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第41話:決闘


リアルの忙しさに追われ、はっと気づく。


「小説投稿してない!!」


そんな感じで、夏休み終わりの小学生のように書き上げる……そんな日々です。


ただし、手は抜きません。書くにあたり、私はその時その時の思いつく限り最高の表現を作品に込めるのです(自身の表現力の狭さはさておき……)。


第41話です。どうぞ。





「お前ら!」


「大丈夫!?」



大量のイビルによる包囲網により、結局ソラとクレスも捕まってしまった。二人は武器を取り上げられた上で後ろ手を縛られ、先に捕まっていたヤマト達三人の元に連れて来られたのだった。



「大丈夫……とは言い難いんやけどな……」


「まぁ、合流は出来た訳だ、うん」


「この次はあの世で合流せい、なんてことにならなきゃええがのう……」



とりあえず、今は全員無事であることが救いだった。だが状況はかなり悪い。武器を取られ、きっちりと拘束された上大量のイビルの見張り。突破は困難だ。それ以前に、これから何が起きるのかも想像が出来ない。



「……で、今度はどうする気なんだ……メディストル!!」



仲間達と固まって座らされたソラがキッ、と睨んだ先には、今回包囲網を展開した張本人、メディストルが、神経を逆撫でするような勝ち誇った笑みを浮かべていた。



「今度は……か。つまり自分が、以前もこうして捕まって為すがままにされてしまいながらも学習しないまま再び捕まるような、猿以下の下等生物であることを認める訳じゃなぁ?」


「なんだと!?」


「負けた犬ほどよう吠えるわ……フェッフェッフェ……」



睨みをはね除け、逆にソラを罵倒する。メディストルはそれを心から楽しんでいた。勿論、これで終わる筈がない。


時は既に、陽の落ちきった夜中。マッドサイエンティストであり、マッドサディストでもあるメディストルのその本質が、復讐の色を混ぜてソラ達五人に襲いかかろうとしていた。




「メディストル殿」



突如、メディストルの汚ならしい笑い声をかきけすように、キリッとした声が響いた。


誰もがその声に注目する。そこにいたのは騎士のマスターイビルだった。ソラ達は新たな敵の登場に驚きを隠せない。


メディストルの側まで歩み寄った騎士は、ソラ達の方に目線を配る。……が、その目は五人に向けられてはいない。


騎士はソラのみを、まるで睨み付けるかのように見ていた。



(なんだコイツ……?)



当然ソラも、自分に向けられた異様な目線に気づいている。しかし、このイビルに出会ったのは初めてである。向けられた目線が『異様』である理由が思い当たらないのだ。ソラは確かにイビル共通の敵であるが、『異様な』目線は、それ以上の何かを物語っていた。



「……こやつが……」


「そうじゃ……こやつがソラ。イビルの憎き敵であり……




お主の最大の敵じゃよ」




メディストルの言葉を聞いた瞬間、騎士の端正とした表情が憤怒のそれに変わる。突然向けられた怒りに、ソラは戸惑うしかなかった。




「お前がソラ……お前が……!!」




騎士は怒りを鎮めぬまま腰の大剣に手を伸ばし一瞬で抜くと、座らされているソラの首筋にピタリと突きつけた。




「……私と戦え、ソラ……」






「は?」




捕まっていながら情けない声を上げるソラ。それほど妙な提案だった。


しかも、どうもこの騎士、イビルだからソラを殺す、という訳ではないらしい。



「なんだ、俺を殺さないのかよ?」



何のために一騎討ちを持ちかけているのか、探りを入れようと挑発気味に言った。



「私と戦え」


「意味が分かんねーな、すぐに殺した方が確実なんじゃねーのか?」


「戦え」


「いいのか?俺と戦えばお前が危ないんだぜ?」



「私が上であることを証明せねばならんのだ!!だから戦えっ!!なんならそこの連れ三人を殺してやってもいいんだぞっ!!」



挑発が騎士の気に触れたのか、或いはいつまでも頷かないソラに苛立ったか、突然騎士が声を荒げた。これには流石にソラも閉口する。


しかし、幾つか分かった。どうやらこの騎士は、ソラに対して自分の優位を示すことに並々ならぬ執着を持っている。

また、騎士は仲間達のことを『連れ三人』と言った。ソラを除けば、騎士の言う『連れ』はクレス、ヤマト、アルエ、セルビスの四人だ。この中の誰か一人は、騎士にとって殺害対象になり得ないらしい……それが誰か、その理由は分からないが。


しかし、逆に言えば、自分と、あと一人以外なら確実に今、縛り上げたまま無抵抗の者でも殺すだろう……。そう結論を出したソラは、騎士との決闘を承諾した。





意外にも、ソラが決闘を承諾すると、メディストルはすぐさまソラを解放し、剣も返してきた。


イビル達が円陣を広げて戦えるスペースを作り出す。その中心で二人が間合いをとって剣を構え、決闘が始まろうとしていた。



(しかし……コイツ何を考えてやがるんだ……?自分が俺より優位だっつーのを証明したいだなんて……それに、メディストルが口出しせずにいるのも不気味だ……)



ソラの頭の中は不審感で一杯だった。回収しきれない謎が多く残っている。考えあぐねても仕方がないのだろうが、相手はイビル。特に、メディストルがいることで、何かしらの罠があるのではないかと考えているのだ。




「集中してもらおうか」


「!」




ソラの思考を読むかのように、騎士が声をかけてきた。



「真に私の優位を示すためには、お前には持ちうる全ての力をもって戦ってもらわねばならんのだ」


「…疑わねぇ方が無理なんだよ…そこまで疎まれる理由に心当たりもねーのに。てめぇらの罠かもしれねーしな」



隠してもあまり意味がない、と判断したソラは、毒づくように吐いた。すると、騎士は気を悪くするでもなく、ふむ、と少し考え、衝撃的なことを言った。



「ならばこうしよう。お前が私に勝ったなら、お前達全員を解放し、逃がしてやる」


「「「「「!!?」」」」」



今の状況を見れば、こちらにかなりのメリットがある提案だ。これだけのイビルで囲っておきながら、脱出の絶好のチャンスを与えるとは。



「集中する気になったか?」


「……メディストルはどうなんだよ」


「フェッフェッフェ……構わんよ」



イマイチ信用は出来ないが、メディストルもその条件を呑んだ。これはチャンスだ。





「……約束は守ってもらうぜ」



遂に戦いに同意したソラはキッと騎士のイビルを睨み、剣を握る手に力を込めた。騎士のイビルもまた、一層の力を柄に込める。


ようやく決闘開始……であったが、しばらく二人は睨み合い続けた。



(あいつの身の丈ほどの長い剣…リーチでは確実に負けている。しかもさっきの抜刀速度…攻撃もあれだけの速さだとしたら、打ち合いは不利か……


なら、一気に懐に飛び込むしかねーな。そうすりゃあの長い剣が仇になるはずだ。闇雲に突っ込むんじゃあの速攻でやられちまうから、わざと隙を作って攻撃を誘導して、それを防ぐ間に飛び込む!)



ソラは睨みながら分析をし、敵の力と動きを予測して立ち回りを組み立てていた。





「ソラのやつ、大丈夫かいな?あの騎士モドキ、相当出来るで」


「それはソラも分かってるだろ……大丈夫だ。今のところ、ソラには油断も動揺もない」


「とにかく、見届けるしかないのう……あんな条件も付いた以上、ワシらには手助けのしようもないわい」


「ソラ……」







その場の者全員が固唾を飲む中で、先に動いたのはソラだった。剣を右の脇に構え、騎士のイビルに真っ直ぐ突っ込んでいく。


対して騎士は、ソラが剣を構える正反対の方向……ソラの左肩から切り裂こうと、両手で大剣を振るう。



(よし!!読み通りだ)






ソラは咄嗟に騎士の斬撃を防御し、刃を滑らせつつ懐へ飛び込んでいった。


だが……




「がは……!」




懐に向かうソラに合わせ、騎士が繰り出した右足が交差方気味にソラの腹に突き刺さる。ソラはそのまま蹴り飛ばされ、再び間合いを離されてしまった。



「ソラァ!!」



クレスの悲痛な叫びが響く。



「あの至近距離から蹴り返すとは…なんちゅう反応の速さや…」


「いや違う……あいつは、ソラの作戦を読んでいたんじゃな。わざと隙を作ったんじゃ」



「!! 危ないソラっ!!」



蹴られた腹を抑え、仰向けに倒れたソラがアルエの言葉にはっとして騎士の方を見ると、騎士は既に間合いを詰め、剣を振り上げ攻撃体勢に入っていた。ソラは咄嗟に上半身を起こし、脳天を狙ったその一撃を剣で防御する。



「ぐ……っ……!」



しかし、騎士が次第に体重をかけてくる。座っている体勢では力押しに勝てない。ここで防御を崩してしまえば、目の前に迫っている刃が頭に突き刺さるだろう。


そこで、ソラは水平にしていた剣を斜めにして、体重をかけられていた騎士の刃を滑らせた。騎士がガクリと体勢を崩した隙に、ソラは一度上体を寝かせ、首筋にハイキックを打ち込んだ。それを喰らった騎士は完全に転ばされ、ソラはその隙に立ち上がる。騎士もまたすぐに立ち上がり、再び両者膠着状態に入った。


二人の力はほぼ互角のようだ。




「それなりに出来るようだが……それだけか?ソラ」


「何……


……っ!?」



瞬間、剣を縦にして横薙ぎの一撃を防いだソラが、また吹っ飛ばされた。





「くそっ!」



ソラは倒れなかった。吹き飛ばされてなお体勢を崩さず、片膝立ち状態で着地した。が、すぐさま脳天に騎士の刃が迫る。辛うじて防御するが、騎士は今度は、連続して斬撃を打ち込んで来る。



(そうだった……こいつ、剣の扱いは速いんだった!)



身の丈近くもの長さがある大剣を、一瞬で抜き放って首筋に突きつけてくるほどの腕なのだ。


ソラはなんとか捌ききったが、再び騎士の蹴りが腹に入った。上からの攻撃に気を取られていたため、回避出来なかったのだ。


元の体勢が片膝立ちだったため仰向けに転ばされるだけだったがそれがまずかった。次いで襲いかかる上からの斬撃を、寝た体勢で受けるしかなかったのだ。しかも今度は、騎士も片膝立ちになって体重をかけてくる。片膝立ちは立った状態よりも低く、安定した姿勢のため、力のかかる点をずらして滑らせても効果は薄い。



「ぐ……ぐぐぅ……!!」


「他愛もない。このまま止めを刺してやる」



完全に逃げ場を失ってしまった。なんとか動く足で蹴りを出し、抵抗を試みるも、力が入らないため鎧を着た騎士には通用しない。絶体絶命だ。






「ソラァァァ――ッ!!」








叫びと共にクレスが立ち上がり、後ろ手を縛られたままにも関わらず騎士とソラの元に駆け出した。そしてそのままの勢いで、ソラを抑え込む騎士の肩の側面に、光を纏った飛び蹴りを打ち込み、騎士を吹き飛ばした。



「クレス!?」


「大丈夫?ソラ!」


「何やってんだお前は!危ねーだろ!」


「二度とソラや、みんなを死なせない。そのために私も修行したんだから」


「全く……」



言いながらも、ソラはクレスの手に巻かれた縄を剣で切る。周りはというと、突然の事態に呆然としていた。





「ソラ!!逃げるぞ手を貸せぃっ!!」




一足早く我を取り戻したセルビスが、ソラに指示する。それを受け、ソラはセルビス達三人の元へ駆け出した。



「決闘の放棄は認めん」


「邪魔させない!」


「……!」



立ち上がり、ソラを追おうとする騎士の前に、クレスが立ちはだかった。



「……どけ」


「どかないよ」


「どけ!」


「どかない!」



問答は通じないと判断した騎士は、剣を縦、横と振るうが、クレスはそれを全て避ける。何度も避けることで速度を見切ったクレスは、縦斬りを右足の回し蹴りではね除け、その勢いで回転ジャンプしつつ体勢を横にし、左足に光を纏い、回し蹴りを騎士の頭部に浴びせた。


その隙にソラは三人の元に辿り着き、縄を切って救出していた。



「目を瞑れぃ!」



セルビスが叫ぶと、何処に隠していたのか、爆弾のようなものを取り出した。煙幕の類だと判断したソラ達は目を瞑る。








「……なんで……」






「……え?」



クレスは、悲しみに満ちた声を確かに聞いた。出所を探ると、その声はクレスの蹴りを喰らってうつ伏せに倒れていた騎士の方から聞こえていた。




「なんでだ……クレス……!」




騎士が顔を上げる。




「……!!」




その顔を見て、クレスは目を大きく開け、息を呑んだ。世界が動きを止めたかのような衝撃を覚えた彼女に、爆弾の爆発音など聞こえなかった。









そして、辺りは煙に包まれた。










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