第三話 距離感 6
こんにちは。
第三話の「6」になります。
暖かくなってきましたが、体調はどうでしょうか。
花粉症の方もそろそろ困る方も出てきているのではないでしょうか。
季節の変わり目という事もあり、体調も崩しやすい事かと思いますが、万全で過ごしていきましょう。
私も、体調管理に気をつけます。
「はぁ・・・」
つかれた。
ようやく外が暗くなって来た。
今日一日。今まででは感じる事も出来ない程の長い一日だった。
「はぁ・・・」
ガキ猫は、ダンボール箱の中で寝息を立てている。
前脚は揃え、その上に自分の顎をのせて、気持ち良さそうな表情をしている。
くそ!
どれだけ苦労したと思ってるんだ。
飯をあげ、買い物に行き、コイツをダンボール箱に入れては逃げられないようにし、また飯をあげ。
ようやく寝たかと思ったら、今度はおもちゃで遊べと催促をし、飽きたらまた寝て飯を食べ。
こっちは心身ともにクタクタになっている中、このガキ猫は気持ち良さそうな顔をしている。
「・・・・・・」
忌々しい。
クソババアも、コイツを溺愛していて、家事が前よりも疎かになっている。
そして、コイツは俺には懐かない。
いや、おもちゃで遊んでいる時はビビリながらもなんとか相手をしてくれていた気はした。
しかし、それが終わったらいつもの態度だ。
進歩ゼロ。
それどころか、後退しているようにも感じる。
「本当にこんなのでいいのか・・・」
幸い、この後に明美達が来る。
その時に、色々聞けば良いだけの話ではあるのだが、何を聞けば良いのかもわからない現状だ。
ブー、ブー
テーブルの上に置いてあるスマホが鳴り出した。
それを手にし、通話ボタンを押す。
「もしもし」
「あいよ」
「あの・・・前原・・・ですけど」
「なんだ」
「あの・・・今ね・・・その・・・」
「・・・・・・」
電話をかけてきたって事は。ようは、大学から帰って来たから、今から行っても良いかってことだろう。
いちいちそれを言い終えるのを待つのも面倒なので、それを全部伝えると、電話ごしに頷く声が俺の耳に届いた。
なんで俺が全部言ってんだ・・・
とまぁ、いつもなら思う所ではあるのだが、俺一人ではどうしようもない事を色々聞きたい事もあるし、ここは何も突っ込まないでおく。
「今からでも大丈夫だから、早く来いよ」
「あ・・・うん・・・あの・・・そのことなんだけど・・・」
「あ?」
他に何か言いたい事があるのだろうか。
そう思ったのも束の間。
「あの・・・あのね・・・行き方が・・・その・・・」
「・・・わからないってか?」
「・・・・・・」
向こうは喋らなくなった。
しかし、その反応が全てを物語っていた。
「橘はいないのか?」
「いてるけど・・・その・・・」
そう言うと、向こう側で何やら話し声が聞こえて来たが、次にスマホ越しに聞こえたのは橘の声だった。
「私もそこまで覚えてないんですよ」
「・・・・・・」
「ほら。昨日は、あの公園から葛城君の家までだったじゃないですか。その後は、葛城君から私達の住むマンションの近くまでだったので、駅からだとよくわかんないんですよ・・・」
たしかに、昨日は駅から直接俺の家まで連れて来たわけじゃないから、来れない理由としては合点がいく。
だが、スマホ持ち歩いているのであれば、地図なり何なり出来るだろうに。
というか、公園に一回行って、そこからなら来れるだろ・・・
などと、不満タラタラではあるが、それでも俺は、向こうの頼みを渋々ではあるが了承していた。
「駅だろ? 今から行くから、少し待ってろ」
それだけ伝えて、俺は通話を切った。
「誰から?」
「明美達からだよ」
「昨日の子?」
「そ」
ただ寝ているだけのガキ猫を見るのをやめ、俺は立ち上がって自分の部屋へ向かった。
いつも着ているジャケットを手にし、外に出る。
「さむいな」
まだ冬になるには早すぎる時期ではあるが、暗くなると話は変わってくる。
「走ってたらあったまるか」
相手も駅で待たせている。
急がない理由なんてない。
俺は、駅までペースを落とさない程度に足を動かす事にした。
公開は毎週土曜日の予定です。
予定は予告無く変更する事があります。
予め、ご了承ください。