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第25話:三人の思い


随分と更新遅くなってしまい申し訳ありません!


やっぱり物語をまとめるのって難しいです。なんてただの言い訳ですね…



第25話です。どうぞ。




激しく火花を散らす刃と刃。光を反射し、何度も空を駆ける剣閃。


しかし、その剣閃は常に一つだった。鈍く黒光りする、細く鋭い剣閃。セレネルナのものだ。ヤマトとアルエ、二人の握る刃は、黒い剣閃の前に躍り出て火花を発するのみ。ソラに至っては未だにその刃を見せていない。



一方的な戦いを目にしながら、ソラは思考を繰り広げていた。




(どうすりゃいい!?ヤマトとアルエが殺されちまう!!かといってクレスを殺すなんて結論も出したくねえ!!)




あまり表には出ていないが、結論を急ぐあまりソラは半ばパニック状態だった。










「ソラ!」







思考を中断させたのは、ヤマトの一声だった。





「ええか、お前はここから離れるんや!!」


「なっ……!?」




ヤマトの指示に驚きの声を上げるソラ。そんなことお構い無しに、ヤマトは続ける。




「お前は太陽の者、この下界とアッパースカイの希望や!!なんとしてもお前は生き残らなアカン!!」


「馬鹿言うんじゃねえよ!!そんな状況のお前やアルエを置いて行けるかァ!!」






「分からへんのか!!それがクレスのためでもあるんやぞ!!」





「!!……」





クレスの名前を出され、言い返せなくなるソラ。さらにヤマトは畳み掛ける。




「クレスが命がけでお前を見出だして、その中でイビルになってもうたんを全部無駄にする気か!?クレスの思いはどうなってまうんやァァ!!!」



「……―――ッ!!」




ソラの頭に蘇る、夢の中でクレスが言った言葉。


クレスが最後に託した、犠牲になるなという思いは無駄にしたくない。その気持ちはソラには十分過ぎるほどあった。


それは今、ヤマトとアルエの思いにもなった。信頼し合った三人の仲間たちの思いを、自分の感情で踏みにじりたくはない。






「……絶対後から追い付けよ!!」





ヤマトとアルエにそう叫ぶと、ソラは背を向けその場を離れ始めた。






ソラが走り去って……



「アルエ……こうなった以上、タダじゃすまされへんぞ」


「分かっている…私も腹を決めたさ…」


「…あいつになんて言われるやろな?」


「そんなことは生き残ってからだ。こいつはただでさえ強いんだぞ」


「へっ、そらそうやな」










「「最悪の場合クレス、いやセレネルナを殺す!」」






ヤマトとアルエがソラを逃がしたのは、このためだった。


もし三人でセレネルナと対峙し、彼女を殺しにかかればソラは間違いなく止めるだろう。




ソラが生きていればまだ希望はある。そのためには、セレネルナというイビルを避けては通れない。戦うしか、殺すしかないのだ。奇跡でも起きない限り…




殺すことが、現時点で最も合理的だった。








二人は、後からソラになんと言われようともよかった。最終的に償いとして命を差し出すくらいの覚悟もしていた。










そして、覚悟と共に、二人は戦闘体勢を整えた。











「ハァ……ハァ……」



あれから走り続けるソラは、町中の、出来るだけ狭い通路をジグザグに走っていた。



隠れるため、逃れるため




「ハァ……ハァ…ハァ」




何から隠れる?何から逃れる?




「ハァ…ハァッ、ハッ」




セレネルナから、クレスから




「ハッ、ハッ、ハッ」




セレネルナが、クレスが、





死ぬ現実から逃れるため








「ハッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ!」






ヤマトが自分を逃がす真意に、気づいてない訳ではなかった。


もし自分があの戦場にいれば…やむを得ないとは分かっていても間違いなく止めに入る。


先へ進むには、セレネルナを殺すしかない。クレスのためにも。






だが……だがしかし……





「ハッ、ハッ、ハァッハァッハァッハァッ!!」




呼吸が乱れ、心が後ろ髪を引かれる思いで満たされる。


振りきらねばならない。この思いを、葛藤を。




ソラが走っているのは、セレネルナの追撃から逃れるためではない。


クレスを殺したくない自分を振りきるため、殺すしかないと割り切るために、走っているのだ。






『お前達がこれからも積み上げていくであろうイビル達の屍の山……こやつも、その中の一つのはず……』




『そいつも殺さなければ、下界やアッパースカイは大変なことになるのだぞぉ〜!?』





あの海底都市でメディストルが突き付けた言葉が、更にソラの心を深々と貫く。




イビルの正体を知り、今まで自分がしてきたことを認識しても、戦うことしか、殺すしかできない自分を呪う。






ソラの葛藤は、眼前の地面に突如突き刺さった一本の剣によって強制的に打ち切られた。




「これは…レイ…ピア……!?」




レイピアの刺さった地面を見る視界の端に、翼を持つ人影を捉えた。




まさか……!





見たくないものを恐る恐る見ようとするかのように、ゆっくりと首を動かし、そして……







「セレネ…ルナ…!!」





ということはヤマトやアルエは……!?




「私は太陽の者を殺す」




ソラに襲いかかり、レイピアを突き出すセレネルナ。ソラは咄嗟に剣を抜き、その一撃を防いだ。


が、セレネルナの攻撃は止まらない。レイピアを持つ腕を俊敏に動かしながら、突き、切りつけてくる。ソラはただそれを防ぐ。先ほどのヤマト、アルエと同様、ソラの剣は防御にのみ使われている。



(なんてことだ……!ヤマト…アルエ…!

畜生、俺がいつまでもクレスのこと引きずってたばっかりに……!)



今のソラの心中は、クレスに続いて己の不甲斐なさによってヤマト、アルエを死なせてしまった悲しみと申し訳なさで満たされている。


自分がしっかりしていれば…ヤマトとアルエに加勢も出来ただろう。みすみす二人を死なせることもなかっただろう、と。


そもそもクレスをイビルにすることもなかっただろう、と……。




三人に対し、償う術はあるのか?どうすればあの三人は報われる?




「ぬああぁっ!!」




ソラは咆哮と共に、渾身の力で剣を横に振り、迫るセレネルナのレイピアに叩き込んだ。


突然の一撃にセレネルナは距離をとり、レイピアを構え直す。




「目が…変わった……」




セレネルナの言う通り、ソラの目には先ほどまでの悲壮感に満ちた目から、どこか悲しみを残しながらも、怒気を放つものに変わっていた。



(俺がみんなに償う術…それは戦うこと!みんなで成し遂げられなかったことを、俺が成し遂げること!!)




完全に吹っ切れたとは言えないが、少なくとも戦闘への覚悟はあった。






それからのソラの動きは、見違えるほどに変わっていた。


セレネルナの攻撃を見切り、身のこなしを活かして紙一重でかわし、攻撃の隙を突いて切り返す。



とうとうソラは、セレネルナが生まれてから自ら押し殺していた戦士としての自分を取り戻したのだ。戦うことを決め、報いることを決め、茨の道を受け入れることを決めた。


それが、ソラの動きを実現させている。



しかしセレネルナも負けてはいない。ソラの切り返しを捌き、更なる一手を加えていく。



互いの戦闘能力は概ね互角で、気が抜けない。隙を見せればそこを突かれる。




この戦いの雌雄を決するとすれば、その内面的強さにあるだろう。


眉ひとつ動かさず冷静にソラを殺すことに徹するセレネルナと、悲壮と怒りに満ちたソラ。感情なく戦う者と感情のまま戦う者……







果たしてソラの剣がセレネルナのレイピアと衝突した際、その勢いでセレネルナを吹き飛ばした。狭い路上のためセレネルナは壁に激突し、その間にソラは剣を振りかざし、目の前にまで迫っていた。




もはやレイピアで防ぐ間も、無い。







路地裏でソラとセレネルナが戦っている頃、町中をある二人組が歩いていた。一人が左足を引きずりながら歩いており、もう一人が肩を貸しながら歩いている。が、貸している肩がいかんせん小さいので思うように乗れず、そのため進行速度は遅い。



「急がねば……!ソラが危ない!」


「くそったれ…足さえまともやったら…!」




小さい肩を貸すアルエと足を引きずり歩くヤマトだ。二人はセレネルナに殺されていなかったのだ。


しかし、ヤマトがついていけずにバランスを崩し、肩を貸すアルエを巻き込み転倒した。



「いったあぁ〜!アルエ、もうちょいゆっくりして……」



言いかけてヤマトは口を閉じた。アルエが、俯いたまま何も言ってこないからだ。悲しんでる…というより、考え込んでいるようだ。



「やっぱり気になるんか?セレネルナの目が」



「……ああ…」








事は、一刻ほど前に遡る…




―――――――――――





「「最悪の場合クレス、いや、セレネルナを殺す!!」」



セレネルナと対峙するヤマトとアルエが覚悟を固めた。


しかし、そんな二人の覚悟とは裏腹に、セレネルナは予想外の行動に出た。







「……逃がさない」






セレネルナは六枚の翼を広げて飛び上がり、体をソラが走っていった方向に向けた。



「「なっ!?」」


セレネルナは、初めからソラを狙っていたのだ。ヤマトやアルエと戦ったのは、ソラをおびき寄せるためか、ついでに始末しようとしたのだろう。


しかし、あくまで最優先ターゲットはソラだった。イビルにとっての脅威となる、太陽の力を持つ彼をクレスは…セレネルナは、イビルとして狙っていたのだ。





「くっ…行かせんぞ!」




アルエはセレネルナを足止めするため、苦無を投げた。


しかし、セレネルナは見ることなく苦無を察知し、体はソラの方を向いたままレイピアを振り上げ、苦無を上に弾き飛ばした。


上に飛んだ苦無は弾かれたことで回転し、やがて重力に逆らい落ちて来る。セレネルナは苦無を狙いレイピアを上に突き上げるように放り投げた。レイピアを掠めるようにぶつけられた苦無はその回転力をなくし、危険性を最小限にされた状態でセレネルナにキャッチされた。


ここでセレネルナはヤマト達の方に向き直り、キャッチした苦無をヤマトに投げつけた。



「うぐぁっ!!」



苦無はヤマトの左足に命中、そのまま釘の如く地面に打ち付けた。




「ヤマトッ!!」



すぐさまアルエはヤマトの足元にしゃがみこみ、ヤマトの足を固定する苦無に手をかけるが、突き刺さるような視線を感じ振り向き、見上げた。




セレネルナが、今度はこちらを見下ろしている。



目は口ほどにものを言うというが、アルエはその視線から強い一言が突き付けられているのを感じた。







やがて、セレネルナは再びソラが駆けていった方に向き直り、飛んでいった。






―――――――――――





「動けなかった……あの眼……強かった…




でも妙だったな……


分かったか?ヤマト」


回想を止め、ヤマトにそう尋ねるアルエ。



「いつつ…ワイはそれどころやあらへんかったわい!!」




足の痛みに耐えながら返すヤマト。確かに痛みで深読みなど難しいかっただろう。




「セレネルナ……




『邪魔しないで』、とは感じたが……あの目にはそれ以上の何かがあった気がするんだ」




「何かって…なんや?」


「それが……よく分からない……ただ……海底都市から脱出する時に、セレネルナが見せた目を覚えているか?」


「ん……ああ……あの時の目は印象的でよう覚えとる。印象的いうか……懐かしい……かいな?クレスっぽかったっていうか……」



「それだよヤマト」




それ、の意図はよく分からず、ヤマトはただ、首を傾げるしかない。





「それを……クレスっぽい目をどこかに含んでいたんだ」








その時、何かが壁に衝突した音が僅かに響いた。僅かとはいえ、ヤマトとアルエは聞き逃さなかった。








「路地裏だ!!」















その後目に写す光景に、二人は息を呑むことになる。





もっと早く更新できるように、もっと良い文章が書けるように、精進します。



感想、評価などお待ちしております。



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