第三話 距離感 4
こんにちは。
第三話の4になります。
第三話の4にもなって、「距離感で合ってたっけかな?」と、先日思い始めてしまいました(汗)
「きょりかん」と言っても、漢字にすると「距離感」と「距離間」とがあるんですよね。
今更ながら調べてみた所、
前者は「物理的・精神的な距離」
後者は「空間的な距離」
らしいです。
私の思惑では、両方ともいけそうです(苦笑)
そんな話をしてしまいましたが、第三話の4になって、早速三話も折り返し地点です。
これからもよろしくおねがいします。
ガキ猫は、リビングの片隅に居た。
朝から仕事でいないジジイも、最初は怪訝な表情でソイツを眺めていたが、特に深堀りをする事無く、いつも通りの生活をしていたらしい。
何か二言三言あるかと思ったが、何も言って来なかったようだ。
昼飯も終わり、そこから立ち上がると、俺はガキ猫の生活スペースを確保すべく、自分の部屋からダンボール箱を取りに行った。
「本当にここで良いのかね・・・」
階段を上りながらも、一抹の不安がよぎる。
俺達が何の知識も無いまま、猫を飼う事自体が間違っているんじゃないかと。
自分の部屋へ行き、ダンボール箱を持ち上げ再びリビングへ向かう。
ソイツの傍に、それを置き、ガキ猫を抱えようとする。
「シャー」
相変わらずの反応だ。
それでも俺は気にしなかった。
「ほら、来い」
ソイツはリビングの角で逃げ場を失い、それでも捕まるまいと、必死に威嚇している。
その様子を背後から見ているババアの事なぞ、気にする余裕も無かった。
「ほら」
両手をガキ猫の前に差し出す。
すると、相手は威嚇しながら俺の右手に思いっきりパンチしてきやがった。
「いっ痛」
そうなるだろうと考えてはいたが、まさか本当にされるとは思っていなかった。
引っ込めた右手から、引っ掻きキズが見える。
「このクソガキ猫!?」
「いい加減にしなさい!」
俺の怒りが爆発した瞬間、背後からババアの怒鳴り声も響いた。
「そんなすぐに怒鳴り散らして、この子が懐くわけ無いでしょう」
「・・・・・・」
お前はコイツの何がわかるんだ。
差し伸べて威嚇されるんだから、攻撃的にならなきゃダメだろ。
言っても効かないなら、ぶつしかない。
技でダメなら力でねじ伏せれば良いだけの話だ。
実際、コイツは俺の怒号で何度もビビらせている。
そうすれば、いつかは言う事を聞いてくれるに違いないんだ。
しかし、ババアはそれを許さなかった。
「シャー」
ババアが手を差し伸べているが、ガキ猫の態度は変わらない。
そんな様子を横から眺めながらも、引っ掻かれた傷がヒリヒリと痛む。
「これは時間がかかりそうね」
ため息混じりに唸るババアを見ながら。それでも、その目はまだ諦めていない様子だった。
「この子が心を開いてくれるまで、お母さん頑張るから!」
やけに闘志を燃やしているババアに、その姿すらも威嚇しているガキ猫。
ハッキリ言って、もう明美達にコイツを託したいくらいだ。
まったく。
なんでペット禁止の家に住んでんだよ。
理不尽なのはわかっていながらも、そんな雑念が過る。
「ほーら、いらっしゃい」
「シャー」
「ほらほら、怖がらなくても大丈夫なのよ」
「シャー」
一人と一匹のやりとりは未だ変化はない。
後ろ髪をくしゃくしゃにしながら、ため息混じりに俺はリビングを出た。
「ちょっと出掛けてくる」
「あ、それなら、この子の遊び道具とかも買って来て頂戴」
「ああ」
もとよりそのつもりだ。
だが、どんなものを買えば良いのかはサッパリだ。
遊び道具っつったって、どんなのがあるかもわからないぐらいだ。
せいぜい、猫じゃらしや爪とぎ。あとは、マタタビくらいしか知らない。
「猫じゃらしでも買ってたらいいわな」
スマホや家のカギ、財布をポケットにしまい、玄関の扉を開けた。
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