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崩壊世界の最後の希望  作者: 榊原
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024【新調】

「さて、それじゃあとりあえずヘレの防具を新調しにいくか」

「お願いします」



 迷宮から戻った翌日、育真とヘレは二人町の中を歩いていた。目的の場所を知っているのは育真であり、ヘレはその後ろをちょこんとカルガモの子の如くついて行っていた。



「管理局の広間での買い物ではないんですか?」

「ああ、オークが出て来るならそろそろ専用の装備を揃えて行っといたほうが良いからな。まぁまだ急ぐ訳でもないが早くて困る事もないしだろう?」

「専用の装備?」

「ああ、オーダーメイド製の装備だな。今までの広間に討ってた数打ちの品じゃなくてヘレの為だけにサイズから重さ、動き方を見ての調整等をしっかり整えた形の防具や武器だな」

「あの、あれば嬉しいとは思いますけど、高くはないんですか?」

「そりゃ高いさ」



 育真とヘレはそんなやり取りをしながら町の中心から少し外れたカンカン、ギィギィ、キィンキィンと金属が打ち合う音、何かを擦る音、機械どうしが擦り合う音、何かを縛る音等騒がしい一角に辿り着く。



「まぁ高いが、それだけの価値はあるからな。武器と防具に金を掛けなきゃ先にいけばいくほど生き残れなくなる。今回オークをあれだけ倒せたってのも幸いだったのかもしれないな、あれのお蔭で最低限必要な金は足りそうだしな」

「そう、なんですか? 私は良く解りませんけど、育真さんがそういうのであればそうなんですよね。私専用の装備ですか……ふふ、少し楽しみです」



 周りをキョロキョロと見回しながらヘレは育真の言葉に頷いていく。



「ああ、ヘレも一応ちゃんと道順は場所は覚えておいた方が良い、これから装備の修繕とか自分達でどうにもならない状態になったら頼みに来ないといけなくなるからな」

「解りました」



 火花が散る光景、黒い、白い煙が立ち込める空間、汗が噴き出るかと思う様な一角、そんな場所を二人は通り抜けていく。そして辿り着いたのはこじんまりとした鉄で出来た家。育真はその家に近づくとガンガンと乱暴に扉を叩き奥から「誰だ~?」という様な返事が返ってきたのを確認して開けていく。



「よぅ、久しぶりだなゼスト」

「ん? おぉ! イクマか! 久しぶりじゃねぇか! どうした突然って、おぉ? その後ろのちんまいのは何だ?」

「……ヘレ=アリスティアと申します、育真さんに師事し迷宮での事等を教えて頂いている者です。以後お見知りおきを」

「おっ? お、おう。イクマ、このちんまいの何かすげぇな」

「おう、そうだな」



 扉を開けた先には鉢巻を巻いた禿げ頭の分厚い傷だらけの肉体に包まれた筋肉質の男性が槌を握って育真とヘレを見つめている。その肌のあちこちに火傷の跡が目立ち、そうじゃなくとも酷く焼けた色の肌をしている身長が育真より頭半分はでかい男性がゼストである。

 ゼストは顔を綻ばせ育真を歓迎し、その後ろに立っているヘレをみて首を傾げながら尋ねれば、ヘレは少し不機嫌そうにと育真には感じられる態度と声音で挨拶を交わしていく。ただゼストからしてみればそこに感情の色が見受けられず、不機嫌なのかそれが素なのかが良く解らず困惑しながらその言葉を受け取った。



「(ちんまいって何なんですか、確かに小さいですが、人が気にしているとは思わないんですかね)」



 等とヘレは内心怒りながら、それでも育真の知り合いでそれなりに親しい相手なのだろうと思いその考えを表に出そうとはせずに、挨拶を交わしたのだ。育真は何となく想像がつきながら、苦笑を浮かべながらそれにただ頷いた。



「私の事はアリスティアとお呼びください、ゼストさん」

「おう、了解だアリスティアの嬢ちゃん。んで育真よその嬢ちゃんをつれて来たって事はその嬢ちゃんの装備か?」

「ああ、頼めるか? 前回の迷宮探索で六層までいったんだがそこでオークに合ってな、装備がボロボロになっちまったからこの際にこれから長く使う装備を整えておこうと思ってな」

「なるほど、ってかその嬢ちゃんもうオークを倒せるのか?」

「ええ、一匹であればですけど。二匹でも何とかなるかもしれませんがかなり危ない事になると思います」

「俺が色々仕込んでる最中だな。でもただのナイフでオークを倒せる程度にはなっているから装備を作って貰って持ち腐れになるって事はねぇよ」

「ほぅ、なら良いがな。育真の頼みだ、取りあえず作ってやるさ。んで必要なのは何だ?」

「メイン武器がナイフ、それを二本。予備の補助ナイフを五本、投げナイフを十本、チョーカーと額当て、全身は身軽に動ける鉄繊維の皮装備あたりだな。靴は俺と同じような感じで頼むよ」

「OKOK、嬢ちゃんちょいと来てくれ」

「はい」



 ヘレはただ二人のやり取りを聞いていた。育真が自分の事を良く考えて、良く見て、そして知ってくれているという事を喜んでいる最中、そう呼びかけられヘレはゼストに近づいていく。ゼストはそのままヘレを見回し、手や足、腕や太もも辺りを触っていく。

 少し嫌な感じではあったが、育真が何も言わない事もありヘレはただそれを受け入れ成すが儘になっていく。それはすぐに終わり、次に軽く動き回ってくれと言われ外に出て育真と軽い手合わせをしていく。一時間ばかり動き回り、軽く汗が出て来た辺りでゼストからの声が掛かり再び中へ入っていった。



「コーヒーしかねぇが飲んでくれ。まぁ大体わかった。にしても予想以上に動けるんだな嬢ちゃんは」

「だから言っただろうが、俺が仕込んでるって」

「いや、聞いたがだからってその年の嬢ちゃんがあれほど動ける何て思いやしねぇよ」

「あの、先程から嬢ちゃん嬢ちゃんと言われますが、私はこれでも二十四です、そう呼ばれる年でもないので出来ればアリスティアと呼んではいただけませんか?」



 黙って我慢し続けていたが、とうとうぽろっとヘレはそうゼストに声を上げていく。言われたゼスとは首を傾げ育真を見れば、苦笑しながら頷いているのを見て驚いたようにヘレを見る。そして笑いながら悪いなと声をかけながらそれでもとヘレを嬢ちゃんを呼び始める。



「まぁ確かに二十四って聞くとそうかも知れねぇが、俺にとっちゃやっぱり嬢ちゃんは嬢ちゃんだって話しになるんだよなぁ。悪いな、癖何だよ、俺より一回り以上は年が若い奴等をそう言っちまうのは、勘弁してくれよ嬢ちゃん」

「ヘレ、すまんな。此奴は口が悪いし頭も良くないし要領も悪い、だが悪い奴じゃないんだ。それに鍛冶や細工、革の扱いに関しては抜きんでて腕がある、だから我慢してくれ」

「……解りました。ですが、一回り以上、私よりですか?」



 ゼストの見掛けはまだ若い、見た所精々二十半ばの一番肉体に油が乘り始めるころ合いに見えるだろう。その言葉を聞いて育真をゼストが見る。育真は軽く首を振る。



「ああ、俺はこれでも五十三だからな。まぁ見えないだろうが人には色々あるって訳だ。嬢ちゃんがその見た目に反して二十四に見えない様にな」

「そう、ですか。確かにそうですね、失礼しました、申し訳ありません」

「気にしてねぇよ、俺から言い出したことだからな!」



 ヘレは二人のやり取りを見て、少しだけ心が痛み、それを表情に出すことなく言われた事に返事を返していく。確かに自分もそうみられない外見をしている、ならば相手もそういう事があってもおかしい事ではない、それを言い出したら今自分が不満を口にしているのに不躾にも程がある、そう思って謝罪をしていく。



「良し、取りあえずゼスト、どれくらいで出来る?」

「今は特に他の奴等から依頼も受けてねぇからすぐに始められるからな。一週間程度時間をくれ」

「了解、頼むわ」

「任せろ」



 短いやり取り、ただ、その二人の間には確かな信頼関係が成り立っていた。



「(羨ましい、な。私も何時か育真さんとあんな関係になれたら……)」



 それを見てヘレには羨ましそうに、眩しそうにその関係が見えて行く。そんな事を考え、ならもっともっと頑張って近づいて、そうなって見せると新たに思い直す。



「さて、悪いがこれから早速始めるから育真達は一週間後にでも改めて来てくれ」

「あいよ、んじゃ頼んだわ、行くぞヘレ」

「はい。ゼストさん宜しくお願いします、それでは失礼致します」

「おう、任せておきな、最高の装備を作ってやるさ」



 そんなやり取りをしてゼストの家を後にする。育真の背中を見ながらヘレは誓う。私も絶対にあの位置に、そしてその上まで育真さんに近づいてみせるのだと。

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