表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/54

第10話:受け継ぐ意志

この小説の執筆開始から一年を過ぎ、話数も十になりました。


きちんと完結させたいです。これからもよろしくお願いします。


「やったか……!」



エンテロットを倒し、安堵の声を上げるソラ。


しかし、周囲に喜びの色は無い。




「……五人…やられてもうたな……」



兵士七人のうち、エンテロットと戦った二人は傷を負ってはいるが健在だが……



五人はケルベロスに殺された。


今も、食いちぎられた兵士の屍がそこら中に転がっている。





しばらく沈黙が続いた…






「…はっ!隊長達はどうなったんだ!?」



ふと、ソラは獣を引き付ける囮を引き受けたタイタン達を思い出した。



「そ、そうや!無事なんやろか!?さっきイビルを追いかけて場所が分からへん!すぐに探さへんと!」



ヤマトはそう言うと、傷ついた兵士二人の元へと駆け寄った。



「大丈夫か?」



「はい……私はなんとか…しかし、こっちは…」


「……うう……」



鞭で滅多撃ちにされた方の兵士は、未だその傷は癒えず、動ける状態ではなかった。



休ませてやりたいところだが、そうはいかない。

こうしている間にも、タイタン達は戦っている。




「よっと…」


ヤマトが、瀕死の兵士を背負った。




「す、すみません…ヤマトさん…」



「気にせんとき。それより急がへんと」




ヤマト達はタイタンを探しに駆け出した。


ふと、ソラが異変に気付いた。一人の少女が止まったままだ。


「どうしたクレス?」


ソラは振り返り、クレスに声をかけた。


しかし、クレスは黙ったままだった。俯いておりその表情は読み取りづらいが、暗い顔だった。



「何しとんねん!はよ行かんと!」



「はっ……ご、ごめんなさい!」


前にいたヤマトの声で、クレスは我に帰り、ようやく駆け出した。







「あ…あぁ………!!」





















どれくらいの時が経ったのだろう、ソラ達は囮役のタイタン達と合流した。









しかし、そこにあったのは、兵士の屍の山、血の海。





立っている者はいない。立つ足すら食いちぎられた者もいる。戦うための腕を落とした者もいる。体に指示を与える頭をやられた者もいる。




まさに地獄絵図だった。





獣達の姿が無い。おそらく皆倒され、天へ昇ったのだろう。








彼らは、壊滅に陥りながらも、戦い抜き、倒してくれたのだ。










「………………」




言葉を発する者はない。皆、ただ唇を噛み締めるしかなかった。










「う………あぁ……ああぁあぁっ………!!」




声を上げたのは、クレスだった。息は荒く、体は震えている。




「…の……だ……!」


「お、おい、クレス…」


「私のせいだ……!」





「私が……私が皆を巻き込んだ……私が皆を危険に追いやって……破滅させてしまった…………ハァ……ハァ……」



ソラの呼びかけに応えず、クレスの息はますます荒くなっていく。



「おい!落ち着けクレス!」










「私が巻き込んだ!この世界の人々を!!


クラウロックの町の人達も!この部隊の人々も!獣達だって!本当なら、こんなことには……







そして………ソラ!私はあなたを巻き込んだ……!


あなたの力に期待を寄せて、あなたを戦いに導いてしまった!












私さえ…………関わらなければ…………!!」















「そ…んなこと……言う……な………」









確かに聞こえた。掠れながらも、小さいながらも、その声は、確かにソラ達の耳に響いた。






真っ先に動いたのはクレスだった。


声がした方に向かって走っていった。







クレスが少し離れたところで足を止め、その体勢を低くした。



ソラ達もやって来て、同じようにした。















「タイタンさん……!」











その視線の先に、右腕はもげ、左腕には貫通した歯形、両足も失い、体にいくつもの爪跡を刻まれたタイタンがいた。







「タイタンさん、私……


私………ッ!!」




雫がクレスの頬を伝う。




「私が………私が…………!!」






それ以上の声が出なかった。


かわりに大きな雫がいくつもいくつもこぼれ落ち、タイタンを濡らした。




その雫にこもったものは



後悔と自責の念。





それは、満身創痍の男に染み渡った。





「クレスよ……忘…れたか……?」



タイタンが掠れた声で語りかける。
















「俺達は…この世界を守る…のが仕事だ…君達がいなくても、やるぜ…」






「―――………!!」




「俺達は…巻き込まれたんじゃ…ない…やるべきことを…やるだけだ…」


「死ぬなんて…軍に入った時に…覚悟して…いるさ…」


「そう…自分を責める……な」





クレスの脳裏に、戦ってくれた戦士達の顔がよぎる。




各隊の隊長であるランド、アクス、モール、マグナム。


そしてイビル操る猛獣に勇敢に立ち向かった兵士達。






彼女の脳裏の中の戦士達は、笑っている。みんな……





















彼女を責める者なんて、一人もいないのだ。









「グハッ!!!」



突然、タイタンが吐血した。




「「「隊長!」」」


「「タイタンさん!」」





「そう…だ、クレスに…渡さねば…ならな…いもの…がある……」



タイタンはそう言うと、ボロボロになった左腕を背中の後ろへ持っていき何かを探し始めた。










そしてクレスに差し出された手には











「あっ………」














光を放つ一枚の羽根














「天地神明の翼……!」





「最後の…ライ…オンが拡散した…あとに残っていたんだ……


これが……君達が言っていた…天地神明の翼か………」




「はい……手に入れてくれたんですね…





これこそ天地神明の翼の一枚…





『風の羽根』……」




クレスはその羽根を受け取り、涙をこぼした。



「ありがとう……ございます……」





「フフ……クレスよ………ありがたいと……いうなら…




……泣くな……笑え……」





「……はい……」






羽根を受け取ってもまだ顔を歪ませるクレスに、タイタンはそう言った。


最後の方は、声が掠れていて聞き取りづらかったが、それでも彼女には伝わっていた。












涙は止まらない。






しかしそれでもクレスは







精一杯の










笑顔を見せた。











「ク……ハハ……




それでいい………












………………」















タイタンは、二度と目を覚まさなかった。










タイタンを筆頭とする有志部隊は、三人を残し壊滅。


彼らの墓標がずらりと並ぶイシスの森は、この部隊の激戦の跡地として、後に語り継がれることになる。




戦いを終え、死者を弔った五人は、森の入り口に戻っていた。









「本当に…来てくれるのか?ヤマト……


部隊を立て直したりとかしなきゃならないんじゃないのか?」



「立て直しは残った二人に任せる。



…それに、マスターイビルの一角を落としたゆうても、敵はまだ居る訳やし、ワイらは戦い続けなあかん。








死んだ皆も、生きてたらそうするハズや…



せやから、その意志をワイが継ぐねん。」




ヤマトの目は、真剣そのものだった。






「……分かった。よろしく頼むぜヤマト。」


ソラもきっと、タイタン達の意志を尊重したのだろう。



タイタン達は、死してなお、ソラ、クレスと共に戦い続けてくれる。




ヤマトを通して。






「部隊のことは気にしないで、奴らを叩いて下さい。」


「うん、みなさんお元気で……」



兵士とクレスがそんなやりとりをし、いよいよ出発……















しない。









まだ………














『彼ら』への挨拶がまだだ。









全員がイシスの森に向き直った。





戦い続けてくれた者達、いや、これからも戦い続けてくれる者達に。






皆一斉に、










敬礼した。










言葉など要らない。



手を頭に当てるそれだけで、彼らのつながりが、確かにそこにあった。





ソラ達は、改めてイビル相手に戦うことを、ここに誓った。









「「気をつけて下さいーー!!」」






二人の兵士に見送られ、ソラ達は旅立った。









……無言……




はっきり言って、暗かった。






分かっている。彼らは言ってくれた。



戦い、死ぬことが職務だと。覚悟の上だったと。




それで悲しまれ、士気が下がることの方が、彼らにとって耐え難いということも。





それでも、ソラとクレスは、自分達に協力したばかりに……と思ってしまう。



タイタン達の死に、自責の念を感じてしまう。





「なぁ、お二人さん」



ヤマトが二人に話しかけた。



「そのー…厄介者が増えて申し訳あらへんな」



首をかしげる二人。




「厄介者だなんてそんな…」


「いやいや、だってそのー……ワイが……









お二人さんの『愛の巣』に………」





その言葉に二人が一瞬固まる。


そして





「「そんなんじゃなーーーい!!!」」






真っ赤になって叫んだ。



それはそれは青空に響き渡るほどのデカい声で。




「あっはっはっはっ」



ソラとクレスがヤマトにギャーギャー吠えるが、ヤマトは受け流すように笑っていた。







それは、のどかで楽しい光景―――





きっと『彼ら』も目指していた光景なのだろう。









その光景が世界中に広がりますように――――





執筆ペースをなんとか一ヶ月一話にしないと……(汗)


感想、評価お待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ