の姿に戻ろうと試みる。


『元に戻ってみる』

『また今度女体化よろ』

『やだ』


 優とそんな下らないやり取りをした後、さっきと同じ感覚で、元に戻ることを念じながら能力を使う。

 今度は変身時の自分の様子も気になった槇は、鏡を見つつ、能力を使ったのだが。


「一瞬で変わった……」


 瞬きをする瞬間とかそんな次元じゃない。

 文字通り気づいたら変わっているとしか言えなかった。


『元に戻れたわ』

『良かったな。ところで結局仲間になんだよな?』

『そりゃ知り合いの方が心強いしありがたく仲間になるよ』

『ならそろそろ始まるから俺そっち行くわ』

『え、何始まるん。もう戦い始まるん?』


 槇がメッセージを送った時には既に出発したのか、優から返事は来なくなった。

 優との個人チャットを出ると、去年の仲良しグループにすごい通知が溜まっている。

 槇と優が中二病拗らせたと思ったらトークから消えたためだ。


「あーこれやっちまったかなぁ。既読つけるだけ付けて無視しよ」


 槇は通知が溜まっていると気になる性格上、既読スルーを実行。

 優がこっちに向かっているらしいということで、寝転がって待つことにした。

 だが、物事はそう思うようにいかないようで。


「やぁやぁお久しぶり。あと10分で神の遊戯の始まりだ! 健闘を祈るよ」


 槇の前に再び金髪のヤンキー青年――自称・神――が現れたのだ。

 語尾に、キラッ☆って付きそうな発言に少しムカッとしつつ、今度は倒れない槇。


「後10分って13:30からかよ。てか俺参加するとか言ってないだろ! お前誰なんだよ!」


 捲し立てるように言いたいことを言う槇だが、口撃の対象である金髪青年は表情をひとつも変えず、おちゃらけた返事をする。


「やだなぁ、ちゃんと参加するって言ってたじゃんか。質問攻めとか嫌いだし面倒臭いからばいばーい」

「あ、おい!」


 金髪青年の自称神様は槇の事を適当にあしらうと、そのまま消え去った。

 苛立ちを隠す気もなく、ただただ腹を立てる槇だったが、家のチャイムが耳に届くと、少し冷静さを取り戻した。

 すぐさま玄関へと向かうと、外から優の声が聞こえてくる。

 ドアを開け、迎え入れようとしたが。


「まーきー」

「いらっしゃい」

「早速出かけるか」


 外出のお誘いだ。


「え? 今からなんか始まんだろ? 家の中の方が安全じゃない?」

「いやいや、元に戻るとはいえ無意味に家族を危険な目にあわせたくないだろ?」


 優の言う通りだ。

 今から始まるのは遊戯という名の殺し合い。

 家族を危険な目にあわせるわけにはいかないし、戦いにくくなる。


「そもそも、なんで俺参加することなってんだろ」

「話は後で。とっとと来いよ」

「お、おう」


 槇は優の考えに賛同し、外に出ることにした。

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