第六五話 呼び出された助っ人
洞窟内は、出口を塞がれてもほんわりと足元が明るかった。
二人は辺りを見渡す。
「「リーフ!」」
大人しいと思ったらリーフは、床に倒れていた。左腕には矢が刺さっている。気を失っているようだった。
「何をする気だ? 落ち着け」
アージェが、リーフに刺さった矢を抜こうとすると、ロイが彼の手をがしっと掴み止めた。
「………」
「今、抜いたら大量出血する。私は魔術を封じられた」
「え!?」
「あの矢には、薬が塗ってあったようだ」
魔術ではなく、魔術を封じる薬が塗ってあった。かすめただけだが、薬が抜けなければ術は使えない。
アージェは、塞がれた出口に振り返る。
もし隙間なく塞がっていたら密封状態だ。
ロイが、魔術を使える様にならなければ、窒息死する可能性もある。
「ロイ王子。召喚の許可を頂けませんか?」
「あぁ。宜しく頼む」
それしかないだろうと、ロイも頷く。
アージェは、立ち上がり右手を開いて掲げた。
「いでよ! 召喚の扉!」
アージェの手の上に魔法陣が出現し、そこに門のような扉が浮かび上がる。
「我が名はベランジェ! ここに契約を願う!」
扉が光り輝き、真ん中からかぱっと開くと、エメラルドグリーンの光が二つ見える。扉から長い黒髪に黒いローブのスクランが出現した!
彼が無事召喚された事に、アージェは安堵する。
「随分と薄暗い所だな……」
出て来て早々にスクランは辺りを見渡し言った。
「閉じ込められました。それよりもロイ王子が術を封じられました。何とかなりませんか?」
「どれ? ……これでどうだ? 除去したが」
スクランが、ロイの傷口に触れると、いとも簡単に終わった。
「すまない。何とかなりそうだ。悪いがリーフの治療をしたいので補助をお願いしたい」
「………」
ロイの申し出にスクランは、アージェを見た。
「お願い出来ますか?」
アージェがそう言うと、スクランは頷いた。
「私が治療を行う。その間に、私にしたように除去をお願いしたい」
「了解した」
「では、矢は私が抜きますね」
準備が整い、アージェが矢をスッと抜いた。
「除去は終了した」
リーフの傷からは、出血もほとんどなく無事傷は塞がった。
二人は、安堵する。
「そこが出口なのですが、塞がれました。どうにかできますか?」
アージェが問うと、やってみようとスクランは頷いた。
ロイが結界を張り、スクランが出口を粉砕する。砂の様になり、穴があいた。
「ありがとう。スクランさん」
「助かった。ありがとう。まずは一旦、テッドの元へ戻るぞ」
「はい」
アージェは頷くと、リーフを抱き上げる。
ロイが穴から出ると、アージェ、スクランと続く。
「岩山の中だったか……」
スクランは洞窟の出口から外を見て呟いた。
暗闇の中、遠くに明かりが見える。
三人は、そこを目指す。
「うん? あれ?」
「目を覚ましましたか? 暴れないで下さいよ。今飛行中なので」
「え!?」
目を覚ましたリーフは、状況が飲み込めなかった。
アージェの横にはスクランが飛んでいるの見て驚く。
「スクランさん? 何で?」
「私達は、あの洞窟に閉じ込められ、ロイ王子もあなたも薬で術を封じられたのです。彼を呼び出し今脱出したところです」
やっとリーフは理解した。
あの矢に薬が塗ってあったという事を。そこで、ハッとして左手を見た。
矢が左手に刺さった事はリーフも覚えていたが、腕には傷口はない。ロイが治したんだと気が付く。
四人は、飛び立った場所から建物内に入った。
ビダンダとリンダ、それに女性達は一塊になって座っていた。テッドはそこに立っている。
「えっと、その人は?」
一人増えている事にテッドは気がついてきくもリーフが、アージェに抱きかかえられている事に驚く。
「リーフは……」
「問題ない。それよりビダンダ殿。あの二人が行きそうな所に心当たりありませんか?」
その問いにビダンダは、やっぱり逃げられたのかと愕然とする。
「悪いが、落ち込んでいる場合ではありません! 彼らを追わなくてはならない!」
ロイに言われ、ビダンダとリンダはビクッと体を震わす。
「わ、わからない……。まさかあの二人があんな事をするとも思っていなくて……」
「では、洞窟をご存知ありませんか?」
アージェが、リーフを下ろして聞いた。
「わ、わからない……」
「困ったな。手詰まりだ」
ため息交じりにロイが言う。
外は暗闇だ。探しようがなかった。




