第38話:伏兵
時間がない……と嘆きながらなんとか投稿します。
第38話です。どうぞ。
イビル達の襲撃があった翌日、ソラ達は船を漕ぎ出し島を後にしていた。襲撃があったということは、こちらの場所も知られているということだ。となれば、いつまでも島に留まる訳にはいかない。
島に来てから得た物は多かった。ソラは力を使う術を身につけ、クレスは戦えるほどに鍛えられた。島での修行は、確実に実を結んでいる。
しかし、島に来てから変化した事はそれだけではなかった。
「……で……なんであんたも……?」
「いやワシ島に残ったところで危ないじゃろ。多分あと一回くらいは襲撃来るじゃろうし」
櫂を漕ぐソラの怪訝そうな眼差しの先に、船の乗組員が一人増えていたのだ。
「ま、まぁでも、戦力としては申し分ないし、一緒に来てくれるのは有り難いですよ」
「うぅ……クレスは優しいのう……どうもあやつは冷たいわ、太陽のくせに」
ソラのこめかみに青筋が走り、櫂を動かしていた手が剣の柄を掴む。
「わわ!?ソラ、船で暴れるな!」
「そして漕ぎや!」
アルエとヤマトが止めようとするが、ヤマトの言葉がズレているのは、彼も櫂を漕いでいるからだろう。一人で漕ぐのは辛いのだ。
「クレス〜ソラが怖い……」
セルビスがクレスにすがる。
「…………」
ソラが剣を抜く。
「だーかーらー暴れるなぁ!!じいちゃんも煽るな!!」
アルエが止める。
「そして漕げェェ!!」
ヤマトがズレる。
「……あはは……」
そしてクレスは苦笑する。
そんなこんなで、五人を乗せた船が辿り着いたのは、今や懐かしきレビタの町であった。
「懐かしき……って、たかが二週間ぶりくらいだろ?」
「ソラ、そこにツッコんじゃ駄目だよ……」
この小説、2ヶ月くらいを4年かけて書いているのである。
「おーい、ごちゃごちゃ言ってないで、ちゃんとついて来いよ」
ソラとクレスが、声をかけてきたアルエの方に振り替えると、アルエ含む他の三人が小さな路地に入るところだった。
五人が向かっているのはアルエの家。今日は船旅の疲れ(主にソラとヤマトの)を癒し、明日次の町に向かおうとしているのだ。
「な、なんやこれは!?」
真っ先に路地を抜け廃虚に出たヤマトの声に、四人は反応し駆け寄った。
そこで見たのは、かつてアルエの小屋が建っていたはずの場所に積み上げられていた、廃材の山あった。
勿論これが、アルエの小屋の成れの果てであることは言うまでもないだろう。
「な…っ……!」
普段は冷静に努めるアルエも、かつて住んでいた小屋の崩壊のショックは大きかったようで、肩を震わせながら廃材の山を呆然と見つめていた。
「一体何があったんだ……?」
「なんや台風でも来たんかいな……?」
ヤマトがぼそりと呟く。自然災害でなければ、これほどの惨事にはならないと考えているのだろう。
しかし、それにしては不自然だ。小屋をこれほどに破壊し尽くす自然災害ならば、放棄されて脆くなった周りの建物だって無事ではすまないはず。しかし、周りの廃虚はほとんど無傷である。
「おいみんな、これを見てみい」
いつの間に拾ったか、腰の高さ程度の角材を持ったセルビスが集合をかけた。ソラ達四人は、号令に従ってセルビスの周りに集まる。
セルビスは、四人に角材を見せた。
「この角材……スッパリと綺麗に切断されておるじゃろ」
角材の切り口を見た四人は驚くと同時に仮説を立て始める。こんなに綺麗な断面は、自然災害ではまず起こり得ない。何者かが、鋭い刃物でスッパリと切ったのだろう。
「誰かが……アルエを狙って仕掛けてきたってことか……?」
ソラがひとつの仮説を挙げた。アルエは対悪人の殺し屋だった。故に、殺した相手と親しかった人物などから恨みを買っている可能性もある。
「いや……狙われているのはアルエだけではないな」
いつの間にか、セルビスの目線がソラ達から外れ、廃虚の一点を睨んでいる。それに気づくと同時に、ソラ達も何かにはっと気がついたらしく、ササッと円になってそれぞれ違う方向を警戒する。
――何かに囲まれている
………
「来るぞ、ソラ!クレス!」
「おう!」
「ハイ!」
セルビスの合図で、ソラとクレスはそれぞれ剣と拳に光を集中し、三人の武器に光を移す。それを皮切りに、あちこちから七、八体の黒い影が飛び出し、一斉にソラ達に襲いかかってきた。
光を武器に移すために一ヶ所に固まっていたソラ達は五方向に散開し、襲撃をかわした。
影とソラ達が互いに向き合うと、ソラ達が五方向から影達を囲む形で膠着する。
過去に幾度も見た猿のような形から、影達がイビルであることは想像に難くない。
が……所々で、見知っているイビルとは違うところが散見する。頭部は鮫のように尖っており、足もより太くなり強靭な印象がある。そして何より、両の肘の先には手がなく、刀の刃になっていた。
「新しいタイプのイビルだ……!より戦闘向きになってるみたいだな」
五人の中で、最もイビルと戦い慣れていたソラは、そう分析していた。
「小屋を破壊したのもこいつらじゃろ。材の切り口から見てもな……」
セルビスは状況を整理し……
「……つまり、切れ味は抜群、てことじゃな……」
…危険度も付け加えた。
「「「シャア――ッ!!」」」
イビル達はそれぞれの相手を定め、ソラ達が包囲する輪の中心から広がるように飛びかかった。
「むっ!!」
真っ先に、アルエが苦無を構え、イビルに合わせて突進する。両腕を振り上げて繰り出される唐竹の攻撃に、両手の苦無を突き出し正面から刃にぶつける。突進の勢いを使いイビルを跳ね飛ばすのが狙いだった。
しかし、全体重と勢いを乗せた突きは、イビルの剣に叩き潰された。その重みに耐えきれず、アルエはうわっ、と声を上げてその場にうつ伏せで倒れ込む。
「く……、はっ!!」
そこに間髪入れず止めを刺しに来たイビルの突きを、アルエは間一髪で後ろに跳んで回避し、距離を取った。標的を失ったイビルの刃は地面に突き刺さるが、イビルはすぐさま抜いて構え直す。
(腕力も相当強い上、反応も速いな……!!)
アルエは、高くなったイビルの戦闘能力を身をもって感じた。
他四人も、これまで通りにはいかず苦戦気味のようだった。
ソラはイビルの連続攻撃に剣を構え防戦の一方だ。
セルビスは小刀を巧みに操り、イビルの斬撃を横から弾き飛ばし隙を伺うが、なかなか狙えない。
クレスはそもそも格闘術を戦法としているため、刃に対し拳や蹴りは危険だ。回避行動をとるしかなかった。
「オラオラァ、どぉしたんやバケモンがぁ!!」
そんな中、ヤマトだけはイビルを圧倒していた。ヤマトは二刀流であるためイビルの連続攻撃にも対応出来たのだ。
イビル達もヤマトを警戒してか、ヤマトにだけは二体或いは三体で攻撃を仕掛けていたが、ヤマトは全て捌いていた。捌くだけでなく、イビル以上の手数で剣を繰り出す。イビルが凌げなかった刃が徐々にイビルを傷つけ、やがて三体のイビルは消滅した。
ヤマトは自らが相手していたイビルの消滅を確認すると、未だ苦戦している仲間達に加勢しようとソラ達に駆け寄る。
「みんな、大丈……「ヤマトには負けたくねぇ!!」
「「おう!!」」
「え……あ、うん」
ヤマトの助けが入る前にソラが叫び、アルエとセルビス、クレスも遠慮がちに応える。それを契機に四人は瞬く間に劣勢を覆し、残りのイビルを殲滅した。
「……なんやろな……ワイのギャグキャラ化の傾向……」
呆然と立ち尽くしたヤマトの両腕は、刀を握ったままだらんと脱力していた。
その後、町に留まると危険であるというセルビスの意見の元、五人はレビタの町を出て歩き出した。
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