表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

創世神話

いつから意識が芽生えたのかも分からない。気がつくと『ここ』に存在していた。

何もない虚空。


自分の名は?

と、自らに問いかけてみる。自分の内から『ルクレーシア』と答えが帰ってきた。


ただ、ただ、虚空を見続ける時が流れ、ルクレーシアは飽いた。




両の手を打ち合わせると、明るい光の珠が産まれた。比べると少し暗い光の珠も。

自分以外の存在に、ルクレーシアは微笑む。


自らの母が喜んだことを感じてか、2つの光の珠はぶつかり合い、小さな光をばらまいた。

小さな光は星々へと変わり、虚空で光り始める。



次第に光に満ち始めた虚空。


最初の珠は、少年と少女の姿を取る。

燃えるような輝きを放つ、黄金の髪と緑の瞳の少年。

少女の黒い髪と同じ色の瞳は、静謐な輝きを放っていた。


自らを母と慕ってくれる存在が愛おしくなり、ルクレーシアは新たな光を産み出した。


水色の珠。次いで、赤い珠。

そして、同時に産み出したのは茶と緑の珠。


その頃には、最初の2人は大人の姿になっており、新たな弟妹の世話をしてくれた。



ルクレーシアは大地を作った。

子供達が走り回れるように。


海や川を作った。

子供達が泳げるように。


空を作った。

子供達が飛べるように。



子供達の笑い声が大地に響く。


地に緑が広がり、獣が駆ける。空には鳥が、水には魚が。





もうそこは虚空ではない。

ルクレーシアは世界を創造したのだ。




──お友達が欲しい

そう言った娘の願いをかなえ、自分の姿を模した生き物を作った。


知恵のあるその生き物達は、子供達の良き友となった。


だが、年老い、代を重ねると欲が生まれ、争いを始めた。



ある日ルクレーシアは子供達を集めた。

長男の太陽の神、アダルバート。

長女の月の女神、ヴァレンティナ。

次女の水の女神、エドウィナ。

次男の火の神、グスターヴァス。

双子の風の神と土の女神、アレクサイトとアレクシア。



ルクレーシアは大地に住まうのをやめ、神界に移動すると話した。

地上には関わらないと決めたのだ。



──お母様。人を、どのように導けばよいのでしょうか?

エドウィナが問うた。



あなた達に役割を与えましょう。その力を使うのも、使わないのも、人にかかわるのも、かかわらないのも。あなた達の自由です。


与えるとは言ったが、子供達の好きな役割を選ばせた。




太陽の輝きと、その輝きにできた影を司るアダルバートは『生と死』を。

静謐な美しさを纏い、邪悪を嫌うヴァレンティナは『正義と法』を。

温かな優しさをたたえ、すべての生き物を愛するエドウィナは『癒し』を。

物を生み出し、新たな技術を模索する姿勢を愛するグスターヴァスは『鍛冶』を。

奔放な風と共に、世界を巡るアレクサイトは『豊穣』を。

地から揺るがず、戦いにたけたアレクシアは『いくさ』を。



子供達は、それぞれが眷属を生み出し、世界を守る力とした。

新たな神々が生まれる。


だが、ルクレーシアを最高神とし、世界の主たる神は子供達6柱である。




眷属である精霊は、子供達の母を慕う気持ちを知って、神界と人界を思うがままに移動する。

新たな役目を与えられた神は、それぞれの司るものを守護した。



子供達は、神界で暮らす者もいれば人界で暮らす者もいた。


ルクレーシアは時折人界を覗くが、手は出さず優秀な子供達にすべてを任せた。





──時は過ぎる。


人界に生命があふれていた。

神界は光と緑に満ちあふれ、精霊と妖精が生き生きと遊ぶ世界になっていた。





ルクレーシアは飽いてた。


その全てが手を離れ、する事がない。

光と命が周りにあるのに、感じられない。

気持ちが、虚空にあった時の自分に戻るのを感じていた。


──変化が欲しい。


ルクレーシアは、両の手を打ち合わせた。


光の球が生まれる。

ルクレーシアの迷いを体現するかのような、くすんだ鈍色にびいろの球だった。


鈍色の髪と赤い瞳を持つ少年、エリファレットは『遊戯』を司る神となった。



神界を出て遊ぶエリファレットを見て、ルクレーシアは笑う。


子供達は、新しい弟の悪戯に眉をひそめたが、母の嬉しそうな様子に何も言えなくなり、後始末に奔走する事となった。




──飽いた。


母が言い出す事が、世界の終わりの始まりであろう。

飽きないように、この愚かしくも美しい世界が続くように。

子供達は願っている。




7柱の神を、この地に生きる者は崇めている。


アダルバート。

ヴァレンティナ。

エドウィナ。

グスターヴァス。

アレクサイト。

アレクシア。


そしてエリファレット。


神々へと、願いを叶えて欲しいと祈る。




地に降りる事のない創造神は、人々の記憶から次第に薄れて行った。

今では、神職につく者が細々とその名を伝えるばかりである。


世界の命運を握るのは、ルクレーシアだというのに。

知ったから、祈ったから、どうなるものでもないが。





──飽いた。


その時、ルクレーシアは何をするのだろうか。


恐れを抱くのは、7柱の子供達のみであった。




私が書いている異世界ものの神話です。

あちらとは時が違うので、ルクレーシアの性格が違います。


向こうは読まなくても大丈夫! 主人公も、こちらには出て来ませんし…。

もし気が向いたら覗いてみて下さい。


『羞恥心の限界に挑まされている』

http://ncode.syosetu.com/n4590cy/

異世界転移もの、ファンタジー、乙女ゲーム要素ありのコメディです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ