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庭園の国の召喚師  作者: すみ 小桜


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第五一話 密かに行われた人体実験

 「うーん。リーフ次をお願いします」

 「えっと、これでしたっけ?」

 「違います! その二つ隣です! それはさっきのでしょう!」

 「……はい」


 透明な液体が入った試験管を持って言ったリーフに、ため息交じりにアージェが言った。

 試験管立てに置いてある試験管は、全て無色の液体だった。渡しては元に戻しているので、リーフはわからなくなったのだ。

 アージェは、受け取った試験管の液体をスポイトで吸い取ると、温泉の湯が入った試験管に移し、軽く振って実験を繰り返していた。


 「反応ありませんね」


 ふうっとアージェは息をはいた。


 「失敗ですか?」

 「あのですね。何かを作っているわけではないのですから。私が持っている解毒剤に反応がなかっただけです」

 「え? 毒かもしれなかったのですか!?」

 「魔法ではないのは確かです。それなら、その場ですぐにわかっているはずですからね。そういう類のモノだったとしても、私が持っているものでなければ調べられません。後は、全く違う原因だとしたらここでは調べようがないですね」


 そう答えると、アージェは考え込んだ。


 「とりあえず、混ぜない様に捨ててから、きれいに洗って下さい」

 「はーい」


 言われた通り、一個ずつ捨て魔法を使いきれいにしていく。

 手が汚れないから便利で良い。


 「あ、終わりました」

 「終わりました? では、ちょっとした実験を手伝って下さい」


 棚から何か持って来たアージェは、台の上に置いた。

 何だろうと、リーフは置かれた物を覗き込む。

 細長い板に魔法陣が二つ。


 「これ何ですか?」

 「これは、魔力測定器です」

 「測定器!?」

 「はい。古い物ですが、使えるでしょう。魔力を図ったりするものです。今回は、回復力を図ります」


 怪しげだけど大丈夫だろうかと、リーフは怯えていた。


 「痛かったりします?」

 「痛い? 別に魔力を流し込むだけなので、大丈夫だと思いますよ」


 それを聞いたリーフは安堵する。


 「まず両手をそれぞれの魔法陣の上において下さい」


 リーフは、頷くと言われた通り、両手を置いた。


 「では、右手から魔力を注ぎ込んで下さい」

 「え! 注ぐ? うーん……」

 「魔法を使うイメージでやれば宜しいかと……」

 「やってみます……」

 「出来てますよ。そのまま十分程お願いします」

 「え? 十分間も?」


 それは、魔法を十分間使い続けるという事だった。

 別に大変ではないが、長いと感じたのだ。


 「では、魔力を注ぐのやめて、そのままでいてください」


 やっと十分経ち、アージェが言った。


 「はい。あの……結構手がだるいのですが……」

 「そうですか? でも今、この作業が出来るのがあなただけなのですからもう少し辛抱して下さい。この後、もう一度同じ事をして頂きますよ」

 「え!? もう一回ですか?」


 そうですと、アージェは頷いた。

 手を乗せるだけだから力はいらない。だが、動かせないというのはつらかった。


 「もういいですよ。では、こちらに両手を置いて下さい」


 五分ぐらいたった頃、やっと板から手を離せると思ったら今度は平たいケースに手を置けと言われた。

 リーフが言われた通り置くと、手の上に液体をかける。


 「これって?」

 「温泉の湯です」

 「え!?」


 リーフは、驚いた! 毒が入っているかもしれないと言っていたのに、かけられたのだ!


 「あの。毒が入っているかもしれないんですよね?」

 「かもしれませんね。でも、実験は魔術師でないと行えないのですから仕方がありません」


 (って、何も言わないで人体実験って!!)


 温泉の湯は、そんなに多くないので、手が濡れる程度だった。


 「体調はどうですか?」


 手はそのままに、五分程経ってアージェが聞いた。


 「別に何ともありません。手がだるいだけです」

 「そうですか。量も少ないですし……」


 これではデーターがとれないかもという顔つきでアージェは言った。


 (酷くない? 僕が、具合悪くなってほしかったみたいじゃないか!)


 「取りあえず、あの板に先ほどの様に両手を置いて、魔力を注いでみて下さい」

 「はい……」


 言われた通り手を置き、魔力を注ぎ込む。

 さっきと同じく十分間そうした後に、ずっと手を置いたままにしておいた。


 「うーん。確かに回復が落ちてますね」


 この板は、魔法装置と繋がっていた様で、そっちに実験結果がでていた。

 温泉の湯に手を浸す前と後では、回復量が半分になっていた。


 「あなただけでは何とも言えませんが、これだけ差があれば温泉の湯が原因と言えるでしょう。このデータを持って、ダミアンさんの所に行きましょう」

 「よかった。ちゃんと結果が出て……」


 腕がだるだるなのに、成果無しだとくたびれ損だ。



  ◇ ◇ ◇



 「ダミアンさん」

 「これは、これでOKだ。うん? おぉ、アージェ」


 忙しそうにダミアンはしていた。


 「すみません。忙しいのに」

 「いや、かまわんが。どうした?」

 「これを見て頂きたくて」

 「どれ……」


 資料を受け取ったダミアンは、眉を顰める。


 「こちらが忙しいと言うので引き受けたのですが、これ以上は私の方では、わからないのです」

 「うーん。こちらにサンプルがないのなら実際に現場に行って、探すしかないだろうな。よし、この件は直接、陛下に伝えに行ってこよう」

 「え? 宜しいのですか? 忙しいのでは?」

 「温泉が消えては困るからな。結果は後で知らせに行く」

 「あの、急かす様で申し訳ないのですが、テオボルドさんに明日には結果をお伝えすると言ってありますので……」

 「わかった今日中に、結果を言いにそっちに行こう」

 「ありがとうございます」


 アージェは、ダミアンに頭を下げた。リーフも下げた方がいいのかと、真似て下げる。


 「リーフもご苦労だったな。体を張ったみたいで……」

 「あ、はい。まぁ……」


 (だまし討ちですけどね……)


 知っていたらやらなかったかもしれないとは、言えなかった。

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