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第22話:殺してね


現実の時の流れは残酷で、気づけば次の日、また次の日。そんなこんなで忙しく、投稿もまた、遅くなる……。


……申し訳ありません。



第22話です。どうぞ。





「ギョワアアアアァァァァァァ――――!!!」




メディストルの右腕が宙を舞い、黒い粒子となって散った。


右腕に握っていたペンダントはヤマトの手に落ちて来た。





「アルエ!受け取れ!」



ヤマトはすぐさまそれをアルエに投げ渡す。アルエはそれを受け取ってすぐに首にかけた。





「フ…フェッフェッフェッ…そのまま…殺していればよかったものを…」



ヤマトがアルエにペンダントを投げ渡す間に、メディストルはドームの入り口まで来ていた。閉まっていたはずの扉を開け、既にその扉の向こう側のようだ。





「今このワシの右腕しか切り飛ばさんかったということは、殺すことを躊躇った結果か!?あれだけの大口叩いておきながら、迷っておるのか!?」




右腕を失いつつもなお、罵声を浴びせるメディストル。


ヤマトはメディストルを追って駆けていくが、寸前のところで扉が閉まり、開かなくなった。




「くっそ!逃してもうた!」



ヤマトは悔しがるが、今は敵を追うのは二の次である。すぐにソラとアルエを探した。



刃がぶつかり合う音が鳴る方を見ると、セレネルナの攻撃を捌くソラとアルエの姿が見えた。



といってもソラはかなり危なっかしく、ソラを狙う攻撃をもアルエがカバーしている状態である。




「クレス!私達が分からないのか!?」


「…イビルの驚異…倒すべき敵」


「……く…!」




ヤマトも加勢に向かおうと客席から飛び降り、ソラ達から少し離れたところに着地、駆け出そうとした瞬間……







闘技場の外から爆発音が響いた。








「一体なんや!?」



爆発音と共に、揺れも襲ってくる。これには流石に危機感を持ったか、アルエとセレネルナも戦闘を一時中止した。




ただ一人、ソラのみ未だ放心状態だ。




爆発音はかなりの速さで近づき、やがて闘技場の天井に至った。そして、天井に穴が開く。


ここは海底都市。当然、その穴から水が勢いよく入って来た。




「このままでは溺れ死にだぞ!脱出するんだ!」



アルエが苦無を構えて扉に向かっていく。破壊して進むつもりだ。可能性は低いが、他の手段が思い浮かばないのだろう。苦無を扉に突き立てようと振りかぶる。


その瞬間、水が扉をぶち破って入ってきた。アルエは扉と共に水に弾かれ、押し返される。



これが意味することは二つ。





浸水口が増え、溺死までの時間が早まったこと。





脱出は絶望的であるということ。





「ちィ、やってくれよったな!あのクソったれイビルが!」


「水がもう腹まで来ている!もうすぐここも水没するぞ!」



爆発で崩れた天井が水圧に圧されて更に破れ、水量、浸水速度はどんどん増していく。


あっという間に水は顔まで達した。



「もう終わりやあぁ……ガババ…!」



呼吸が出来ずパニックになるヤマト。


最早生死も定かでなくなったソラ。








しかし、アルエは何故か至って冷静に手を合わせ、祈っていた。


この状況下で、自分でも不思議な感覚だった。


まるで何かに導かれるように、「祈る」という結論に至ったのだ。







どうかお救い下さりませ













タツノミヤ守護神



ワタノツチ様






すると、アルエのペンダントが強烈な青白い光を放ち始めた。


アルエは驚いた。今まで戦闘において光ったものとは違う。ペンダントに、まさかこれほどのパワーが秘められていたとは。


凄まじい光に目を瞑りかけそうになるが、目を細めてペンダントをよく見ると、ペンダントに紋様が浮かんでいた。




輪のようにその身を巻いた、群青の蛇の紋様。





(ワタノツチ…様…?)





それを見た瞬間、光が三本の筋の形となって、それぞれアルエ、ソラ、ヤマトに向かって伸びた。光はそれぞれの全身を覆うように巻き付くと、青白い光の膜となった。




「溺れてまう!溺れ……あ、あれ?…なんや…これ?」


「呼吸が…出来る!?」



光の膜に覆われた三人は、水中にも関わらず呼吸が出来るようだ。


ソラは気を失ったのか、無反応だが。


これなら、とりあえず溺死の心配はない。





スッ…、と膜と共に三人の身体が浮上を始めた。この膜が地上まで導いてくれるらしい。


「た、助かる…のか?」


「一回命諦めたでホンマに…」







闘技場の天井の穴から抜け出した時、ふと三人が闘技場に目をやると、無表情でただこちらを見上げるセレネルナの姿があった。






その表情から感情は読み取れなかったが……









その目付きは「セレネルナ」でなく、「クレス」だったような気がした。















真っ白い空間……





俺が立ってて……





他には何も見えない……












声がする……






聞きたかったあの声が…






あの声が俺に呼びかけている……けど……






どこにいる……?










『ソラ……ソラ!』






俺の名を呼んでいる…






なのに、姿が見えないのはなんでだよ……?







どこにいるんだ……?












クレス……!














『ソラ、私の声、聞こえてるよね?』








ああ、聞こえてる。声だけは、な。








『よかった……最後に話したかったんだ』











………今なんて言った?



最後って………?










『もう私がクレスでいられるのもわずかだけ…


次に会う時は…それはもう私じゃない』










な、何を言って……!







『だから最後に…謝っておきたい。こんなことに巻き込んで、本当にごめんなさい!』









こんな時までお前は謝るのかよ……!








『私……ソラの足を引っ張ってばかりで……戦う時もソラに頼りっぱなしで……』







よせよ……!足引っ張られてるだなんて……思ったことねぇよ……!








『私が……ソラに……ヤマトやアルエにも関わらなければ……』








そんなこと以前森でも言ってたじゃんか……






バカ、やめろってそんなこと言うの。






見えないけど、今のお前の顔は簡単に想像できるぞ。笑えって。泣いてるような顔見たくねぇよ。









『……ソラは優し過ぎるよ……いつもいつもそうやって励ましてくれて……』










んなことはねーだろ。励まされたのはこっちだって……









『……それこそそんなことはないよ……』









はは、お前ならそう言うだろうって思ったよ。




お前こそ、本当に優しいからな。









『……私がそうしていられたんだとしたら、それはソラのおかげだよ』









俺か………?









『私ね…ソラの優しさが太陽の力の源なんだと思うんだ』







『太陽の光は暖かくて、エンゼルに限らずあらゆる命に安らぎを与えるもの…ソラの優しさも、太陽に匹敵するくらい暖かくて…私に安らぎをくれる。



だから、私も優しくなれるのかもしれない。ホラ、私、夢の中で月の者だし。月は、太陽の光を浴びてやっと輝けるものだから』









月の者……か。けどさ、クレスは俺なんかの力を借りなくたって、輝いてると思うぜ。









『え……なんで?』









さっきも言ったけど、俺は随分クレスに励まされたんだぜ?










『私が……?どうやってソラを……?』













……キザで、有りがちな言い方だけど……













笑顔だよ。














『え、笑顔……?』









イビルとの戦いに身を投じ続けられるのは、クレスが側でくれる笑顔に、ちゃんと励まされるからさ。


その笑顔を守ってやりたいって思えるから…。








『そ、そんなこと…』







なぁクレス、森での戦いの時、タイタンさんが最期に…お前に笑えって言ってたの、覚えてるか?










『う…うん……』









タイタンさんは、お前に笑って欲しかったんだ。だからお前の笑顔に満足した。知り合いだった俺の頼みだから一緒に戦ってくれたってのもあるかもしれないけどさ、多分、それが一番だったと思うんだ。


考えてもみろよ。クレスの夢のこと話したあと、信じられないかもしれないと思ってたら、部隊長達がすぐに立ち上がってくれただろ?


みんな、守りたいものために立ち上がってくれたんだよ。











『……………』










だからさ!沈むのはもう終わり!笑いなよ!









『……やっぱり…ソラは優しいね』










はは、何度目だよ。それに、そんなんじゃないってば。













『でも…この次は、優しさを私に向けないでね』









…………………











……………は?













『躊躇わないで。迷わないでね。優しさのせいでソラが犠牲になったりしないで』






お、おいクレス……?










『躊躇わずに……









殺してね………』

















一番聞きたくない言葉は、後ろで囁かれた気がした。






振り返ると、探していたクレスの姿。






殺してなんて言ったとは思えないほどに綺麗な笑顔を浮かべるクレスに、不覚にも見とれてしまう。






クレスが俺に背を向けて離れていくのを見てやっと意識を取り戻し、クレスに追いつこうと、叫ぶのも忘れてただ走った。






けれど、走っても走っても追いつけない。なんでだ?なんで追いつけない?なんでどんどん離れていく?なんで離れていこうとする?



なんで……

なんでだよ……!




なんでなんだよ!!













「クレスゥゥゥ――――――――ッッ!!!」
















やっと出た叫び声…






けどそれは……








走って追いつくことを








諦めたということ









それでも叫び声は届いたのか、クレスは立ち止まった。







ゆっくりと顔をこちらに、振り向いてくれた。








クレ…………





















クレスじゃない……











あの姿は…………




















セレネルナ……!?




















不意に甦る記憶









黒い粒子の霧に包まれる守りたかったもの









変貌した










守れなかったもの











「う…うああぁぁ……!











あぁあぁぁぁあぁぁあぁぁぁあぁぁあぁぁぁあぁあぁぁぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁあぁぁあぁぁあぁぁぁぁあぁぁぁぁあぁぁぁぁぁあぁあぁぁあぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁあぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁあぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁあぁぁあぁぁあぁぁあぁぁぁぁあぁぁぁぁあぁぁぁあぁぁあぁぁあぁあぁぁぁぁあぁぁぁあぁあぁぁあぁぁあぁあぁぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁあぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁあぁぁあぁぁあぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁあぁぁ!!!!!!!!」







忙しい時期から解放され、2ヶ月の間を空けての投稿です。


構想なんかもなかなか出ず、気づけばゴーストウォーズばかり執筆が進んでいたり……


遅くなり申し訳ありません。



こんな菊一文字ですが、どうかよろしくお願いします。


感想や評価などもお待ちしております。


ついでにゴーストウォーズなどもよろしくお願いします。



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