その1 全52話 毎日朝7時更新
◇◇◇◇◇◇ その1
「春からはいよいよ短大生だね。」
卒業式を終えたその日の夕方、玉川涼子は友人の御鏡静奈に歩きながら話しかけた。
「これで、ようやく生徒会長から解放されるよ~。涼子も副会長お疲れ様でした~。」
静奈と涼子はさんざん進路に迷ったあげく、地元の女子短期大学に進学することにした。二人とも介護士や保育士を養成する社会教育学科である。
「静奈は東谷先生の後輩になるんじゃなかったの。」
涼子が静奈の気持ちをうかがうような口調で静奈に尋ねた。
「都会は賑やかすぎて私には合わないよ~、それに~、もうしばらく涼子と一緒にいたいじゃんね~。」
「このこのお、お世辞にしてもうれしいことを言ってくれるねえ。」
「心配せんくても、東谷先生をとったりしないよ~。」
涼子は静奈の思わぬ返答に顔がにやけてしまう。
御鏡静奈は実に500年ぶりに現世に降臨した女神様である。新興宗教の教祖などではない。長野県宮川村にある宮川高校在学中には、国家間の大きなトラブルを2つも見事に解決し、日本に莫大な利益をもたらした本物の女神様である。
静奈は宮川高校では生徒会長を務めていた。その時の顧問が東谷健一である。健一は宮川村役場に所属しながら宮川高校講師も兼任していた。が、実は内閣総理大臣特務M機関に所属し、静奈をサポートすることが本務である。
健一は帝都大学を主席で卒業した秀才である。異星人と脳波交流できる遺伝子を持っており、女神様のサポートにはうってつけの人材である。帝都大学を始めとする主立った大学は、女神様をサポートできる人材を探し出して育成することを隠れた目的として設置されているのである。
女子大生女神様 御鏡静奈の活躍はまた後日に報告する予定である。お楽しみに~。
さて、短大を無事卒業した静奈と涼子の二人は取得した保育士の資格を活かして、保育園に就職する予定であったが、
「有事の際にサポートする自信がない。」
と総理大臣より懇願されて、M機関におとなしく所属した。よって二人とも見かけの就職先は政府外郭団体M企画の一員である。