第21話:セレネルナ
すみません!最近忙しく、投稿できませんでした!
最後まで投げ出さないので見捨てないでください……
第21話です。
「さぁ、かつての仲間同士存分に殺し合うがいい!!」
メディストルのその言葉を合図に、クレスだったであろう女性がソラに向かって飛び出す。
ソラは横に転がってその突進をかわし、そのまま距離をとる。
突進をかわされた女性は六枚の翼を使ってブレーキをかけて止まり、ソラの方に向き直して右手を上に伸ばす。
すると女性の手に、黒い稲妻と共に刀身の細い直刃、持ち手を覆う鍔を持つ剣…即ちレイピアが現れた。
そして女性は再びソラの方へ突進し、その勢いでレイピアを突き出した。
ソラはレイピアを、右に動いてよけたが、女性の左拳がソラの腹部を捉えた。パンチをくらったソラは後ろに吹っ飛ぶ。
「ぐ…うぅ……」
かわすことしかしないソラを見ていたメディストルは、その口の端を限界まで釣り上げ、不気味に、言い聞かせるように囁く。
「何を迷っているのだ……お前達は今まで殺して来ただろう……何十……何百ものイビルを……
そやつもその内の一つに過ぎん……お前達がこれからも積み上げていくであろうイビル達の屍の山……こやつも、その中の一つのはず……
……まさかそいつだけ特別か?
今までの奴らと何が違う?
そいつも殺さなければ、下界やアッパースカイは大変なことになるのだぞぉ〜!?」
最後はわざとふざけた口調だった。
……戦えない。戦えるわけがない。
ましてや殺すことなんて絶対に出来ない。
それはヤマト、アルエも同様だろう。
ソラに戦意はなくても、女性は襲って来る。
女性はソラに接近し、レイピアを縦に振るう。ソラは横に回避し、自分の剣を取るべく走った。
反撃のためではない。とにかく防御の手段を得るためだ。
女性はレイピアを構えて追撃する。背後からソラを貫くことをも躊躇わないようだ。
ソラが剣を掴んだ時には、レイピアの剣先が背中に触れる寸前だった。
剣を掴んだ瞬間体を回転させて間一髪、レイピアの直撃を避けた。
女性は一瞬体勢を崩したがすぐに立て直し、レイピアをソラに振るう。
ソラは、今度は剣を抜き防御した。その後もソラは、後退しながらレイピアの連撃を捌く。捌くだけで反撃はしない。
「やめろ!やめてくれクレス!」
防ぎながらクレスだった女性に叫ぶソラ。
「こんなこと望んでないはずだろ!正気に戻ってくれクレス!!」
「……違う」
女性が初めて口を開いた。その声質は、クレスの面影が強いが、暗く、そして冷たい。感情が強くなく、淡々としている。
「私は正気……私はクレスではない……私の名は『セレネルナ』……マスターイビルとして、貴方を殺すことを望んでいる……」
ソラの剣が更に鈍くなった。
ソラの剣から完全に覇気がなくなった。セレネルナと名乗った女性のレイピアは防いでいるのだが、力なく、やっと防いでいるという感じだ。
そのソラはというと、虚ろに目、口を開けている。生気がない、というより、生気の動きがない。よくある表現の仕方をすれば、『彼の中の時間が止まっている』のだ。
その頭の中では、先ほどのセレネルナの言葉が反芻されている。
私は正気
私はクレスではない
私の名は『セレネルナ』
マスターイビルとして、貴方を殺すことを望んでいる……
私はクレスではない…
私の名はセレネルナ…
クレスではない
セレネルナ
クレスではない
セレネルナ
クレスではない
セレネルナ
クレスではない
セレネルナ
クレスではない
セレネルナ
クレスではない
セレネルナ
クレスではない
セレネルナ
クレスではない
セレネルナ
クレスではない
セレネルナ
クレスではない
セレネルナ
クレスではない
セレネルナ
クレスではない
セレネルナ
貴方を殺すことを望んでいる
貴方を殺すことを望んでいる
貴方を殺すことを望んでいる
殺すことを望んでいる殺すことを望んでいる
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す…………
もはや眼前で繰り出されている攻撃も、意識的には見えてはいない。本能で防いでいるようだ。
その両の瞳からは、それぞれ一筋の雫が流れていた。
しかし、その雫で頬が濡れている感覚すら、今のソラには、ない。
「くそぉ!あんなつらい戦いをアイツ一人にやらせるなんて出来るかい!」
「うむ、加勢しよう!」
言うが早いがヤマトとアルエは、自分達を取り囲むイビル達を殴り倒した……はずだったのだが……
「……ペンダントが無いんだった……」
アルエは捕まった時、ペンダントも奪われていたのだ。
何故かは不明だが、アルエはペンダントがなければ戦闘力を失ってしまう。
そのため、イビルを殴り倒せたのはヤマトだけである。アルエが倒そうとしたイビルはぴんぴんしており、口に矢を形成してヤマトを狙う。
「何やとおおぉ!!?」
叫びながらアルエを抱え、イビル達を背に武器が落ちているところへ駆け出す。
ヤマトはイビル達が追いかけながら放つ矢をかわしながらなんとか武器の元へ辿り着いた。すぐさまアルエを降ろし、愛用の二本の刀を抜く。
そして追って来るイビル達に駆け出して衝突。武器を持ったヤマトの敵ではなく、全て斬り倒すのにそう時間はかからなかった。
その間にアルエは苦無を拾うが……
「ペンダントが無い……?」
アルエにとって最重要の道具、ペンダントが無かった。
「お探し物は、これかのう?」
声のした方を見上げると、なんと傍観者メディストルがペンダントを持っていた。
「このペンダントは何らかの強いパワーを秘めておる…研究させてもらうぞ、フェッフェッフェ……」
「なんだと!返せっ!」
しかし、ペンダントを失ったアルエの力では、メディストルの元に辿り着くことが出来ない。
「そんなに大事な物なのか?これは……
だろうのぉ…これがなければお前はただのガキじゃ…フェッフェッフェ」
客席まで届かないアルエを見て瞬時にペンダントがアルエの戦闘力に関係していると見切ったメディストルは挑発的に言い放つ。
「そんなのではない!」
アルエの答えは違った。
「それは私のじいちゃんがくれた物だ!貴様らのように、支配する力だけでものを計るような連中が易々と触れていい物じゃないんだぞ!」
「支配する力だけでものを計る……か……上等じゃよ、世の中それが全てじゃろうが。
特にお前は悪人を殺しているそうじゃな…それは『暴力という悪を更なる力で支配している』ということではないのかのう?
イビル相手でもそうじゃ。イビルを悪とし、悪を力で倒して来たからこそお前達は下界を守っているのだろう?
正義とか悪とか区切っても、所詮は何かを得たいがために奪い合い、殺し合っているだけ…突き詰めて言えば『力比べ』じゃよ」
「せやから同類と思うとるなら大間違いやぞ…」
メディストルが後ろを振り返ると、二本の刀を煌めかせるヤマトの姿があった。
いつの間にか客席に上がっていたらしい。
気づかぬうちに接近されたメディストルの額に、冷や汗が滲み出る。
「正直言うて何が違うか説明はできへん。お前の言うたことも合ってると思う。
せやけどな、ワイはその理論で説明できへんところに違いがあると思う。いや……
ワイらはお前らと確実に違うんやアァァ!!」
叫びと共に、ヤマトが右腕に持つ刃が振り落とされた。
短かったですね…この後どうしよう…
実は簡単には展開考えてあるんですが、いざまとめようとしても、これがなかなか出来ないんですよね……
文章力をください!(泣)