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第24話:葛藤


第24話です。


今回はほとんどがソラの一人語りとなってます。





クレス……












なんでいつもお前が泣いちまうんだろう……












なんで俺は変えられなかったんだろう……











なんでお前をここまで追い込んじまったんだろう……















考えたって始まらない











そんなことは分かっているんだ



















でも………




















でもな………




















あの時こうしてればって思いが











いくつも











いくつも















いくつもいくつもいくつもいくつもいくつもいくつもいくつもいくつもいくつもいくつもいくつもいくつもいくつもいくつもいくつもいくつもいくつもいくつもいくつもいくつもいくつもいくつもッッ…………!!


















……溢れちまって止まらないんだよ……!!













一人、ベッドに横たわる。ベッドが軋む音と殺風景な天井、使い古した布団特有の匂いのみが俺の感覚を刺激する。











嫌なくらいに、静かだ。












あの後ヤマトとアルエは出ていった。アルエの殺し屋稼業で培った裏のルートを頼りに、イビルの動きなどの情報収集をしようとしているらしい。海底都市以降イビルが現れないことから、一般人に聞いても知らないだろうとのことだ。







俺はというと、まだ傷…主に内面的な傷が癒えきってないからと、休まされている。












『覚悟』が出来るまで、動くなってのもあるんだろうが…













「それが……戦うってことやぞ……」









ヤマトの言葉が心に深く突き刺さる。







ヤマトやアルエの言うことは正しい。この上俺達が全滅してしまえば、それこそクレスの中で最悪のシナリオだ。









だけど、だからといってクレスを殺すなんて、俺には出来ない。






ヤマトやアルエだって、本当は殺したくないって分かってる。





二人だって、まだ完全に諦めた訳じゃないし、クレスを助けたいって願ってる。







それでも、最悪の場合を想定し、覚悟している。すぐに動けるように、迷うことのないように。








迷っている間に殺されるなんてことにならないように。









俺は、そんな風に割りきることなんて出来ない。






もし今のままセレネルナと戦い、クレスに戻すことが出来ないと理解した上でも、ヤマトやアルエがセレネルナを……クレスをやむなく殺したとしたら多分、いや、絶対に俺は耐えられない。







クレスは大事な人だから




それしか出てこない。でも俺にとって最も大事な理由。





打算とか最少のリスクとかそんなこと考えられない。



子供じみているかもしれないけど、これが正直な気持ちだ。







だけど…クレスはそれを望まない。












あの夢に出たクレスが言った言葉は、間違いなくクレスの言葉だろう。





今まで、クレスが何度か見たという夢。





クレスが月の者としてそれを見れるなら、太陽としての俺なら似たようなものが見えるのだろう。



見える理由に関してはどうでもいいが。







あくまで夢……でも俺はその夢に出てくるクレスは本物だ。




夢を見せるという手段で俺に伝えたんだ。




その確信だけは強くあった。




同時に、だからこそどうするべきなのか、迷う。









助ける手段を見つけて、セレネルナと対した時に実行しクレスを救い出すことが出来れば万歳だ。最高だ。








でも、はっきり言ってその望みは薄い。








今までの全てのイビルがセレネルナ同様、生き物から作られているのなら、




1.致命傷を与えれば消滅


2.手傷を負うことで元に戻った例もない


3.太陽の光を当てても怯むだけ




の特徴が当てはまることになる。





1と2からして戦闘では間違いなく、イビルから戻ることはない。


3の理由も、クレスのポータブルサンによるものだから今の俺達には実行出来ない。








ではどうする……?







ではどうする……?







……あの黒い粒子の謎を解くんだ。




クレスはあれを浴びることによってイビルへと変貌した。


ドームに閉じ込めたことから、おそらくかなりの密度が必要だろう。



つまり、俺達がイビルになる可能性も、常に密度に気を配れば解消出来る。






それを元に、イビルから黒い粒子を取り除く手段を見つけることが出来れば、クレスを救えるんだ!


それに、今後イビルにされた生き物を無駄に殺すこともなくなる!











……殺す……!?














………そうか……





イビルは死んだら黒い粒子になる。その際、遺体も何も残ることはない。





逆に言えば、イビルの体は黒い粒子で構成されているんだ。


イビルの元となった生き物は、分子レベルで黒い粒子と同化しているのかもしれない。






だとしたら困難だ。単純に黒い粒子を取り除けばいいって話じゃないんだ。






……どうすればいい?




クレスからイビルになる黒い粒子を取り除けないのか……?









殺すしか………






ないのか………?








太陽の者









唯一の希望








仲間









……馬鹿馬鹿しくなってきた。




何も出来ないじゃないか。


何も出来てない。太陽の者としても、希望としても、仲間としても!!





俺はただ走ってきただけだ。



クレスに導かれ、ついていき、がむしゃらに戦ってきただけだ。



クレスがいなきゃ立ち止まってるだけの俺の手を引いてくれたのはクレスだ。



その手を放されたら……



何処へ行けばいいのかもわからない。





改めて俺の弱さを思い知った。クレスがいないだけで、こんなに弱くなってしまう。






彼女は、月は太陽の光を浴びてやっと輝けると言った。





確かにその通りだ。クレスという太陽がないと、俺という月は輝きを失うんだ……。



















ふと、金属音が聞こえてきた。





金属同士がぶつかり合い、擦れ合う音……!








「これは、剣の音!?随分近いぞ……!」






俺は一旦思考を打ち切ってベッドから飛び起き、立て掛けてあった剣を手にして小屋の出口に向かった。






ソラが剣を取るほんの少し前、ヤマトとアルエは情報屋を回ってきたが、有力な情報もなく帰路についていた。




「なんも収穫なかったなぁ…裏社会ならなんか握ってるか思うたんやけどな」


「逆に言えばそれほど今は平和ってことだ。


……そう思えたらいいのだが……」


「……あいつ、どないするんやろか。クレスを……殺せるんやろか」


「…あまり考えない方がいい。希望を持って、クレスを救う道を考えよう。今のソラは、その方が立ち直れるはずだ」


「………ちょっと甘い気がするけど……


せやな……塞ぎ込んでる時間も勿体無いしな」




情報が無いため、藁をも掴まんとするような方針だった。


しかし、掴めるかもしれない可能性は時間がある限り積極的に掴みかかりたい。二人も必死だった。








その時間は無いと思い知らされるのは、その直後だった………










「……ん?家の前に誰か立ってるな」


「ホンマや。誰や?あれ……」




家に近づいていくにつれてその姿をはっきり見た時、愕然とした。





その姿は、今最も見たくない人物のものだった。







「「セレネ…ルナ……!?」」






こちらの気配に気付いたのか、二人の方を向くセレネルナ。


二人の姿を確認すると、体をも完全に向き直し、歩み寄っていく。そして両手をかざし、レイピアを二本出現させ両腕に一本ずつ持つ。






つまり、彼女はここに戦いに、殺しにきたのだ。


しかも前回と違い二刀流。本気の証だ。



「「く……!」」




二人も自分の得物に手をかけ、戦闘体勢をとる。



瞬間、セレネルナは翼を用いてかなりのスピードで低空飛行し、接近するとレイピアを持った両腕を上に大きく振りかざし、それぞれの刃がヤマトとアルエの脳天目掛け落とされた。



ヤマトは刀、アルエは苦無をそれぞれ頭上に構え、セレネルナの一撃を防ぐ。





この一撃が、ソラに戦闘を感知させたのだ。








「セレネ……ルナ…!」









扉を開いたその時、視界に入ったのは、戦闘を繰り広げるヤマト、アルエ、セレネルナ。









ヤマトとアルエは、セレネルナを殺したくないと防戦の一方。









これではいずれヤマトとアルエが殺される。








そこまで把握出来たのに…








足が……動かない。







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