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その12

◇◇◇◇◇◇ その12


 次の日、晴信は静の案内で本宮へと向かった。笠を被り、静と一緒に道端の石の上に腰を降ろしていると昨日と同じように男達を乗せた御柱が通り過ぎていく。本宮四から本宮一の柱全てが諏訪大社本宮に到着するまでにはかなりの時間がかかった。


 本宮に到着した柱は神社の四隅に運ばれる。ここからが祭りのハイライトだ。柱が建てられる場所には既にやぐらが組み立てられ、柱の到着を待っている。大勢の男達によって運ばれた御柱は、さらに長い時間かかってやぐらまで運ばれた。


 やぐらまで運ばれた柱は、太い縄で縛られる。その縄にはたくさんの男達がとりつき、


「そや、そや」

 総代の掛け声に合わせて引っ張られる。掛け声が掛かるたびに柱は少しずつ斜めになる。柱の上にまたがっていた二十人ほどの男達は傾斜がきつくなるたびに柱の上に移動し、必死の形相でしがみついている。


 やがて、柱の上には三人の男だけが残った。

「はあー、ああー、はあー」

 木遣り歌が響く中、


「そや。」

 総代の最後の掛け声で柱は見事に直立した。一番上になった男は得意の絶頂である。

「すごいものだな。」

 晴信はつぶやいた。


「あの柱に最後まで残った男は諏訪でも英雄となり、末代までの語り草になりまする。」

 晴信のつぶやきに静が答えた。四から一まで柱は徐々に太く、長くなっており、時間もかかる。ようやく一の御柱が建つ頃にはあたりは暗くなり始めており、境内にはかがり火が灯された。


 案内役の静は晴信の疑問に楽しそうに答えてくれていたが、一の柱がやぐらにかかり、直立する頃には晴信そっちのけで目をらんらんと輝かせ、目を凝らしていた。


「お館様、いよいよでございます。」

 言われて晴信が目をやると総代の最後の掛け声で柱が、建つ瞬間であった。


「せい。」

 ほら貝が激しく鳴る中、総代が最後の掛け声を怒鳴る。その声に答える怪物のように本宮一の御柱は直立した。




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