第17話:タツノミヤの冒険(2)
1ヶ月以内……それは高く厚い壁…
第17話です。
「逃がすな―――!!」
「「ギャ―――!!」」
イビルに見つかった二人は、タツノミヤ中を逃げ回っていた。
しかし、逃げ回る内に次々とイビルは増えていき、いつしか何十という数に達していた。
ここまで増えてしまうと、流石に戦って突破は困難である。逃げ回るしかない。二人は、まだ少数の内に倒しておくべきだったと後悔していた。
一方ソラは、如何にしてクレスが入ってしまった遺跡の中に入るかを考えていた。
先ほどまで遺跡周囲に入り口がないか探したが、残念ながら近くに遺跡に入る方法は無い。
クレスが気がかりである。戦闘手段が命を削るポータブルサンしかないクレスが、もしイビルと遭遇してしまったら……
「かくなる上は…ぶっ壊すか!」
ソラは強行突破を試みることにした。
そして、遺跡に穴を開ける方法を考え始めた。
穴に落ち、遺跡内に入ったクレスは、パイプだらけの機械的な通路を歩いていた。
イビルの姿は見えない。どうやら見つからずに進めているようだ。
「ポータブルサンはまだ持つな…さっき回復しきっててよかった…
……あっ…」
通路の角を曲がろうとした瞬間、何者かが数人走る音が聞こえ、すぐに隠れた。幸い気付かれてない。
イビルのようだ。
「まだ捕まらないのか!二人組は!」
「急げ!」
「奴らを捕らえろ!」
二人組…ヤマトとアルエのことだろう…
しかし、どうやら二人を追いにイビルが出ているおかげで、遺跡の中の警備が薄くなっているらしい。
そこは、二人に感謝かな?
そう思いながら、イビルが行ってしまったのを確認し、クレスは先へと進んだ。
クレスは、その後もイビルの動きを警戒、確認しながら少しずつ、だが確実に進む。
そして、一度もイビルに見つかることなくある部屋の前に辿り着いた。
ドクン――――
クレスは妙な胸騒ぎを感じた。
「なんだろ……この部屋………何かある気がする……恐ろしい何かが……」
ソラ達がいれば別だが、クレス一人の状況では、この場から早く立ち去った方がいいのだろう。
しかし、避けてはいけない―――
何故か直感的にそう感じたクレスは、恐る恐る扉を開けた。
幸い、中にイビルはいなかった。安全を確認後、クレスは部屋を見渡す。
部屋の壁には、人一人分の大きさがあるカプセルみたいなものがびっしりと並べてあった。
その中身は……今までの旅で何度も見たもの……
…………黒い粒子
「間違いない……!あの黒い粒子だ!なんでこんなところに保存してあるの!?」
カプセルに手を当てながらクレスは叫ぶ。
黒い粒子……倒されたイビルの体が崩れ落ち、この粒子となって天へ昇る。
本来天へ昇るはずの黒い粒子が、ここではカプセルに密封することで保存されている。
この海底都市タツノミヤが、イビルの巣窟であることは既に分かっているが、それだけではないようだ。
クレスは、あの夢の中で言われたことを思い出していた。
『………そこに………』
クレスはまさか、と思った。夢の中で告げられたこと…
もし、それが真実なら、おそらくこの黒い粒子は――……
コツコツコツコツ……
「はっ!」
外から足音が近づいて来る。この部屋に向かっているらしい。
クレスは急いで隠れ場所を探す。並べられたカプセルの奥にスペースを発見したクレスは、一旦カプセルをとってスペースに入り込み、またカプセルをしまうことで隠れた。カプセルの中身は質量のない粒子なので、意外に軽かった。
一応隠れることは出来たが、目の前のカプセルをどかしたら簡単に見つかってしまう。
扉が開き、あの猿のイビルが二匹、入って来た。
「さっさと選んで、メディストル様に持っていこうぜ」
「分かってるよ、え〜と…どれがいいかな〜…」
イビルはカプセルを見渡し始めた。
(メディストル……?まさか…新しいマスターイビル…!)
クレスは、息を潜めながらも『メディストル』という単語に反応していた。
そして、イビルの言葉から、そのマスターイビルがこの粒子入りのカプセルに関係していることも分かった。
「よし、これにするか……」
「!!」
イビルはクレスが隠れているカプセルの前に立った。
目の前にあるカプセルが取られるとクレスは見つかってしまう。場所を移そうにも、狭くて動けない。
イビルがカプセルを取ろうと手を伸ばしてきた。
(なら……!)
クレスは物音を立てないようにゆっくりとポータブルサンを構えた。
心拍数が増える。
(焦らないで私…!)
イビルの伸ばした手が…
クレスを隠しているカプセルから少しずれたところのカプセルを掴んだ。
「よし、行くぞ」
「ああ」
結局、クレスに気付かないままイビル二匹は、カプセルを持って部屋を出ていった。
「……ふう…っ……」
イビル達が部屋から出ていった後緊張が抜けたクレスはぐったりした。
そして少し落ち着いてから、カプセルをどかして隠れ場所から脱出した。
「メディストル……どんなマスターイビルなんだろ……それに、イビルはあのカプセルをどうするのかな……」
クレスはそう思い、カプセルを持ったイビル達の後を追うことにして部屋を出た。
危険だが、これは海底都市の謎を解く重要な手掛かりだ。逃すわけにはいかない。
勿論戦いはしない。何をしているのかを見たら引き上げて、ソラ達と合流するつもりだ。
見つからないように、見失わないように……
先程遺跡を歩いていた時以上に神経を張り巡らし、慎重かつ素早く動く。
クレスは緊張に押し潰されそうになりながらも、なんとか冷静に動けた。
しかし、やがてイビル達は長い螺旋階段を下り始めた。クレスも追うが、どんどん地下に向かっている。
(地下に行き過ぎたらまずいな…ますますソラ達と合流出来なくなる)
その後、もう限界だと判断し戻ろうとした瞬間…
「いたぞぉぉぉ!!」
上からのイビルの声が螺旋階段に響いた。
このサイトの他の作品を見て、改めて自分の文章力の無さと小説の難しさを感じます…
次回更新はいつになるだろうか…
すみません。頑張ります。