アレクサイトとアレクシア2
豊穣の神アレクサイトは男神、戦の神アレクシアは女神である。
双子で生まれた2柱は、元々はアレクシアが豊穣の神になるはずだったのだ。
「嫌、やらない」
「どうして?」
ルクレーシアの問いかけに、アレクシアはうつむいて答えない。
「……母様は、兄上や姉上には好きに選ばせたのに、何故私達は決まっているのですか?」
「豊穣と戦いの神は必要だと、あの子達が言ったのです。自分達が決めた後にね…。あなた達がどうしても嫌ならば、新たな神を産み出さねばならないでしょう。そうね、それも、あの子達にやらせましょうか」
ルクレーシアは考え深げに小首を傾げた。
「ううん。私も必要だとは思うの。新たな神に役目を振るよりも、私達がやるべきだと思うの。──でも」
アレクシアは言葉を切った。思い悩むアレクシアを心配そうに見るアレクサイトは、自分の考えを口にする。
「う~ん。兄上や姉上が自分で決めた役目も、僕達には出来そうにないものね。豊穣と戦いは、世界には必要。僕はやっても構わないけど、シアに任せるよ」
アレクシアは眉をしかめ、思い悩んでいる。
「シア、ならば何が問題なのですか?」
ルクレーシアは問いかけた。何を思い悩んでいるのか聞かせて欲しい、とルクレーシアは優しく微笑んだ。
「だって母様! 絶対に言われるもの。豊穣の女神のくせに、胸が残念だって!!」
「それが理由なのですか?」
上の姉達に比べれば、確かに寂しい胸元である。豊かな実りを与える神には、豊かなイメージがつくだろうが、だからと言って…。ルクレーシアは、アレクシアに目をやる。
「シアはそこが可愛いのに」
そう言って胸に触れたアレクサイトを、アレクシアは容赦なくどついた。
「サイの馬鹿!!」
「女性に失礼ですよ。サイ」
「ごめんね」
アレクサイトは悪びれずに笑っている。
「そうだ母様! 私が戦いの神やる! それならいいでしょ?」
「そしたら、僕が豊穣の神になるの? ……うん。別に構わないかな? 戦いって、苦手だしさ」
「あなた達は……。それでいいなら、構いません。好きになさい」
新たな神を産み出すよりは、よっぽどいい。ルクレーシアは思った。
アレクサイトは戦いが苦手と言ってはいるが、純粋な強さで言えば、兄弟随一である。
力だけで言うならば、長兄には一歩劣るが、戦いのセンスがずば抜けている。長兄と戦って勝てるのは、アレクサイトだけだろう。だが、性格が優しく、どこかおっとりしているので、争い事が嫌いなのだ。確かに戦いの神には向いていない。それに比べるとアレクシアの方は、喧嘩っ早く、豪快な性格なので向いているだろう。
「お互いに力が必要になったら、助け合いなさい。それを条件として許可しましょう」
「やった! ありがとう。母様」
アレクシアは満面の笑みで母に抱きついた。
このようなやり取りがあったと、人界で知る者はいない。
兄妹神の中で戦にたけたアレクシアが戦を。
世界を巡り、植物を、自然を愛するアレクサイトが豊穣を司っている事に、疑問を持つ者はいなかったのである。
この次のお話は、いつになるか未定です。
いくつか設定はあるのですが、他のお話を優先しようと思っています。
突然投稿するかもしれませんが(^-^;