025【ラストホープ】
ゼストの家を出て二人は町の中心部へと足を向けて行く。
「何か買いたい物とかあるか?」
「今は特に何も思い浮かばないです」
「そうか、なら適当に店を冷やかしながら見て回るか」
「はい!」
二人はそのまま中心付近の店が立ち並ぶ一角を色々と見て回る。服や本、小物等の雑貨類、食器や食料品等楽しそうに笑い合いながら通り過ぎて行った。店の前等の看板や呼び込みの声にラストホープで一番安い! 今こそお買い得のチャンス! 等色々と元気な声をも上がっている。
「それにしても賑やかだな、少し小腹がすいたし何か食うか、んー」
「あ、あっちにクレープが売ってますよ」
「おっ、ならそれにするか」
ヘレの案内の元に屋台でクレープを売っている店に辿り着きそれぞれクレープを買っていく。
「育真さんはチョコクリームですか、では私は苺クリームあたりにしてみますね、後で一口だけ交換しませんか?」
「おう、良いぞー」
屋台のおっちゃんがデートってか? 羨ましいねぇ等とちゃかし、ヘレが顔を少し赤くしながらクレープを受け取る。小さな口でもぐもぐと食べて、美味しいと呟きながら育真さんもと差し出してくる。
「予想以上に旨いなぁ、そっちのも旨いし、こっちも中々だ。どうする? 残りでよければだがいるか?」
「あっ、良いんですか? ありがとうございます」
育真はそれを気にした様子を見せずにヘレから一口受け、自分のクレープを半分程食べたあたりで残りを食べるか? と尋ねて行く。ヘレは少し頬を赤く染めながら嬉しそうにそれを受け取っていった。そして少し食べ口を見た後にそっと口を付けながらもぐもぐと食べ、やはり美味しいと言葉を漏らす。
「こういうの、楽しいですね」
食べ終わり、同じく屋台で買った飲み物を飲みながらヘレはぽつりとつぶやく。視線はどこか遠くを見るように空を見上げていた。
「だな、偶にはこういうのも悪くない」
そして育真はそんなヘレを見て笑みを浮かべながらそう返事を還す。そしてカラオケとかは好きか? 等と尋ねればカラオケって何ですか? 等という言葉が返ってきたり、その中身を説明すればそんな物があるんですかと興味深そうな表情を浮かべて行く。
「まぁっていっても今ここにあるのは持ち出してきた僅かな機械の複製で、新しい曲とかはないし入ってる曲自体もすくねぇみたいだけどな。ヘレはカラオケじゃなくて歌自体は嫌いか?」
「いえ、歌は多分好きです。時々聞こえる歌とか凄く綺麗で元気になれたりしますから」
「そうか、カラオケを知らないってのは驚いたがそれなら音楽テープをいくつか買って帰るか。カセットラジオと一緒に」
「こうして町とかに流れてる歌以外を聞くのは此処に来てから初めてです、ふふ、楽しみです」
二人はそんなやり取りを交わしながら音楽のカセットテープを買い、ヘレはそれを楽し気に抱えながらどんな歌なんでしょうとワクワクした様子を見せている。見た目相応の態度に見えそれは見ていて微笑ましい印象を与えて行くだろう
育真も同じくそんなヘレの様子を見ながら何時までもこんな風に笑っていてくれると良いなと考えながら家へと帰っていく。
「買ってきたのは明るい系統の歌と静かな系統の歌の二つだな、気に入ると良いな」
「きっと気に入ります。だって育真さんが選んでくれたものですもの」
育真の言葉に振り返ったヘレの表情は満面の笑みと言っても良い可愛らしく美しい笑みだった。そうだと良いなと育真はそれに頷きながら最後、日が暮れ始める時間になり今日の夜の食事の食料品を買い込んでいく。
「今日はカレーにするか、何のカレーが良い?」
「えと、そうですね、普通のポークカレーが良いです。あの、それでお願いがあるんですけど」
「ポークか、肉はやっぱりたけぇなぁ。ってなんだ?」
「はい、あのですね、私にも料理を教えて貰えないかと、何時までも育真さんに作って貰ってばかりですと申し訳ないですから」
「あー、そうかヘレは料理を作れないのか」
「多分、ですけど。今まで作ったことが一度もないので解らないです」
「ふむ、ならカレーは作りやすいし簡単だから良いな、ああ、ならついでにヘレ用のエプロンとかも買って行かないといけねぇか、包丁やまな板も用意しねぇとな」
「何だか色々と手間を増やしてしまってすいません」
「なぁに、料理をこれから作って貰えるようになったりすれば手間が減るし、何より料理は出来て損はねぇからな。野営の時だって料理ができりゃ少しでもマシな食い物に出来たりもする」
「頑張ります!」
むふんと気合を売れるように手を胸の前で握りしめる。育真はそれからなるべく材料が少なく最低限のカレーの材料と、簡単なきって盛り付ければ完成する類の野菜類を買い込んでいく。近くの店の雑貨屋でまな板を買い込み、包丁を見たが余り良い物がなかったので帰ったら後で育真自身が作るから今日の所は俺のを使ってくれと伝えて行った。
「育真さん鍛冶も出来るんですか?」
「修繕と本当に簡単なナイフやこういった包丁、鍋程度だがな」
「本当に凄いですね、何でも出来て」
「どう、だろうなぁ。手を出し過ぎてどれもこれも中途半端、凄いって言えるのかね」
「凄いですよ、だって私はそのどれも出来ません。私も育真さんの弟子何だから色々と出来るように頑張らないと、あの、その時私も見ていて良いですか?」
「まぁ問題ないぞ、修繕位は出来るようになっといた方が良いからそっちは教える予定だったが、鍛冶までは教えなくても良いとは思ってたんだがな、興味があるなら俺が教えられることは教えるさ」
「はい! お願いします」
頑張るとヘレは笑い、育真は俺と同じように中途半端にならない様にしっかりと鍛える所を伸ばせるように鍛えてやらないとなと考え、二人はそのまま帰途へとついた。
ちなみに、初めてのカレー製作は特に何事もなく問題ない出来となっていたが、少しだけ焦げ付いたりしていたのを見て今度はこんな失敗もしません! とヘレはそれから料理を色々と覚えて行くのであった。




