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第3話:悪魔の曲

お久しぶりです。色々あって約1ヶ月ちょっとぶりの投稿となりました。


かなり前の事ですが、読者の指摘を参考にプロローグを修正しました。初期のプロローグを読んでくれた方、本当に申し訳ございませんでした。


では、第3話、どうぞ。



時刻は正午。あの後二人は小屋に戻り、仮眠をとってから旅立った。


寝てる間に日光が切れるとクレスは死んでしまうので、寝る前にソラがポータブルサンに手をあて、日光を満タンにしておいた方がいいようだ。


ちなみにポータブルサンを満タンにすると約12時間もつのだが、イビルにやったような光の放射は、中の光を消費する。つまり、残時間が減ってしまう。



今二人はナルグの町に向けて歩いている。ソラの背中には、多くの武器や道具が背負われている。

どうやら町で売って路銀にかえるつもりのようだ。


結構重いのだがそれにも関わらずソラは、


「おぉ!ここにもあった!」

と言ってしゃがむ。


ガクッ


「わぁぁ〜!?」


ガシャアアン!


背負っている重荷の重心が移動して、しゃがんだソラは前のめりに倒れ、その上に作った道具がのしかかる。



クレスは

「大丈夫?」

とも言わず、はぁ、とため息をついてソラの上に散らばった道具を集め始めた。


道具をのけると、ソラが出てきて


「また見つけたぜ、


  つくし!」



…とホクホク笑顔でつくしを4本ほど持っている。


……こんなことがもうかれこれ5回目。1、2回目は心配して

「大丈夫!?」

3回目は

「大丈夫……だよね。」

4回目は

「………また?」

そして………


さすがにクレスは呆れたようだ。


「ねぇ…分かってるよね。この旅はとても危険な旅なんだけど…」


「分かってるさ。けど、イビルに出くわす前から気を張り詰めたってしょうがないだろ?焦りながら行ったって疲れるだけだし。」


(一理あるけど……大丈夫かなぁ……)


クレスは不安な様子で、結局気を張り詰めて進んでいた。




しばらくしてようやくナルグの町が見えてきた。15分でたどり着く道なのだが、今回はソラが重荷を持っており、しかも別の荷物つくしも拾っていたので、40分ほどかかってしまった。


二人は真っ先に町にある運搬会社の所に行った。


受付でソラの名前を出し道具を渡す。取引の相手はこの地方の警備を担当している軍隊らしい。


「今回は金は直接取り行くと言っておいてくれ。」


その言葉にクレスは疑問符を出した。


「直接取りに行く?」

「ああ、いつもは向こうが商品確認後こっちに送金するんだけど、それじゃいつになるか分からないし。


2日ありゃ軍隊の基点場所につく。それまでなら、俺の懐でなんとか……




余裕とは……言い難いけどね………」



それを聞いたクレスは、なんか申し訳ない気持ちで一杯になった。




二人はその後すぐ町を出て、ナルグから約1時間半ほど歩いた所にある

『クラウロックの町』を目指した。


幸いここまででイビルに襲われる気配は無いまま、町にたどり着いた。


「クラウロックは人口が多い町だ。だからホラ、前に学校があるだろ?この辺で学校が建てられているのはこの町だけなんだ。」


ソラがそう言うと、クレスは驚いた。


「……これが…?」


「あぁ………







何があったかは分かんないけど……」


ソラは暗くなった。


この町は人工が多いなんて、嘘のようだ。



いや、今の光景が真実であるなら、嘘になる。










……人が、全くいない。





家などの建物はちゃんと残っている。だが、人は一人も見当たらない。


ふと、クレスが何かに気付いた。


「ねぇ、音楽が聞こえるんだけど…」


「え………あ、本当だ」


それは、ピアノの音だった。かなり熟練した手つきで弾いているらしい。



「なんだろう…何か嫌な気分になってくる……。まるで頭を揺らされているような…」


「クレスもか。……実は俺も…」


二人とも気分が悪くなってきていた。どうやら音楽の影響らしい。


「とりあえず、音のする方へ行こうぜ…」


「そ、そうしようか…」


少し頭が痛い中、二人は音のする方へ進んだ。







「音はここから出ているみたいだな。」



二人は学校の前まで来ていた。扉は固く閉ざされている。二人とも音には慣れてきたようだ。




尚、この世界での学校は、三階建ての大きな屋敷に教室が10つほど(特別教室含む)入っているもので、いわゆる第二校舎以降が無いものとする(作者の卓上設定集より抜粋)。



ソラがノックをしてみる。ゴッゴッゴッ…


「やけに鈍い音だな…だれかが後ろから押さえているな…」


「ひょっとして…」


「……多分な」


「「イビルが…」」



二人とも同じ結論にたどり着いたようだ。


「いや、ひょっとしたら町の人が避難しているのかもしれないわね…」


「うーん…見分ける方法は無いのか?」


「イビルなら、ポータブルサンの光に大きく反応するはずだから、光をなんとか扉の裏に…」


「なんか面倒だなぁ…つーかこれ100%イビルだろ?パターンとしてさ…」


「駄目よ!万が一の事もあるし、ちゃんと確かめなきゃ!パターンなんて言わないで!」


ということで思案する、必要も無く、ソラが扉に何かを見つけた。


「小さな穴があるぞ。」


「なんか、さっきまで見分ける方法とか言ってたのバカらしくなってきたね…」




ということで、早速クレスは左腕のポータブルサンを穴に向け、側面の発光スイッチを押した。


光が放たれる。と同時に


「うぉわぁぁ!?」


扉の後ろで悲鳴が上がった。二人は顔を見合わせ表情でやりとりをする。


「「間違い無い」」






「誰だぁぁ!」


と黒い猿のような化け物が扉を開け放ったのが運の尽き。


すでにソラは剣を振り上げていた。


ザシュウゥ!


脳天に斬撃を浴びたイビルは粒子状になって、天に登った。


「町の人はどうなっているんだ!?」


「ここはもうイビルの支配下にあるわ。捕らえられているか、あるいは……」


「…後者は考えたくないな…やめよう。」


「うん…ごめんなさい」


二人は学校の中に入った。心の準備は完了しているようだ。



「「死ねぇぇ!」」


入ってすぐに入り口で倒したのと同じ種類のイビルが二匹飛びかかってきた。


しかし二人は冷静に対処した。クレスがポータブルサンを光らせ、二匹をすぐに怯ませ、ソラがその隙を見逃すこと無く二匹を斬り倒した。



しばらく中を進む。今や敵の住みかの学校。何か雰囲気悪い感じがする。先程からずっと流れているピアノの音も不気味だ。



数分後、ふと教室を見つけた。ソラが中の様子を伺う。


「ソラ…何か見える?」


「……!町の人だ!」


中では町の人が五匹のさっきまでと同じ種類のイビルの包囲網の中閉じ込められていた。かなわない、抵抗しても無意味だということなのか、全く動かない。



「急いで助けた方がよさそうだな」


「…行きましょう!」


バンッ!



二人は教室の扉を勢いよく開けて突入した。


「なんだ!?」

「おい、てめえら!」


口々に叫ぶイビル。だが


ズバッ ザンッ


「ギャア!」

「ぐわっ!」



ソラの剣で二匹、瞬殺。


続いてソラは次の二匹に駆け出す。


「「くそ!」」


二匹のイビルは迫るソラにパンチを出す。だが、ソラは瞬時にしゃがんで回避し、そのままでイビル二匹の胴を一太刀で斬り裂いた。


「うおォォォ!」


残る一匹は後ろからソラに襲いかかる。しかし、


カッ!


「うわ!」


イビルの後ろから閃光。イビルを怯ませた。


後ろでクレスがポータブルサンを光らせたのだ。


そして、ソラが怯んだ最後のイビルを斬り倒した。




二人は全てのイビルを倒してすぐに、町の人に体を向け、呼びかけた。


「逃げろ!」

「ここから逃げて!」















  …………………








「「え……?」」







町人がピクリとも動かない。二人の叫びの後は…沈黙。耳に入るのはあの音楽だけである。



「ど、どうなってんだ……?」


「分からない…」


ソラとクレスは只驚くばかりだった。


しかしここでクレスが動いた。町人の一人に近づいていった。


「あの……」


とクレスが肩に手を置いたその瞬間……





ギロ!



クレスが手を置いた人、それに続いて他の町人も一斉にクレスの方を向いた。……目は獣のようになっている。


クレスがその目を見て一瞬固まった時、町人の右腕は固く握られ、クレスに向かって振るわれた。




ガツッ!



ガタタン!


間一髪、ソラが横から町人を蹴ってクレスは助かった。



蹴飛ばされた町人は机にぶつかっていくつか破壊した。


「気の毒だが、少しきつく入れた。クレス、大丈夫か?」


「私は大丈夫。ありがとう…」



だが…


蹴飛ばされた町人はゆらりと立ち上がった。頭を打ったらしく、頭部から血が一筋流れている。


それでも目は獣のようなままで、二人に向かってゆっくりと歩いて来る。同時に他の町人も向かって来る。



二人ともその光景に立ちすくんだ。


「一体何なんだ!?この人達もイビルか!?」


「ちょっと待って!」


クレスがポータブルサンを光らせた。



「ギャアアアアア!」



町人は怯み、苦しみ出した。しばらく当て続けると、やがて町人から黒いガスのような物が出て来た。


「「あっ!」」


やがて黒いガスは消えて町人はその場にどっと倒れた。


「町人がこうなったのは黒いガスが入りこんで狂わせていたのよ!」


そう言ってクレスは他の人にも光を当てる。次々と町人から黒いガスが出ては消えた。やがて全ての人から狂気は消えた。



「ハァ…ハァ…!」


ポータブルサンの光を消すと、クレスは呼吸を乱し始めた。


「あっ!」



ソラはクレスのポータブルサンの目盛りが無くなりかけていたのを見つけた。すぐにソラはクレスのポータブルサンに手を当てた。目盛りが少しずつ上昇し、クレスは落ち着いて来た。


「あ、ありがとうソラ…楽になってきた…」


しかしそれも束の間、町人がまたゆらりと立ち上がった。狂気と共に。


「何で!?ガスは払ったはずなのに!」


「………あ!」


ソラがふと上を見上げると、教室に放送を流す為のスピーカーがあった。


「この音楽だ……!」


そう言うとソラは、剣を抜いて飛び上がり、スピーカーを斬った。



ガシャアアアン!




……………



ドサドサッ



町人は、一斉に意識を失って倒れてしまった。



「音楽を流している奴を止めなきゃならないみたいだな。」


「ええ、探しに行かなくちゃ。」




二人は教室を出て、音楽の流れる方向を頼りに走り出した。途中のスピーカーは全て壊していった。




………………




「音楽はここから聞こえる!」


二人が立っているのは…





音楽室前。




「…ま、当然だろな。」


「きっと読者も分かっていたよね。」




気を取り直して、ドアを開ける。



中では一人の男がピアノを弾いている。


男は二人に気づくと演奏を止めた。




「これはこれは。何か御用ですかな?」


男は立ち上がった。





男はサラっとした長い髪全身を覆うマント鋭い目を持ち、そして、肌が薄黒い。


「お前…イビルか!」


「そうだ。と言っても今まで貴様らが倒した奴とはレベルが違うぞ。


私はマスターイビルの

フォルテアノ。以後、お見知りおきを。」


「マスターイビル…!」


クレスが青ざめた。


「クレス、マスターイビルって何だ!?」


「簡単に言えば高等イビルのことよ…知能も能力も段違いよ…!何で下界に…?」


「理由は二つ。一つは…分かっているだろう?」


ソラが咄嗟に気づく。

「天地神明の翼か…!」


「その通り。だがそれだけならわざわざマスターイビルが出る必要は無い。もう一つの理由が肝心なのだ。



お互いに、な……。」




そう言うと、フォルテアノはニヤリと笑った。



瞬間ソラとクレスは青ざめる。



「まさか…」




クレスが不安な声を上げた。




「そう……もう一つの理由は…貴様ら二人の始末だ!」




「……!何で俺達の事を狙いやがる!?」

ソラは冷静に聞いた。


「一人のエンゼルが下界に落ちた…だがエンゼルは下界では1日も生きられない、だから我々も最初は無視した。ところがそのエンゼルは一人の少年によって助かった…


その少年には『太陽』の力があると疑われる。しかも天地神明の翼を取り戻そうとしている。


…対処は早い方がいいと思わないかね?」



「「………!」」




この旅は、イビルに命を狙われる危険で過酷な旅である。それは二人とも分かっていることで、覚悟もしていたことだ。


だが、あまりに情報の伝達が速い。




「人間共は殺せないと思い彼らを操り攻撃させたが、案外上手くやっているようだなぁ…」


「やっぱりか…町の人はその音楽で操られていたんだな!」


「いかにも。人間の脳に超音波を送り込み、私の命令に従うようにする。エンゼルや君には通用しないようだがね…



では、私が直々に殺してやるぞ!」



そう叫ぶとフォルテアノは椅子に座り、ピアノを弾き始めた。


さっきまでの人を操る曲ではない。何かより攻撃的な激しい曲である。

その音が耳に入った瞬間二人は頭を強く揺さぶられている感覚を覚えた。



「うわぁぁぁ!」

「きゃあぁぁ!」



激しい頭痛の上視界も揺れ、めまいを起こし座り込んでしまった。


「どうだぁ!この音色、貴様らの死にふさわしいだろう?」


フォルテアノは、苦しむソラとクレスを見てわははと笑いながら、演奏を続ける。



「……野郎!」


頭を押さえながらソラは剣を抜いた。








「…うっ…」


しかし、景色が回っているような状態では立つことはままならない。



「そのフラフラな足どりでどうやって戦うのだ。


大人しくへばってろ!」



フォルテアノは更に激しくけん盤を叩く。



「うあぁぁぁ!」



ソラは剣を落とし、また座り込んだ。



「いいザマだ。ではこの曲をレクイエムがわりに貴様らを始末してやるとするか。」



「ぐっ…!」



ソラは剣を握るも、持ち上げることも出来ない。

クレスも体を動かすことすら困難な状態だ。




「まずは…エンゼルからだぁぁ!」



フォルテアノは片腕で演奏を続けながら、懐から3本のタクトを取り出した。勿論只のタクトではない。先を尖らせてあり、下手に触ると指が切れてしまいそうだ。



「死ねぇ!!」



ビュッ!



フォルテアノはクレスに向けてタクトを投げた。1本でも当たれば致命傷を負ってしまう。





しかし、


「うっ……だ、だめ…!動けない…!」



クレスは音による攻撃でとても避けられない状態だった。




「…うおォォッ!」




ドガッ! ガタンッ!



ここでソラが力を振り絞り、机を蹴り倒した。


ガガガッ!


その机が見事盾になり、クレスをタクトから守る事に成功した。


「だっ……大丈夫か?」


「あ、ありがとう…」


「ウォラァ!」



続いてソラは自分の横の机を蹴り倒し盾にした。



「へへ…これでタクトは効かないぜ…。」


「フム……お見事。だがタクトで楽に殺されればよかったかもなぁ…」


「「……!?」」






「イビル交響曲第三楽章『崩壊』」



フォルテアノはピアノを弾き出す。



……さっきまでとは全く違う曲に変わった。


とても静かでゆったりとした、雄大な感じの曲。



まるで、ただ広い草原で風が吹き、草がサラァとなびいているのが見えてくるようだ。


ソラとクレスも悔しいが曲の雄大さに惹かれていた。






………しかし、その曲はここからだった。




フォルテアノは、曲に合わないタイミングでけん盤を一つ、ポーンと叩いた。



それがきっかけになり

一気に恐ろしさと惨劇を表すかのような曲に変わった。




「うわあぁぁ!」

「きゃあぁぁ!」



それまで雄大さを感じていた二人はとたんに違うイメージが脳に浮かび、そのイメージに悲鳴を上げた。




平和の中に訪れる侵略

それによる殺戮と崩壊

後に残る

血と死体で埋まった世界




「やめろぉォォォ!あぁぁぁ!」


「いやぁぁあぁぁ!」




とても二人には耐え難いものだった。




「どうだぁぁ!泣けぇ!泣き叫べぇ!!そして朽ち果ててしまえェェェ!!」




私の更新は定期的ではありません。今回みたいに1ヶ月あけたり1、2週間以内にできたりします。

どうかお許しください。


次回は早めにできそうです。


感想などお待ちしております。

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