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第36話:希望の力


大変長い間投稿出来ずすみません!実は私も就職活動真っ只中におり、なかなか時間が取れずにいます。今後もそのような状態が続くと思われますが、何卒ご容赦下さい。


第36話です。どうぞ。





「ハァッ!」


「ぐはっ!」



クレスの回し蹴りがセルビスに命中し、セルビスは地面に打ちのめされた。修行を始めてから三日、クレスは驚きのセンスで腕を上げ、もはや徒手空拳同士ではセルビスを凌ぐほどになっていた。



「ぬう……はぁ!!」



立ち上がったセルビスは一度呼吸を整えると、簡素な剣を握り、クレスに向けて振る。



「やっ!!」



クレスはこれを手で打ち払った。その後何度も振るわれる剣の刃を横から叩き、その軌道を反らす。クレスは、剣の速さと刃筋の角度を見切れる動体視力と、刃の腹を叩いてかわせるほどの反射神経をも会得したのだ。



(たった三日でここまで強くなるとは……とんでもないセンスを持っておったんじゃのう……)



セルビスですら驚愕するクレスの才能はいざ実戦に臨んでも、もうソラ達の足手まといにはならないレベルだろう。


しかし……。



(まだまだ、力不足だ。ソラ達と一緒に戦うには、まだまだ力をつけなくちゃ!!)



当の本人は謙虚で、まだまだ鍛え込むつもりのようだ。その向上心は、クレスをみるみる成長させるだろう。末恐ろしいことである。



(い…いつか俺追い抜かれやしねーだろうな……)



相変わらず横で修行をするソラは、密かに焦っていた。





「お前の調子はどうじゃ?」



クレスに倒されたセルビスは、打撃を受けた箇所を手で押さえながらソラに尋ねた。



「ああ。なんとか……」



成長していたのはクレスだけではなかった。ソラもようやくコツを掴み、順調に光の保持時間を伸ばしていた。今もクレスがセルビスと組み手をしている間ずっと保持していれたのだ。時折模擬戦をしても五分くらいは持続出来る。


ここに来てソラの修行が捗ったのには、クレスの影響によるところが多い。クレスの成長の早さはソラに、負けてられないという意識を植え付けた。結果、ソラもまた、急激な成長を遂げることが出来たのだ。



(守ろうと思ってる娘に追い抜かれたらそりゃイヤじゃよな)



そんな中で、ヤマトとアルエだけが複雑な表情をしていた。弱いからという訳ではない。寧ろ二人も個人での修行によって相当に腕を上げている。



「これからは、救うための戦いになるんやろ?」


「あぁ……」


「ワイら、どこまで力になれるやろか……?」


「………」



今まで『殺す』戦いをしてきた二人にとって、救うための戦いをするということは難儀なことだった。かといって、自分達は殺すしかない、と割り切ることは出来ない。命を奪うことに躊躇いがあるとともに、ソラの決意を無駄にしてしまう。


その苦悩は、ソラとクレスが修行する間、ずっと二人を蝕み続けていた。



「…………」



その苦悩を、セルビスは何となく感じていた。





「よ〜し、みなちょっと集まってくれぃ」



セルビスが号令をかけると、四人はそれぞれの修行を中断し、なんだなんだと集まった。



「ソラやクレスの修行は一段落というところまで落ち着いた。じゃが、あとの二人は伸び悩んでいるようじゃな」



あとの二人……といったら、ヤマトとアルエ以外にはいない。ソラとクレスは二人の方に向き直った。


注目を浴び、やがてヤマトがアルエと共に悩んでいた、「イビルを救う力を持たない自分達の、これからのあり方」について喋った。ソラとクレスはヤマト達がそんな悩みを抱えていたことを知らなかったようで大層驚いたらしい。


だがセルビスだけは、予測がついていたらしく冷静だった。




「と、いうわけじゃから実験してみようかのう」




予測していたからか、セルビスはいともあっさりと言い放った。





「じいちゃん……どういうことだ……?」



アルエが尋ねるとセルビスはゴホン、と咳払いをし、話し始める。



「ソラは自分の力を剣に伝わらせる手段を身につけた。その力を他の者の武器に伝わらせるのじゃ」


「なんやて!?そないなこと出来るんかソラ!?」


「ち、ちょっと待てよ!出来る保障はないぜ!」



セルビスの説に大きく反応するヤマト。どうやら強い興味を持ったようだ。一方でソラは、突然要求された技術に戸惑っている。まぁ当然の反応だな、と思いつつセルビスはその方法を述べる。



「よいか、まず今まで通り力を剣に乗せる。次に剣に他の者が武器を離さぬように重ね、力をその武器に伸ばすのじゃ。要は今までやってたことの延長じゃよ。なぁーに、そうは難しくないじゃろ。」





―――――――――――



クレスを除いたソラ、ヤマト、アルエ、セルビスの四人は実験のために、円になってそれぞれ剣、刀、苦無、短剣を構えた。クレスは円の外で、それを見守る。



「……行くぞ」



ソラが呟き、握った剣に力を込めると刃が黄金色に輝き出す。そして、その刃をまずはヤマトの刀の刃に当てる。



「のおおぉぉぉ!?」



光はヤマトの刀に渡り、その刃は黄金に輝いた。

が、その光は刃から柄へ、柄から手へ、手からヤマトの全身にまで広がった。


慌てたソラが合わせた剣をぱっと放すと、刀やヤマトを覆っていた光りも消えた。



「はぁー、ビックリしたわ……なんやソラの力って、痛いわけやないねんな。暖かいちゅうか……」


「ソラの力は、あくまで太陽の光の力だからね。」




「ふむ、ワシらの武器に力を伝えることは出来るようじゃな、それじゃあ次は、どうやってこの力を保たせるか…じゃな」



セルビスは今の一部始終を見て、今可能なことと課題を見出だした。



「ソラよ、今度はワシの短剣に頼む」


「ん、わかった。」



ソラは言われるがままに、再び剣に光を灯し、それをセルビスの短剣に当てた。


しかし、ヤマトの時と同様、光が短剣とセルビスの体に走る。



「ソラ!剣を離すでない!!


………ふうぅぅ…!!」



セルビスは自身の体を走っている光を気に留めず、深呼吸と共に集中力を高める。



「「「「!!!」」」」



すると、セルビスの体を覆っていた光が、徐々に徐々に短剣の方に移動し始めた。やがて、光は短剣の刃のみに集まり、一層輝きを増している。



「よーし、ソラ、剣を離せ」


「あ、ああ」



ソラは驚きを隠しきれない唖然としたまま、剣の刃を短剣からすっと離した。


しかし、ヤマトの時とは違い、光は消えずに短剣に留まり続ける。



「力をそれぞれの武器に伝わらせるだけじゃ駄目だったんじゃ。受け取るワシら自身が、力を制御せねばならんかったんじゃな」


「でも、その術を身につければ……!」


「イビルを救う戦いも出来るやもしれん」





「よーっしゃ!せやったらワイらも身に付けるで!その力を!

おいソラ!はよ光出せや!!」


「そんなに張りきるな!俺がしんどいじゃねーか!」


「ソラ、その程度でへばっては到底奴らとは戦えんだろ?な!?」



キラキラキラキラキラ……



「アルエもやる気満々かよ!」



自分達でも、イビルにされた哀れな命を救い出せる。そんな希望を見たヤマトとアルエに、俄然やる気が戻ってきたようだ。



「あ、だけどクレスはどうすんだ?拳に力を移すのか?」



ふと、ソラにそんな疑問が過った。が……。



「ううん?だって私は太陽の力をポータブルサンに溜めているから……



……はあぁ……!」



クレスが集中すると、すう、と光が両拳と両足に現れた。どうやらポータブルサンに溜めていた太陽の力を、体を通して集中させたらしい。



「ね?これで大丈夫でしょ?」



にっこりと可愛らしく笑うクレス。


しかし、彼女は自身が今しがた発見したことを即座に取り込み実行、しかも分散した箇所に集中するというとんでもない技術を発揮したということに気づいていないのだろうか。



((((恐るべし、クレスのセンス……!))))



四人は、ただひきつった笑みを浮かべるしかなかった。





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