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庭園の国の召喚師  作者: すみ 小桜


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第六〇話 馬車にて

 リーフは、部屋を出たもののどうしていいか、わからなかった。


 「どうしよう……」

 「リー……ファーさん! どうなさいました!」


 ビクッと肩をすくめるも、声でアージェだとわかりリーフは振り向いた。

 アージェとテッドが、リーフの元に慌てて近づく。


 「えっと……」

 「喧嘩でもなさいましたか?」


 テッドに問われるも何と答えていいかわからない。

 リーフは、俯いて口ごもる。


 「仕方がありません。一部屋ご用意して頂きましょう」


 本当の婚約者ではないと知っているアージェは、そう言ってリーフに部屋を取る手配をする。

 今日は、この旅館は貸し切りだ。部屋自体は、空いている。

 すぐに新しい部屋が用意された。


 「こちらになります。別々でという事も想定しておりましたので。では……」


 またテオボルドが、リーフを部屋に案内した。

 この部屋も露天風呂つきで広い。


 「テッド。あなたは、殿下のご様子を確認してきてもらって宜しいですか?」

 「いいけど。俺がそっちでいいのか?」

 「あなたに、女性は任せられません!」

 「婚約者にまで手を出す訳ないだろう。わかったよ。行って来る」


 テッドは、部屋を出て行った。

 ふうっと、アージェが息を吐く。


 「まずは、お座りなさい」


 突っ立ったままのリーフに、アージェは言った。

 頷くとリーフは、ソファーに座る。アージェもリーフの前のソファーに腰を下ろした。


 「何か出て行けと言われる様な、ヘマをしたのですか?」


 アージェの問いに、違うと軽く首を横に振る。


 「そうですか。なら少しは我慢してください。ロイ王子が一緒の部屋でと言ったのに、あなたが部屋を出てどうします。周りに変に思われます」

 「あ……」


 アージェに言われ、そういう事になると気が付いた。


 「ごめんなさい」

 「一つ聞きますが、戻るつもりはないのですか?」

 「………」


 アージェは、ため息をついた。


 「では、私かテッドが護衛につきます。あなたも万が一に備えていて下さいね」

 「え?」

 「え? では、ありません! 私達が襲われたのは、この村の近くなのですよ? あなたが一緒なら安心だと思ったのですが」

 「え? 僕が? 僕、何も出来ないですけど」

 「何を言ってます。私は、あなたに救われたのですよ?」


 襲われた時に一番にする事は、ロイを守る事。

 魔法を使えない自分より使えるリーフの方がいいと、アージェは思っていた。

 リーフは、そういう面で頼りにされているとは、思ってもみなかったので驚く。


 「儀式では、逃げないでくださいね! あなたにしか出来ないのですから」

 「……はい」

 「ですが、命の危険があった時は、ロイ王子を連れて逃げて下さい」

 「二人でですか?」

 「そうです! 最優先は、ロイ王子です。いいですね!」

 「はい……」


 アージェに言われ頷くも、今すぐ帰りたいリーフだった。



  ◇ ◇ ◇



 次の朝、朝食を食べた四人は、王族専用の馬車で隣国エーグに移動だ。


 「このたびは、お泊り頂きありがとうございました。では、よい旅を」


 来た時同様、四人は従業員とテオボルドに見送られての出発。

 リーフは、あのパステルグリーンのドレスを着ていた。その姿は、どこぞのお嬢様だ。


 アージェが、馬車の扉を開けるとロイが乗り込んだ。次にリーフ。そこにロイがリーフに手を差し伸べるが、リーフは躊躇する。


 「手をとりなさい」


 ボソッとアージェが呟く。

 婚約者が手を差し出しているのだからその手を取らないとおかしい。

 リーフは、仕方なく右手をロイの手に乗せると、ギュッと握られた。

 ドギマギしながらリーフは、馬車へ乗り込む。


 「きゃ!」

 「おわぁ」


 リーフは、こんなドレスなど着たことなどない。馬車に登るのにスカートの裾を踏み、ロイの上に倒れ込んだ!


 「ロイ王子!」


 慌ててアージェは、馬車へ乗り込む。

 ロイは、見事にリーフの下敷きになっていた!


 「あなたはもう! 何をしています! ロイ王子お怪我はありませんか?」


 グイッとリーフを引っ張り起こし、アージェは言った。


 「大丈夫だが。この場合は、お二人共だろう?」


 ロイが体を起こしながら言うと、アージェはハッとして振り向いた。

 従業員とテオボルドは心配そうにしているが、テッド一人が笑いをこらえて体を震わせている。


 「リーファー。怪我はないか?」

 「え? はい……。ごめんなさい」

 「まあこれで、段差では気を付けなくてはいけないとわかっただろう。向こうで同じ事をしなければいい」

 「はい……」


 優しく語りかけるロイに、リーフはたじろぐ。それを見てアージェは、二人の間にやはり何かがあったのだと思うも、それが何なのかがわからなかった。


 「テッド行きますよ!」


 息を整えたテッドは、馬車に乗り込んだ。

 そして、テオボルド達に見送られ、馬車は出発した。

 この村からだと、夕方には着く予定だ。


 ロイの横にリーフが座り、ロイの向かい側にアージェ、隣にテッドが座っている。


 「質問、宜しいでしょうか?」


 突然、軽く手をあげテッドが言う。


 「なんだ?」

 「リーファーさんってリーフですよね?」


 その言葉にリーフは、縮こまる。


 「申し訳ありません、ロイ王子……」


 アージェは、謝った。

 先ほどの態度で、バレたのだと思ったのだ。


 「よい。彼に知られた所で何も害はない。君の役目は、アージェに女性を近づけさせない事だ」

 「……え?」

 「お願いしますね!」

 「え~! マジで俺、それだけの為にいるの?」


 アージェにお願いと言われ、心底驚くテッドだった。


 「え? 何でアージェが行く訳? 理由は?」

 「若い騎士団をご要望だったからだ。だが彼は、女性が苦手だろう?」


 テッドは、アージェに問うもロイに応えられ、それ以上何も言えなくなった。

 この状況なら色々聞きたい。何故、リーフが女装させられているのか。

 そこまでして、隣国エーグに行く真の目的は何なのか。


 テッドは、アージェが選ばれたのなら彼は自分が知りたい事を知っているだろうと思うも馬車の中では聞けない。

 だた、一つだけ言いたい事があった。


 「リーフのその胸、デカすぎないか?」

 「ロイ王子のお好みの様です」


 テッドの問いに、アージェがボソッと答える。

 リーフは、顔を真っ赤にしていた。

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