第四話 二つの憶い 5
こんにちは。
第四話の「5」になります。
かなり遅いプレイですが、最近「マインクラフト」を初めてプレイしました。
操作が若干難しながらも、コツコツプレイしています。
活動のメインをあちらに奪われないよう、執筆活動続けていきますので、よろしくおねがいします(笑)
美術館に入り、入場料を支払う。
まったく。
収入の無い男に、こんなにも金を使わすのかよ。
賛同した俺にも落ち度はあれど・・・
明日橘に金銭要求してやる。
「すごい・・・」
何人か、俺達と同じ目的で来ている客数人とで、一枚の絵を眺める。
その絵には、満天の星空と大きな山の前で畑仕事をしている数人の女性のシルエットが映っている。
タイトルは、『星の扉』
人間が小さく描かれている為に、その山と星空の迫力が大きく感じる。
「こういう絵、好きか?」
「うん・・・」
「そうか・・・」
明美の口から「嫌い」なんて言葉を聞いたことが無いから、本心かどうかはわからないが、その表情は、立ち寄った後悔などは無さそうな雰囲気だ。
「私・・・絵描くのはニガテだから・・・」
「・・・・・・」
明美が感嘆の声を出している中、俺は別の方向に頭の中を巡らせていた。
ここの部分は、どういう手法で描いているのか。
ここの部分は、どんな道具を使っているのか。
そして、この絵は、何を意図として描いたのか。
考えて、そう易々と出てくる問題ではないのだが、そういう事を考える事が、上達の第一歩のような気がしている。
もちろん、明美のような考えで、飾られている絵を見るのも良いかもしれない。
「俺も、ここまで描けたらな・・・」
ボソッと呟く俺を横目で見上げながら、再び眼前の絵に感動している。
一枚の絵を見終えると、次の絵でまた釘付けになる。
そして、それも見終えると、また次の絵へ釘付けになる。
釘付けになっては、何度も同じ考察をしながら、また次の絵へ向かう。
一枚一枚、丹念に全て見終えたのは、入って四十分くらいの物だった。
枚数にしては多くはないのだが、中身は結構濃かった気がする。
量より質といった具合だ。
その中身の濃さ故に、自分の絵がどれだけ未熟なのかも思い知った。
いや・・・
もしかすると、これくらいの絵だって描けるのかもしれない。
けど、気力がもたない。
それが一番の問題かもしれない。
「葛城・・・くん・・・」
「ん?」
全て見終え、館内から出たところで明美の口が開いた。
「おねがいが・・・その・・・」
「おねがい?」
「う・・・うん・・・」
「なんだよ?」
「その・・・あのね・・・その・・・あの・・・」
「・・・・・・」
俺が読心術持ちだったら、コイツの悩みも一気に解消されるのだが、そんな超能力持ってるはずもなく。
「あのね・・・あの・・・」
もたもたしてても仕方が無いので、話を聞きながら他を回ろうと足を動かしたいのだが、明美の足に根が張ってしまっているのか、前を進んでもついてきてくれない。
「なんだよ」
「その・・・えっとね・・・」
「・・・・・・」
はぁ・・・
このままでは埒があかない。
今まではコイツの言いたい事を考えたり、その時が来るのを待っていたが。こっちだって、今日この機会にどうしても済ませたい事があるんだ。
「今すぐにでも聞かないといけないことなのかよ?」
その一言を明美にぶつけると、明美は何も言わずに首を横に振った。
「どこかに行きたいとかか?」
「ううん・・・そうじゃなくて・・・」
「じゃぁ、なんなんだよ?」
さっきよりも語気が強くなってしまったのが分かった。
明美も、その声に萎縮したのか、両肩がさっきよりも高く、狭くなったように見える。
その姿に調子を狂わされた俺は、頭を掻きながら、離れた明美のもとへ歩み寄り、そして・・・
「今からウチ来い」
「・・・えっ?」
明美の手を握り、駅へ向かう。
風を感じながら、グイグイと明美の手を引っ張る。
「これから時間あるだろ?」
「あ・・・えっと・・・あの・・・」
「時間あるなら来い。なかったらここでサヨナラだ」
後ろで必死について来てくれているであろう、明美のキョトン顔が目に浮かぶ。
それでも、握っている明美の手から、微かに握り返す力を感じた。
ほんの少し、顔面が熱くなる。
それを悟られない様、一切振り返りもせず、駅に到着しては改札をくぐった。
明美のペースを、完全に無視して・・・
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