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その10

◇◇◇◇◇◇ その10


「お館様。」

ようやく晴信は目をさました。


「私はどうなったのだ。」

「はい、奥の院からなかなか出てこられずに心配しておりましたところ、しばらく後に御自分で出て来られました。御気分がすぐれないらしくてその場にしゃがみこまれましたので、私がここまでお連れ致した所存にございます。」


「うむ、大儀であった。少し、眠りたいので部屋を貸して欲しい。」

 晴信はようやく言葉を発すると静かに目を閉じた。自分で歩いた事は全く覚えていなかったが、箱の中からなにやら飛び出し、記号のようなものが頭の中を駆け巡ったた事だけはぼんやりと覚えている。


「あれはどのような意味なのだ。」

 薄れゆく意識の中で晴信は懸命に考え続けていた。


 諏訪を平定した後に迎えた初めての春、晴信は小数の小姓を連れて諏訪湖の周辺に出かけた。祭りの準備ににぎやかな農民達を馬上から見た晴信は家臣に尋ねた。


「あれはなんという祭りだ。」

「あれは御柱祭でございます。」

「昨年はこのような祭りのことは聞かなかったぞ。」

晴信は不思議に思って問いかけた。


「正式には式年造営御柱大祭しきねんぞうえいみはしらたいさいといいます。この祭りは7年ごとの寅と申の年に行われるのでございます。」

「それはぜひ一度見てみたいものだな。」

「来週が一番見物ですのでご案内致します。」


 次の週、晴信は忍びで諏訪を訪れた。 御柱の先頭にはきれいな飾りがつけられ、角のように二本の棒が空に向かって伸びている。その角をめどてこと呼ぶらしいのであるが、一本のめどてこには頑強な男共が五人ほどしがみつき、誇らしそうに柱を引っ張る人々に指示を出している。


「そおれ、そおれ。」

 男共が声をかけるたびに巨大な柱がずるずると人々の力により前進していく。晴信の前を引かれている御柱には「一ノ宮」と書かれた板が打ち付けられているがこの柱からは四本の太い縄が伸び、千人もの人間が縄を引っ張っているように思われた。




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