第11話:レビタの子供
前話から1ヶ月経たない内に投稿出来るとは思わなかった…
菊一文字本人もビックリの第11話です。どうぞ。
イシスの森での戦いから二日後、ソラ、クレス、ヤマトの三人は、港町『レビタ』にやって来ていた。
レビタは海に面していて船が行き交い、様々な物資が流通し栄えている町である。
この日も、町は多くの人で賑わっていた。
「ここは平和そうだな」
「うん、よかった…」
クラウロックでの経験もあって、ソラとクレスはそんな会話をしていた。
「どこかで保存食とか売ってへんかなぁ、ここ出たら次の町までまた日数かかるで」
「少し腹拵えもしたいな…定食屋探そうぜ」
「食べる以外にも色々ありそうだし、見てみようよ」
ということで三人は、町を見てまわることに。
―――――――――
「うおォォォ――――――ッ!!」
ヤマトは興奮していた。
「この刃紋の美しさ、見事やなぁ――!!」
ヤマトが叫んでいたその場所は刀剣店。ヤマトはそこにあった一振りの長刀に感動していたのだ。
「店員はんこれくれ!」
「「衝動買い!?」」
ソラとクレスが同時にツッコむ。
「馬鹿は止めろ!そんなもん買う余裕ねえよ!
しかもそれ長刀だろ!?お前の戦闘スタイルと合わねーよ!」
ヤマトはやや短めの二刀流で戦ってきたので、長刀となると戦闘スタイルを変え新しく鍛錬し直さなければならない。
「うっさい!この美しい刃紋、長刀ながらこのバランス、そして耐久性と切れ味!
お前にこの刀の素晴らしさ分からんのか!」
「分かるさ、だってそれ俺が打った刀だし」
「………あ〜……」
一瞬にしてヤマトの買いたい熱が冷め、三人は刀剣店をあとにした。
刀剣店を出た三人はしばらく歩いていた。
すると、何やら人だかりが見えた。
その向こうで、身長が180cmくらいの男三人が、道の真ん中でフード付きの赤いコートで身を包んだ小さな子供に絡んでいた。
「なんやあいつら…あんな小さい子相手に」
「ち…しょうがないな」
ソラとヤマトは剣に手をかけた。
しかし、見ていた町人にその柄の動きを止められた。
「あんた達やめときな。『あの子』の邪魔したら死ぬぞ」
その町人の言葉に三人は驚いた。
「『あの子』の邪魔?」
「あの子が絡まれてるんとちゃうんか?」
「違うぜ…あの子が自ら絡んだんだ。あの男三人は指名手配中の強盗でな……
あの子は彼らを仕事のターゲットにしているんだよ。」
「「「仕事のターゲット?」」」
三人は首を傾げながら、人だかりの向こうを見た。
「随分なめた口きくおチビちゃんだなぁええ?」
ヘラヘラと笑う男達の中の一人がそう言う。
「さっきなんて言ったっけなぁ……
『死んで貰う』だと?」
「『死んで貰う』って…
まさかあの子の仕事って……!」
「始末屋だ」
町人がそう教えてくれた。
「大人をなめちゃあいけないよ、ガキ」
男達がポケットからナイフを取り出し、子供に向けた。
「…………………」
ナイフを向けられてなお沈黙し続ける子供。
「……やっちまうか」
ついに男の一人が前に飛び出し、ナイフを突き出した。
しかし、その突き出したナイフには何も刺さってない。
しかも子供を見失った。
「どこだクソガキィ!」
足にツンツン
「「うおお!?」」
後ろに下がっていた男二人は驚いた。
見失ったと思っていた子供が、背後に回り込んでいたのだから。
「は、速い……ヤ、ヤマト…今の見えたか?」
「な、なんとかな…でもそれがやっとや…」
「私は分からなかった…
いつの間に…?」
どうやら子供はソラ、ヤマトが目で追うのがやっとで、クレスには見えないほどのスピードで動いたらしい。
「くそっ!」
「こいつ!」
男二人は子供の方へ向き直った。
その時、二人は異変に気付いた。
さっきナイフを突き出した男が、そのままの体勢で動かない。
「おい、何してんだよ!こっちにいるって……」
体勢を変えないその男には、もうそんな言葉など聞こえていなかった。
ドサッ
「う、うわぁぁっ!?」
血を吹いて倒れた男の首には苦無が3本刺さっていた。
さっきの一瞬の内に刺したらしい。
町人からも、
「うわ…」「ひい…」
などの詰まった悲鳴が聞こえた。
ソラ達には、男を殺したその手さばきは見えなかった。
三人は唖然とするばかりだった。
「「あ、あわわ…」」
残った男二人はとうとう怯え、子供から目を離さないようにしてゆっくり後ずさりを始めた。
約5m下がり、子供の間合いの外に出た……
ハズだった。
一瞬男二人の気が緩んだ瞬間に子供は動いた。
気づけば男の一人の頭に苦無が刺さっており子供はさらに数歩先にいた。
「ひいぃ……!」
それにやっと気付いた最後の一人の顔は真っ青だった。
そんな男に、子供がゆっくりと歩み寄る。
一歩一歩
確かに、ゆっくりと…
「うぅわあぁぁァ!!」
倒れた男三人が警備隊に引き取られたのは、その20分ほど後だった。
その後、子供はいつの間にかその場からいなくなった。
―――――――――
ソラ達は騒動の場からそう離れていない定食屋でかけそば(節約のため)をすすっていた。
しかし、目線は三人共一方向を見ていた。
(((……あの子がいる!!)))
さっきの子供が二つ横のテーブル席でうどんをすすっていた。
フードはかぶったままで、顔つきなどは分からないが黙々と食べている。
しばらくして子供は箸を止めて立ち上がり、お金を置いて出ていった。
終始無言だった……
「「「……………」」」
「ありがとうございましたー!」
「「「………はっ!俺は(ワイは)(私は)何を!?」」」
三人共店員の声で覚醒したようだ。
―――――――――
三人はそばを食べ終わって金も払い、店を出ることにした。
ソラが戸に手を掛けようとしたその時、ガリッという変な音がした。
「ん?なんだ?」
ソラが足をどけると、そこには宝石が埋め込まれたペンダントがあった。
「なんだこれ…さっきはこんなのなかったぞ」
「じゃ私達がここに入ってからの間に落とされたってことだよね」
「ワイらがいる間に出入りした奴…………」
「「「…………あの子のか!!」」」
レビタの面する海は、大きく二つに区分けされる。
一方は港として、
もう一方は海水浴場として…
時期外れで泳ぐ者はいない海水浴場にはたった一人だけ、赤いフード付きのコートを着ている子供がいた。
砂浜で、何かを待ち構えているように仁王立ちしていた。
そして、その『何か』が海からやって来た。
人の形をしているが、その全身は緑の鱗に身を包まれ、手足には黒く鋭い爪が生え、指の間には水かきがあり、頭はまるでトカゲのよう。
それがおよそ20体、歩いて海から出てきた。
どうやら奴らは、海面を歩いてきたらしい。
「また現れたか…化物」
子供は苦無を二本取り出し、奴らに向かって駆け出した。
―――――――――
ソラ達三人は、あの子供にペンダントを渡すために、道にいた若い男性に聞き込みをしていた。
「赤いコートの子供なら、海水浴場の方に行ったぞ。」
「海水浴場か…ありがとう!」
「あ、待てよ!君達よそ者だな?
行かないほうがいい。あの海水浴場は呪われているんだ…。」
「「「呪われている……?」」」
「そうなんだ。あそこは……」
このペースが続けば万歳なんですけどね……
でも1ヶ月以内の投稿は守りたいと思いますので気長にお待ち下さい。
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