026【魔法】
「ヘレも体作りがある程度出来て来たからな、そろそろ俗に魔法って言われている技術の扱い方を教えていくか」
「魔法、ですか? あぁ、育真さんが時々行っているやつですよね?」
「ああ」
朝食を食べながら育真はヘレにそう伝えていく。朝食はシチューとパンにハムエッグと簡単な物でありヘレはコクンと口の中に入れた食べ物を呑み込んでから育真に尋ね返していく。
「あれも色々あってな、体が出来てない自滅しかねないから今まで教えて来なかったがそろそろ大丈夫だろうと思ってな」
「そうなんですか、魔法ですか……何かワクワクしますね」
「まぁ、そうだよなぁ」
楽しく食事をとりながらそんなやり取りをしていく。最後に水で口の中をゆすぎ、二人は軽く体操をしながら体を解し外へと出て行く。快晴、空は雲一つない青い空。雨は一週間に一度、決まった曜日に決まった時間に降るのみでそれ以外は常に快晴となっている。
これも神の力の一端なのだろう、時折育真はそんな事を考える。直ぐにその考えを思考の端へと追いやりながら視線を前へと戻し家の少し離れた空地へと二人は辿り着く。二人がよく訓練をする場所だ。
「ヘレは魔法と言われている技術はどんな物だと思う?」
「えっと、魔法と言われるくらいですから魔物がつかう力か魔力と言われる物を使う力とかでしょうか?」
「まぁ文字を見るとそんな感じの力だよなぁ、でも実際は全くそんな物は関係してないんだ。というよりも魔法とは呼ばれているけど実際はあれ魔法と言っていいのか良く解らない代物だからな。集え集え空気の水よ、集いてこの手に具現せよ」
育真はそんな話しを始めると、実際にとそれを使って見せる。その呪文を唱えると差し出した掌の上に水が現れその手を濡らしていく。
「ヘレも見たことがある魔法だろう? 単純に水を出すだけの魔法だ。ちなみにこの世界には魔力何て言う不可思議な物はないからな? モンスター共は高レベルになってくればこの手の力を自然に俺達みたいに呪文を必要とせずに使ってきたりもする、これから下にもぐれば潜る程気を付けて行かなければいけない」
「はい」
「さて、この魔法と呼ばれる技術だが、実際の所は世術、もしくは神術と呼ばれる呼び名の方が正しい技術なんだ。この世界に呼びかけ世界にあるその自然がその声に従いそこに姿を現していく、元はそんな事が不可能だったのはヘレも知ってるだろうが、あの神様だかってのが現れてから可能になったみたいだからな。あれが何かしたんだろう」
「世界に呼びかけるですか?」
「ああ、だからと言ってただ唱えた所で意味がない、ヘレ試しにさっき俺が言った言葉をそのまま言ってみろ」
「あ、はい。集え集え空気の水よ、集いてこの手に具現せよ」
ヘレは育真に言われた通り同じように繰り返していくがそこに何かが現れたりすることはなかった。
「な? この技術を使うにはその言葉に力を、想いとイメージを載せながら唱えないといけない。と言っても言葉に力を乗せる何てのは良く解らんだろ?」
「えっと、はい」
「簡単に言えば怒った時の怒鳴り声、悲しい時の泣き声、どうしようもない理不尽に対する救いの声、そういう時に上げる声が力のある、想いが載せられた言葉となっている。怒った時に怒鳴れば怒鳴り終えた後疲れるだろう? 泣いた後も疲れて寝てしまったりする、そういう声というのは代償が必要な物になるんだ」
「そうです、ね」
ヘレはつい最近にもそれを実際に経験しているが故にそれを思い出しながら頷いていく。育真は軽くすまんと謝りながら説明を続けた。
「それでだ、この呪文を唱えると呪文のイメージと内容によって酷く体力と精神力が持っていかれる。これが足りていない場合は気絶したり下手すれば死ぬ可能性もある。便利な力ではあるが同時に危険な力でもある訳だな。まぁ直ぐに使えるようにはならないと思う、だからまずは自分がどういう言葉ならどういうイメージを抱いて唱えられるかというのを身に着けていく事からはじめるか」
「えっと、どういう事ですか?」
「ああ、俺の場合は集えという言葉で例えばさっきの水だ、空気中にある水を集めてそこに大量の水を出すというイメージであの呪文になっている、他の奴等だと地下に存在せしとか空より来るとか色々自分がイメージできる内容で呪文が変わるんだ。まぁ、慣れるまではかなり頭が痛い中二病の様に思えるだろうが、必要な事だからなやるしかない」
「……そうなんですか」
「そうなんだ。それでだ、必要なのは自分がどういう場所からどういう事から持ってこれるかという最初のそれを集めたり持ってきたりするための場所や方法のイメージの言葉、続いてそこから何を集めたり持ってきたりするかの物質や効果のイメージの言葉、最後にそれをこの世界に表していく締めの言葉だ。この三つを最低限必要とし、その中で威力や効果を上げるには呪文を重ねていくのが手っ取り早い。俺の場合は集え集えと二回言っているな? これが量をもっと必要とする場合は更に増やしたりする」
「解りました、ただ、どうしても直ぐにパッとは思いつかないんですけど」
「まぁその辺りは自分で言いやすくやりやすい言葉を探していくと良いさ、今は取りあえず急がなくても良いから水を出すというイメージを考えながら思いい浮かぶ言葉を探していくぞ」
「はい」
そして二人はそれから呪文の言葉を探しながら時間を過ごしていく。傍から見て中二病のカップルにでも見えるような光景で近寄りがたい、近寄りたくないと感じさせる光景だが真剣なヘレにも、慣れてしまった育真にもそんな事は知る由もなかったのであった。




