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崩壊世界の最後の希望  作者: 榊原
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023【帰宅】

 ヘレがそれから落ち着いたのは十分もかからなかった。先程よりも短い時間で落ち着きを取り戻し、目元を袖でごしごしと拭い顔をあげ笑みを浮かべる。



「育真さん、色々ご迷惑をおかけしました、ごめんなさい。そして、ありがとうございます!」

「おう、落ち着いてくれて良かったよ」



 育真はそう言いながらヘレと離れ、改めてオークの解体へと移っていく。ヘレもそれに習いオークの解体を始め、数が多いだけありそれなりに時間をかけながらそれを終えて行く。マジックリングに入る量にはまだ少しくらいは余裕があるが、それもあとわずかと言った程度。



「今回は色々悪かったな、俺も油断してないつもりで気が抜けてたみたいだ。ヘレにはすげぇ大変な目に合わせちまったな、その代わりと言えるかは別だがそれ相応には今回の稼ぎはなるだろう。帰ったら少し豪勢に騒ぐか」

「そんな、育真さんが悪い事なんて何もないです。私が気づけなかったのが悪いんですし、もっと私頑張ります! もっと育真さんの役に立てるように、足を引っ張らない様に頑張りますね。そして豪勢にですか? えっと騒ぐというのはどういう事をするんですか?」



 互いにそう言い合いながら帰途につく。二人は警戒し合いながら周囲に気を配り、音を匂いを風を肌で鼻で耳で感じながら進んでいく。



「まぁそうだな、やりたい事でもあるか? ボーリングがしたいとかカラオケに行きたいとか、ケーキの食べ放題が良いとか買い物に行きたいとか」

「えと、私は特にやりたいって事は思い浮かばないです。育真さんと一緒にいられれば嬉しいですし」

「お、おう、そうか。おう、取りあえずそうだな、今回ので防具もボロボロになっちまったしな修繕するにもちと手間がかかりすぎるか。ならそれを買い替えたりして帰りに少し買い物でもして最後にあそこによるか」

「はい、育真さんにお任せします、楽しみです!」



 ポリポリと首元を書きながら育真は内心で小さく溜息を付く。少しはマシになってきたと思っていた依存傾向がまた酷くなっていると感じて。ただ、こんな事があったばかりだし仕方ない事かとも考え表には出さない。

 帰り道でも何も出会わないという事はありえない、それなりに距離があるのだ、三度ほどオークとの遭遇を果たし、最初の二回は育真がさくっと始末してみせ、最後の一回はヘレが自分からやらせてくださいと言いだし挑んだりしていた。

 微かに震える腕と足、ヘレは自分がオークを見て怯えている事を感じざる終えなかった。育真もそれを見て大丈夫かといつでも飛び出せる準備をしている。だがヘレはそんな自分の頬を良い音がなる強さで叩いた。白い頬が赤くなる。腫れあがるかと思う程の強さで叩いた痛みがヘレに襲い掛かるが震えが止まる。



「(怖い、怖くない。違う、怖いのは違う、こんな奴等が怖いんじゃない、育真さんと一緒にいられなくなる方がずっと怖い。きっと育真さんは私が戦えないとなると見捨てないでも迷宮には連れて行ってくれなくなる。此処で頑張れないならこれから先は絶対に無理だって私でも解る。頑張れ、頑張れ、頑張れ! こいつらは、怖いけど怖くない!)」



 少し痛みに息が漏れ、次の瞬間にヘレは震えの止まった腕にナイフを構えオークを睨み付けて行く。そしてオークがヘレに走り近づいてきたのと同時にヘレも飛び出しオークに接近していく。



「づぁ!」



 オークの棍棒で振り下ろされる一撃を衝撃の余波の範囲も予測しながら躱していく。僅かに抉れた地面の破片が降り注ぎヘレを汚していくがダメージはない。その後に足を踏み鳴らし近づいて来たヘレを踏みつけようと動くオークの攻撃を躱しながらヘレはその足のアキレスけんにナイフを深く突き刺していく。そしてその突き刺したまま手を離し回復しきれないようにした状態で新しいナイフを取り出しもう片方の足へと突き刺していった。

 悲鳴を上げながら前のめりに転び、両手で必死に身体を支えるオーク、ヘレはその倒れるのに巻き込まれない様に少しだけ距離を咄嗟にあけ、倒れ込んだ瞬間にまた飛び込んで抵抗できない状態のオークの首にナイフを突き刺していく。喉に一撃、太い血管があると思える場所を連撃で、何度も切りつける。

 抵抗し暴れるオークの攻撃を油断する事なくしっかりと視界に収め躱しながらそれをただ続けていく。それも流れていく血が多くなるごとにオークの動きは鈍くなり、ヘレの攻撃の頻度が上がっていく。

 ヘレがオークと向かい合って五分もしない戦い、それでオークは完全に息絶えた。



「ふぅふぅふぅふぅ、はぁっ! 倒せた、出来た、私は出来る、うん」

「おつかれさん、凄く動きが良くなってるじゃないか。油断さえせず、相手の動き方とかが解れば何とかなる物だろう? まぁそれもこれもちゃんと準備を整えていればだけどな。良くやった」

「はい!」



 育真にそう褒められ、ヘレは育真に向き合いながら元気に笑みを浮かべて返事を返す。そしてオークを再度解体しながらそれをマジックリングに収め入り口に辿り着き迷宮を後にした。迷宮から出たヘレの姿は中々にボロボロだ、だがそれを周りの人が気にする様子は見受けられない。

 慣れている光景、沢山の人がいる虹色のクリスタルの前の広間では、ちらりと育真とヘレの姿を商人達や同じ探索者が見た後すぐに興味を無くして視線を外す。そして近くにいる客や仲間に声を掛け話し合っていた。二人が周囲を軽く見回せば、同じようにボロボロの格好の探索者の姿も見えるだろう。

 それを傍目に二人は受付でお疲れ様でしたというねぎらいの声を受け、カウンターで素材の買取をして貰い金を受け取り外へと出て行く。外に出ればそこは既に夕方、赤い空が町を赤く染め上げていた。



「良い時間だな、今日はこのまま帰って明日出かけるか」

「はい、明日は楽しみですね」



 ニコニコと私服に着替えたヘレは育真の手を伺いながら遠慮がちにつかんで、顔を反らしながら帰りましょうと恥ずかしそうに声を上げていく。育真はそれを見て、手のぬくもりを感じながらこんなのも良いなと思いながらおうと返事を返しながら二人は自分達の家へと帰っていったのだった。

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