第29話:暖かい力
携帯の液晶が破損し、修理していた影響で更新がやや遅れ、お話も短くなりました。
そんな駄文小説ですが、今後ともよろしくお願いします。
第29話、お楽しみ下さい。
「暖かかった……?」
クレスの発言に呆然とするソラ、ヤマト、アルエ。断末の瞬間に感じた暖かさ……。
「……血の生暖かさ?」
そう言ったヤマトの頭に大小二つの拳骨が落とされ、鈍い音が響く。
「「そんな恐ろしいことさらっと言うな!!」」
「いって〜、なんや少し場を和まそうとしただけやんかぁ!!」
「もっと他にやり方あんだろが!」
「その発言で和むのは殺人鬼くらいだ!」
ワイワイ言い合う三人。一歩離れてたクレスは、ふとこの瞬間こそ和んでいるのかな?などと思い、気が楽になった。
と同時に、その暖かさが、あの時感じた暖かさに似ているのだと気づく。
他にもその暖かさを感じることが出来る要素……
「似てるんだ。ソラが私の手に触れる時と」
……………………………
「お熱いことやのう」
今度は一つ、拳骨が落とされた。その時、ソラの顔が赤くなっていた。
「そ……そんな意味じゃないよ!
その……具体的に言えば……」
こちらも顔を赤くして否定するクレス。その様子にヤマト、アルエまでも弄り甲斐があるといった表情でにやにやとする。どうしたものかと溜め息をつくソラ。頬の赤みはまだ消えていない。
そんな三人の前で少し思考を巡らせるクレスは、一つの答えにたどり着いた。
「ポータブルサンを溜めてる時に似てるんだ。
暖かくて強くて、優しくて……ソラみたいだなって……」
クレスは顔をさらに赤くしてはにかみながら言った。同時に、ソラの顔がボン、と一気に赤くなる。ヒューヒュー、とヤマトから黄色い声が上がり、ますます二人は顔を赤くしていった。さながら、恋人ののろけ話だが、この二人別に付き合ってるわけじゃないのにな、と齢十年程度のアルエは考えていた。
「ち、ちょっと待てよ!?ポータブルサンを溜めてる時と同じ感覚ってことは……!」
ソラが誤魔化すよう…
…ではなく真剣な顔になりクレスに問いかけた。クレスもソラの考えが理解出来たのか、こちらも真剣な表情になり、頷いた。
「太陽の力……か!」
ソラの言葉に、流石にヤマト、アルエもからかうのを止めた。
「ひょっとしたら、ね」
また、緊張した真面目な空気が張り詰める。
「ソラの太陽の力が、なんでクレスを元に戻すきっかけになるんや?」
「それなんだけど、ひょっとしたら原理は『穢れ払い』に似ているのかもしれない……!」
「「「けがればらい?」」」
聞いたことのない単語に、クレス以外の三人は疑問符を浮かべる。
「私達エンゼルの主な仕事で、アッパースカイにやって来た死者の魂から、未練、憎悪なんかの負の感情、いわゆる『魂の穢れ』を、太陽の力で取り除くの。そうすることで輪廻の流れを円滑にするんだけど、穢れは執念の塊みたいなものだから、やがて何かにとりついてイビルに変わる」
「なるほど、穢れがあの黒い粒子……クレスが元に戻ったのは、穢れだけが取り除かれたからか……」
「といっても穢れを持って来た魂と生物と融合したイビルとでは違うから、やっぱりソラは特別ってことになっちゃうんだけど」
更に解説を続けようとするクレスの顔に、影が差す。
「……あの時、私はソラを剣で突いた」
辛い記憶を辿っていることに気付いた三人は、口を挟むことなく真剣に聞き入る。
「その時、刃を通して太陽の力が少しだけ私に干渉したから、私の意識が戻ったんじゃないかな?
そのあとソラの剣で私が自決したから、完全に穢れが払われた」
「その証が、あの金色の粒子か……そういえば、あの時ソラの剣も金色に光っていたような……」
あくまで仮説。しかし、最も可能性の高い話だ。もしこの仮説が真実であれば、ソラの力で多くのイビル化した者達を救えるだろう。
―――――――――――
「ぬぬぬ………!」
「「「…………」」」
「ぐぬぬぬぬ………!」
「「「…………」」」
「むんんんん………!」
「「「…………」」」
「ふぅんぬ「あああああぁぁぁーーーー!!!」
ヤマトが癇癪を起こした。
ここはアルエの小屋の外玄関前。レビタの町の郊外にあるとはいえ、あまりでかい声で叫ばれるのは迷惑じゃないかとアルエは考える(怒られるのは私だろうにと)。
そんなことは意にも返さず、ヤマトは声を張り上げ続ける。
「いつまでそないな風に剣握り締めて刃睨んで力んどんねん!!!そない力まれたら心配するやろが!!!」
「心配?……ああ、傷のことか。それなら平気……」
「ちゃうわ!!!そない力んで出るもん出たらどうすんねんっちゅう話や!!!」
すかさずアルエの飛び蹴りが、ヤマトの後頭部に突き刺さった。
「最低だなヤマト……」
頭を抑えて悶えるヤマトの後ろから、アルエの冷たい目線と辛辣な一言が叩き込まれる。
「………………」
何も言わず、ひきつった笑顔を送るクレス。無言の優しさが冷たく感じる。
「ま、お前らしいかな」
さらっと言ったソラが、一番ひどかった。
「とはいえ、こんなことしてても埒があかねーな。あまり意味がねーように思えるぜ」
ソラが剣を鞘に収めつつ言う。
「せやろ?せやろ!?やからワイは「あ!?」
……すいません」
アルエは一睨みでヤマトを黙らせた。そしてソラ、クレス、アルエは力の出し方について考える。
ふと、ソラが思い出したかのようにアルエに話しかけた。
「なあアルエ、そういえばお前の強さはそのペンダントの力によるものなんだよな?」
「ああ」
「そのペンダントの力ってのはどうやって引き出してるんだ?」
「えっ」
アルエは戸惑った。ペンダントに助けられていることは自覚しているが、あまり引き出してるという実感がないのだ。言うなれば、ペンダントが自発的に力を貸してくれていて、それが当たり前のようになっていた。
「すまない、無意識なんだ。戦うときは当たり前にペンダントが力を貸してくれる。だから、引き出してる訳ではない」
「そっか……」
ううむ、と腕を組んで考えるソラ。しかし、これ以上考えても答えに辿り着くのは難しいことは、ソラ含め四人全員が感じていた。せめて、ヒントが得られるとよいのだが……。
「そうだ、じいちゃんに会いに行こう」
さらっと、自然な流れでアルエは言った。
次回、レビタの町から離れます。
ていうか2年間くらいずっとレビタで話進んでた……。