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崩壊世界の最後の希望  作者: 榊原
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015【ステータス】

 ヘレは長い長い、そう感じる三週間の訓練を乗り越えた。だがその割にはその外見は肌艶がよくなり、身体つきに張りも出ている。血が通っているか不安をあおる程青白かった肌の色は、白いがしっかりと血が通い血色がよさそうな様子も見せている。

 全て育真から与えられた食事をとり、適度とは呼べない運動をし、寝て(気絶)、また食事をとってを繰り返したお蔭だろう。この三週間ヘレは取りあえず余計な事をする余裕も考える余裕も殆どありはしなかった。だからこそ忘れていたのだ、自分がどれだけ成長しているのかが解りやすく確認出来るステータスの存在を。



「んじゃ明日から迷宮に潜る予定だが、まぁ正直それを信用しすぎるのもどうかと思うが目安にはなるから確認しとくが、現状のステータスはどうなっている?」



 育真が食事を終えて寝る前に確認する様にヘレに言葉を投げて行く。続けて正直あれは大雑把すぎて余り当てにならないから本当に目安にしかならないんだよなぁ等とぼやきながら。

 それにヘレはぽかんと口を開けて、あぁ! と思い出したようにごそごそと自分の服の裏からカードを取り出した。果たしてどこに入れていたのかと、一瞬気になったが気にしたら余計な事にしかならなそうだと思いながらその想いを育真は封じて行く。

 何やら暖かそうな温もりを感じさせるカードがすぐに出てきてヘレはそのカードを見つめた。育真はそれを見ながらカードに書かれている情報を読み取っていく。と言ってもヘレが見ているのがカードの裏で、育真が見ているのが表である。表に掛かれているのは大した情報ではなく、年齢を見て本当にその年だったのかと余り信じ切れていなかった情報を改めて信じながら住所が育真の家の住所になっている所をみて何とも言えない表情になる。

 このカードはどうやってこんな情報を拾っているのかと、そんな事を思いながら育真はヘレが確認するのを待ち続けた。

 ステータスの確認は基本はカードを使って確認出来る。簡単な自分の情報が掛かれた表、そして何も書かれていない裏があり、その裏に見よう見ようと思いながら視線を向ければ自分の今のステータスが見えるようになっているのだ。



「はっ?」

「ん、どうした?」



 いきなり驚いたような間違えてる物を見た様な表情になってヘレは口を大きく開ける。それを見てどうしたんだと首を傾げながら尋ねれば、あわあわしながらヘレがステータスカードを育真へと見せて来る。そしてそれを育真も見せられ咄嗟に反らすのを忘れ見てしまう事になった。



「って、アリスティア! ステータスは人には見せるな! ステータスを見て襲ってくる馬鹿も結構いるんだからな!」



 見てしまってからそう育真が減れに怒る。だがあ、すいません、でも! と慌てたままのヘレは見てくださいおかしいですこれ! と言ってみる事を強制してきた。仕方なく一度見たそれを改めて確認する様に溜息を付きながら育真も確認していく。



「筋力C、敏捷B、体力B、器用C、身体C、うん、やっぱりまだ低いが、一階を潜る分には問題ないステータスだろう?」



 そこに掛かれていたステータスを読み上げ育真は何を驚いているんだ? と首をかしげる。ヘレはそれを見て自分が可笑しいのかと一瞬怯むが、嫌、この首をかしげてる人が可笑しいんだと思い直し言葉を続けていく。



「わ、私は三週間前まで筋力はEでそれ以外はDだったんですよ!? 私だって迷宮の事は殆ど知りませんけどステータスのことくらいは少しは聞いてます! 普通DからCに上がるのだって数ヶ月はかかる、ましてやCに上がるとなったら年単位でかかるかもって聞いていました! それが、それがこれですよ! おかしいです、どうなってるんですか!?」



 捲し立てるように言葉を続けるヘレに育真はあぁと頷きながら落ち着けとヘレを静めていく。



「取りあえず落ち着けっての、アリスティアが聞いたそれは無理をしないで鍛えた場合、もしくは普通に訓練と課せずに迷宮に潜り続けた場合はって話しだろう。アリスティアは今回かなり無理をしながら限界ギリギリで鍛え続けたんだ、それなら多少早まって身体が出来てもおかしくはないだろうさ、と言ってもだ、これも神様だかってやつの恩栄に当たるのかね? 身体の大きさ小ささ、それに付随しての限界値、鍛えづらさってのが殆どなくなってるからこそだろうがな」



 そう言いながら育真は言葉にはしないが心の中で続ける。



「(食事もしっかりと体が回復しやすい物から作りやすい物で揃えたしな)」



 それを聞きながらヘレは、そうなのかな? と育真の言葉を信じて良いのかおかしいのかの間際で揺れ動く。前に教えて貰った迷宮に潜っているPT、自分の見た目を利用して潜り込もうとした中学生のPTメンバーのステータスを思い出す。全てDだった、自分と同じだしこれが普通なのだと思っていたのだ。

 その時の中学生やそれ以外の人、それからうわさ話程度等から色々聞きかじり大凡すてーすの値によってどの程度の能力なのかという知識自体は持っている、それを考えてやはりおかしいのではないかと考え始める。



「何より、PTで潜るっていうならD程度のステータスの能力でも人数がいればなんとでもなるが、一人で潜るかもしれないっていうなら一階に潜るにしてもその程度はステータスがなけりゃやっぱり危険だからな、出来れば全部B程度までは持っていきたかったが、流石に無理だったみたいだが、後は迷宮に潜りながら地道に頑張ってればレベルと一緒に上がっていくだろうさ」

「……やっぱりおかしくないですか?」

「おかしくねぇっての、何より、もしおかしかったとして何か問題があるのか? ステータスが高い分には良いだろうに」

「身体能力だけが高くなっても動き方が――」

「いや、だからそれが出来るようにまずその動き方から教えて行っただろうが。十全にちゃんと身体を使えるように鍛えたつもりだぞ? それとも今の自分の身体を動かすのに全力で動いたりするのに何か違和感があったりしたか?」

「……ない、です。なかったです」

「だろう? なら何も可笑しくないし心配もないだろう」

「そうですね?」



 いまいち納得がしきれない物の確かに言われてみればとヘレは何も問題が無いという事実に思い当たり頷いてしまう。訓練を思い出し少しだけ顔を青くしながらもその訓練で身体が動き過ぎて困惑した場面は思い浮かばない、むしろ動かなくて泣いた場面ばかりが思い浮かんでいく。



「(あれ? そう考えると余り凄い訳でもないのかな?)」



 そしてそんな思いが浮かび、そういう物なのかと納得してしまった。訓練でさえまだ真面に最後まで受けきれなかったのだからそれ程でも実際は無いのだろうと。そして慌て過ぎてしまっていた自分の行動を思い出し少し顔を赤くしながらすいませんと育真へ謝罪をしていった。

 それに何でもないという様に手を軽く振りながら育真が答え、ヘレはカードをまた服の下へとしまい込んでいく。



「うし、改めて確認も終わった訳だし、今日はしっかり寝て体力を貯めておけよ。明日からは一週間迷宮に潜りっぱなしで最後の詰めに入る訳だからな」

「はい、解りました」



 そして二人は部屋へと戻りベッドの中へと入っていく。今ヘレが割り当てられているのは客室でありそこに新しくベッドが作られていた。そのベッドに横になり、ヘレは明日からの一週間がどうなるのかと不安と訓練の厳しさに恐怖しながら目を閉じる。



「(どうか、どうか、少しはマシな訓練でありますように)」



 そう願いながら眠りに落ちたのだった。

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