アレクサイトとアレクシア1
アレクサイトとアレクシアは、同時に産み出された双子神である。
だが、人々は男神であるアレクサイトを兄、女神であるアレクシアを妹と位置付けた。男である、ただそれだけを理由に兄と位置付けるとは、何と馬鹿らしい事か。
アレクサイトは思ったが、「そっか、私が末っ子になるのかぁ。サイはお兄ちゃん。ふぅん」
そう言って上目使いに見上げて来るアレクシアは愛らしく、まあいいか、と受け入れる事にした。
末に産まれた双子を、兄姉はたいそう可愛がった。
奔放な輝きを放つ長兄アダルバートは、力の使い方を教えた。
「サイ、シア。この岩を割れるか?」
アダルバートはこの岩と言ったが、巨岩であった。天を突くほどに大きく、岩ではなく、山ではないだろうかと思える。
「これ? やるやる!」
真っ先に拳をぶつけたのは、アレクシア。
「えいっ!」と言う掛け声で、ぺちっ、と岩に当てた拳は微かに岩を削った。
「あれ?」
「お前な…。構えもせず、力も籠めず、割れるわけがないだろうが! ──サイ」
「はい」
アレクサイトは、腰を軽く落として身構え、体に神気を巡らせた。
「はあぁっ!」
ドンッ!
アレクサイトの拳は岩を削り、中程まで穴を空けた。
「うっわぁ! サイ、すごいね!」
アレクシアは手をたたいて喜んでいる。アダルバートはアレクサイトの頭をくしゃりと撫でた。
「惜しいな。俺は割れるか、と聞いただろう? 見てろよ」
アダルバートは構えも取らず、瞬時に神気を纏う。トンッ、と軽く地を蹴ると、巨岩の上まで飛び上がる。
ゴガッ!!
凄まじい音とともに巨岩が割れ、真っ二つになった岩は左右に分かれて倒れ、地響きをあげた。
アダルバートは、手刀で巨岩を割いたのだ。
流石は長兄、と双子は尊敬の眼差しで見上げ、拍手をした。
ふふん、と自慢気なアダルバート。そのアダルバートを、割れた岩を両手で抱え上げ、背後から殴りつけたのは、長女のヴァレンティナであった。
「……乱暴者。サイ、シア。お母様がお菓子焼いたの。…行こう」
「わぁい!」と、即座にヴァレンティナの腕にしがみついたアレクシア。アレクサイトは、地に伏したまま動かないアダルバートを気の毒そうに見たが、何も言わずに後に続いた。
冴え冴えとした光を纏うヴァレンティナは、淑やかに見えるが、長兄にだけは苛烈であった。




