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第30話:無人島の老人


この小説もとうとう30話目に突入しました。


最初の頃より面白くなっているのだろうかと不安を感じますが、突っ走るしかないのだろうとも思います。


というわけで、第30話、どうぞ。




ソラ、クレス、ヤマト、アルエの四人を乗せた船は、どの方向を向いても水平線の先に何も見えないくらいの沖にやってきていた。


周りにも他の船一つなく、空高くから見れば、見渡す限りの青の上にただ一つ不純物が浮いているように見える。




「いつまで、漕いでれば、いいんだ、よっ!」


「ほんまに、お前のじいちゃんに、会えるん、かいっ!」




ソラとヤマトは必死に櫂を漕ぎ、船を進めている。そのため、アルエへの 問いも体の動きに合わせてリズミカルになっていた。




「今のところ港の最南端の桟橋からここまできちんと真っ直ぐ漕いでいるはず……夜中までには辿り着けるさ」


「「夜まで漕げってのかオイ!!」」




一行はアルエの祖父に会おうとしていたのだ。なんでも、アルエの祖父は名高い武人であり、呪術にも精通しているのだという。そこで、ソラの力についてアドバイスを貰えないかと思ったのだが……。









「なんで彼方の無人島なんかに住んどるんやぁぁぁぁっっ!!!」









アルエの祖父は、世間を離れて、存在自体知るものがほとんどいない無人島で生活しているという……。









―――――――――――






「私のじいちゃんは高名な武人だった。かつては諸国を漫遊し、あらゆる流派の武芸を学び極めたという。


特に、呪術や法術といった特殊な力なんかに興味が深くて、自分で使うことはなかったが、知識は深く持っていたらしい。私のペンダントも、そういった分野の修行僧から譲り受けたそうだ。



だけどある時、じいちゃんは突然、世を離れると言って離れ島に一人移り住んだ。じいちゃんが生きてるって知るのは近い親戚だけだったから、世間では行方不明、もしくは死んだものとして扱われているんだ」




「へ〜〜……」


「「…………」」




まともに返事が出来たのはクレスだけであった。


時間は既に夜中。月が高く昇っているころだ。それまで延々と櫂を動かしていたソラとヤマトは、精神をやられてしまったか、虚ろな目をして意識もあるかどうか疑わしい状態で櫂だけ漕ぎ続けていた。




「だ……大丈夫ソラ?」


「……ふぁ?」


「……思考が凄いふわふわしてるみたいだけど……」


「……ふぁ?」


「…………………」




駄目みたいだ。誰がどうみても限界を越えてトリップしている。そのうち行き先が三途の川にならないだろうか?




「腕が動いているなら平気だろう。まだ余力があるってことだ」




アルエは超スパルタだった。




そんな地獄のシゴキも、とうとう終わりの時がやってきた。




「あれだ!あの島だ!」




前方には小さいが、木々が生い茂りジャングルのようなものを形成している、いかにも無人島らしい無人島がある。





「「……ふぁぁ〜〜……!!」」




相変わらず浮いた思考回路のソラとヤマトだが、わずかなリアクションが含まれるくらいには生気を取り戻したようだ。







ようやく島にたどり着いたソラ達は、早速この島に住んでいるというアルエの祖父を探し始めた。


ここまでずっと船を漕いでいたソラとヤマトが疲労のあまり眠りそうだったが、アルエの愛の鞭(鳩尾への蹴り)によって叩き起こされた。


しかし、島は結構大きく、ジャングルのように広がっている森の中で、アルエの祖父を探すのは困難だった。





「グルルル……!」





「な、なんや……今唸り声がせえへんかったか……?」





ヤマトの言葉を聞いた三人が耳を澄ましてみると、確かに獣が唸っているような声が聞こえる。




「早速来たな……ソラ、ヤマト、構えとけ」


「へっ……?」





すると、突然草陰から大型の犬が飛び出し、ヤマトの方に駆けてきた。




「ぬおっ!?」




ヤマトは驚いたように悲鳴を上げつつも瞬時に刀を抜き、犬を一刀の下に切り伏せた。犬は首の根元から脇腹にかけて切り裂かれ、絶命した。




「この島にはこういう獣がうじゃうじゃいるんだ。油断すると食われるぞ」


(((な……なんてとこに住んでるんだ……)))




アルエの忠告に、三人は汗をかいたが逆に言えばこんな島で生き延びるアルエの祖父は、相当の強さを持つ武人なのだろう。




「「「グルル……」」」


「うわ、また来たで!?」


「しかも一匹じゃないよ!」




さっき切った犬の血の匂いを嗅ぎ付けてきたのだろう。何匹もの犬がやってきたようだ。




「ここを乗りきらなきゃ、イビル達と戦う力は手に入らない……!」




ソラは剣を抜いた。その表情には決意の色。アルエの祖父に出会い、力の使い方の手がかりを掴む。




(これがソラ……よかった、やっぱりソラのことは信じられる!)




クレスは、ソラの表情に安心と更なる信頼を覚えた。レビタでの経験を経て、ソラの気持ちは一層強くなっている。まさに希望の光……。クレスは、希望を彼に託してよかったと感じていた。




「行くぞ!!」




四人は一斉に駆け出した。






「うおおお!!!」




一頭、また一頭と三人は犬を打ち倒す。なるべく剣の腹や拳で叩き伏せ、無駄な殺生をしないでいた。ソラはクレスを守りつつ向かってくる犬を迎撃し、ヤマトとアルエが前に出て戦っている。


しかしそれも限界。犬は次々と襲いかかってくる。叩きのめした犬達も起き上がってくるため、埒があかない。三人は体力を消耗し、段々と追い詰められていく。息も上がり、振るう剣も鋭さを欠いてきた。




「ハァ、ハァ……


くそっ!!」




汗を流し息も荒れ、疲労が目に見えているソラ。自分に真っ先に飛びかかる一頭の犬の頭に回し蹴りを浴びせるが、足元がふらつき膝をついた。








横から飛びかかるもう一頭の犬にも気づかず……








「ソラ!危ない!!」


「!?」




クレスはソラを庇うように、手を広げて犬の前に立ちはだかった。しかし犬は構わずに襲いかかる。相手はイビルではない。故にポータブルサンは効かず、クレスには抵抗する際立った手段はない。





出来ることは少しでもソラを守る壁となり、ソラが体勢を立て直す時間を作ること……。







「バカ!よせぇっ!!」







ソラの叫び虚しく、彼の目に血飛沫が広がった。







「グオゥン」




クレスに襲いかかった犬が突然横にはね飛ばされ、体から赤い血が吹き出す。その噴射口には、細い鉄の棒が深々と突き刺さっていた。


これは鉄製の、矢だ。ソラは苦しみ悶える犬を見て、そう思った。




(しかし、一体誰が……?)




「グワゥ!」

「ギャン!」

「ウォン!」




ソラが不思議に思った瞬間だった。次々と矢が降り注ぎ、犬の体を貫いていく。あっという間に、犬は全滅してしまった。これにはクレスやヤマト、アルエも驚いた。気づけば辺りは血だまりと化し、幾体ものもう動かぬ犬の死体がゴロゴロと横たわっている。目を覆いたくなる光景だが、瞬間の出来事で頭の冷えたソラ達は、事態を理解するべく思考を巡らせる。


犬の死体を見て、まず驚くべきはその矢の命中率だ。それぞれの犬に一本ずつ、肺や脳天などの急所を的確に撃ち抜いていたのだ。






この精度に手数だ。間違いなく、射手は近くにいる。






「おーい……」






近くにいるならば、呼びかければ応えるかもしれない。そんな思惑で声をあげたのはソラ……




ではなく、アルエだった。しかし、なんとも気のない声である。溜め息混じりで呆れたような声だった。







「いるんだろう?じいちゃん」









「「「じ、じいちゃん!?」」」




アルエの言うように、本当にアルエのじいちゃんが今の矢を放ったのだとしたら、なるほど確かに相当の武人だ。


やがて、木の葉がガサリと揺れ、その中から一人の人間が飛び降りたかと思うと、ソラ達を中心に素早く飛び回り始めた。頭上を交差する人影の動きはなんとか見えるものの、その姿までは判断できない。




「な、なんちゅう速さや……!」




ヤマトは刀を構えた。正体がはっきりしない以上、敵である可能性も否定しきれない。


もしこのスピードで奇襲を受けたら対応出来るのだろうか……。ヤマトの額に、汗がじわりと滲む。刀を持つ手も、緊張で力が入る……。












「ひゃっほーい!!」





「きゃあ!!?」







襲撃、その標的はクレス。




敵はクレスの背後に回り込んできた。クレスは敵の接近に反応出来ず……









…………尻を触られた。








「オラアァァァ!!!」



「ブホッ!!!」






クレスの側にいたソラがすかさず敵を思いきりぶん殴り、殴られた人物は地面に倒れた。




その人物はソラの肩くらいまでの背丈で、頭二つ分高いくらいの首までかかるオールバックの白髪に胸まである立派な白い髭、紺色の細目の服を身につけている。忍び装束というやつだ。













「なにやってんだ、じいちゃん……」










アルエが、更に冷めた目と口調でその人物に言った。









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