第六四話 守り神改め魔獣のラコニ
リーフは、守り神が魔力が少ないと言っていたのを思い出す。
そして、アージェもその事に気が付いた。
「もしかしてあなた達は、あのドラゴン草を守り神に食べさせたりしたのですか?」
「一日一回、水をあげるのよ。その時に、ドラゴン草のエキスを混ぜたわ! 私を選ぶようにと言ったのに! 失敗した!」
アージェの質問に、ミリューナが悔しそうに答える。
「ロイ王子。もしかしたらあの守り神は、この世界でも魔力が増えるのではないでしょうか。ですが、ドラゴン草の影響で回復力が落ちた」
「なるほど」
アージェは、ボソッとロイに耳打ちする。
『お願い。このままだと心臓が……止まる』
「え!」
「リーフ! そのリングを渡せ」
心臓が止まると聞き、三人は驚く。
ロイの言葉にリーフは戸惑うも手渡した。
「私とどうだ?」
リングを持ってロイが問う。
ドルドン達は、何を言われているかわからない。
「何のまねだ?」
『え? 君も召喚師なの? うん。お願い! 僕の名はラコニ! 君は?』
「私は、ロイ」
「もしかして! 守り神と話しているのか!?」
ドルドンが驚いて、守り神のラコニを見た。
ロイが見つめる先が、自分ではなくラコニだとわかったからだ!
『君をマスターにするよ!』
「ご名答! 残念だったな。ラコニ! こっちへこい!」
「ラコニ? うわぁ」
「きゃ!」
ラコニが突然翼を広げ、術を放った!
先ほどまでおとなしかったのに、突然の反撃でドルドンとミリューナは驚く。
ロイもまさか、そういう風にしてこっち来るとは思っていなかったので驚いた。
「やっぱり、手なずけたんじゃないか!」
「違うな。選ばれたのだ。召喚師である私がな!」
「ロイ王子、宜しいのですか?」
「かまわん。どうせ、彼らが何か言った所で誰も耳を貸さないだろう」
「召喚師だと? じゃ、あの男が言った事は本当なのか……」
ロイの言葉にドルドンが、反応を示す。
「あの男? その者が召喚師の事を口にしたのか?」
「ふん」
ドルドンは黙り込んだまま、もう話さないとそっぽを向く。
『もしかして、紫の髪の魔獣の事かな?』
「紫!? エミールに会っていたのか!」
『名前は知らない。けど、面白い事をしているなと言っていた』
「面白い事?」
「あなたには、何もしてこなかったのですか?」
『何もって?』
アージェの質問にラコニは首を傾げる。
「本当に、会話をしているの? しかも王子だけじゃなく!?」
ロイ達の行動にミリューナが驚いて言った。
「さっき、種明かしをしただろう? 私達の国は召喚師の国でもある。あなた達が崇める守り神と会話が出来る」
「崇めるね。私は崇めた事などないけど! 最初から守り神だとも思っていなかった! 何か裏工作をしてリンラを選ばせていたのよ!」
ミリューナが叫ぶ。もし裏工作をしていたのならリーフが選ばれる事はないのだが。
「そう言えば、どういう基準で選んでいたの? って、それって何の為?」
成り行きを見ていたリーフは、気になって聞いた。
ヘリムは、魔法陣を消すという託された願いを成就する為に犬にまでなり、召喚師を探していた。
ラコニは、何を託されたのだろうと思ったのだ。
『僕が生きていく為に、キャーカルが作った仕組み』
「キャーカル。それが、あなたの前マスターか?」
『うん』
ロイの質問に、ラコニは頷いた。
そして、キャーカルの事を語り始める――。
――ラパラル王国の初代王レミジオが、国王宣言をした時キャーカルはこっそりと旅立った。
キャーカルもまた、王になりたい一人だったのだ。だが別に、独裁をしたいわけではない。
自分で色々と作り上げてみたい。ちょっとした野望だった。
キャーカルは、こっそりと相棒なる魔獣を呼び出す。それがラコニだ。
「わー凄い! こんなに緑がいっぱいの世界もあるんだ!」
呼び出されたラコニの第一声がそれだった。
キャーカルも驚いていた。見た目が人間の姿ではない魔獣は初めてだったのだ。
二人は色々語り合った。
そして一つの目標が決まる。二人で国を設立する事!
ちょうどよい場所を近くで見つける。ラコニが住む世界ににた場所で、岩山が密集した場所だ。
小さいながら国として機能し始めた頃、ラコニがこの世界にずっと住みたいと言い始める。
元々ラコニは、国の象徴となっていた。それを利用し崇める対象にし、キャーカルは禁断の召喚魔法を使う。
それは、ラコニをこの世界の住人として呼び出す召喚魔法。
一旦ラコニを元の世界に戻し、再びその召喚魔法で呼び出した。それは成功する。
ラコニは、この世界でも魔力を自身で獲得出来るようになり、マスターを得なくても本来の力を使える様になった。ただし、能力は半減してしまっている。
マスターを得なくても弱くなる事がないラコニだが、契約は結べた。ただそれは、魔力を共有するだけのものだ。
キャーカルは、見た目が人と異なるラコニの為、ラコニの事が外に漏れないように国にしきたりを作った。それを守る限り、魔石が手に入る様にしたのだ。
実際は、ラコニの能力。石に魔力を吹き込んでいるだけだった。その時、何故か光を帯びるのだ。
こうしてキャーカルの死後、長い年月ラコニが人目につかずにいたわけだった――。
「なるほどな。それがこの国の本当のからくりか……」
ロイはボソッと呟く。
「では、その姿は本来の姿なのですか!?」
アージェが驚いて問うと、ラコニはうんと頷いた。
「何なんだ一体……」
ドルドンが驚て言う。
三人がまるでラコニの話を聞いている仕草をしていたからだ。三人で話を合わせているとは思えない。本当に聞こえるんだと驚いていた。
「こうなったら……。ミリューナ!」
「OK!」
びゅ!
突然矢が飛んで来た!
気が付けばミリューナが三人に向けて撃っていたのだ! 近すぎて避けきれない!
アージェだけは、剣を抜きつつ上手く矢を跳ね返した。
「ロイ王子!」
慌ててアージェは、ロイに近づく。
「大丈夫だ。かすめただけだ!」
『うわぁ。出して!』
ラコニの声に二人が振り向くと、驚く事にドルドンがラコニを袋に入れていた!
「何故ここにおびき寄せたと思っている! こうする為さ!」
いつの間にか出口の方に向かっていたドルドンは術を放つ!
それは天井に向けられ崩れ落ちた!
そして、出口は塞がれた!
最初から武器などもここに置いてあったのだろう。万が一、暴かれた時にアージェ達を閉じ込める手はずを整えていたのだ。
迂闊だったと二人は思うも既に遅かった。




