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崩壊世界の最後の希望  作者: 榊原
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012【ヘレ=アリスティア】

「良し、少しは落ち着いたか?」

「はい、本当に色々ありがとうございます」



 食事を終えて水を飲み、一息ついた所で育真が話を始めた。それに少女も頷きながら深々と頭を下げた。その瞳にはいまだに警戒を滲ませ、育真を疑っている様子を見せている。



「取りあえず確認だがお前さんは一人で迷宮に潜っているのか?」

「はい、一緒に潜ってくれる者等いませんので」

「ん? そりゃ一体どういうことだ? お前さん位の年齢だと同級生がいるんじゃねぇのか? というよりも強制的にPT組まされたりもするんだろう?」

「……私、こう見えて今年で二十四になりますので、同級生と言える人はいないんです」



 育真のその言葉に、少し顔をこわばらせ、答えたくはなかったが助けて貰った人に嘘を言う訳にもいかないと言った様子で渋々答えを返していく。それに育真は驚き、そういう事もあるもんなのかと適当に納得しながら話しを続ける。



「そうだったのか、そりゃすまんね、まぁにしても、どう考えてもその格好と装備じゃ一人で潜るなんてぇのは難しいとは思わんかったのか? こう、いくら何でも誰かとPTを組もうと思えば組めたんじゃねぇのかって思うんだが」

「私の身長と身体つきを見てどう思いますか? 私自身自分でももう解っていますが男好きのする身体をしているとは思います、聊か身長は足りていませんがそれでもそういう対象として見るには十二分らしいですね。そういう人達でしたら声をかければ自分の身を引き換えに一緒にPTを組む事は出来たでしょう、ですがそれ以外の方ですと私の様な子供に見える女、見ただけで非力であることも解り、特別な能力を持っている訳でもない存在等誰もPT等組んで貰えませんよ、貰えませんでしたよ」



 少女は続けて言葉を続ける、知り合い等がいれば話は別だったんでしょうけどねと。少女の様子からこの少女には既に知人、友人の類が存在しないという事を伺わせていく。



「こう言っちゃ悪いんだが、その見た目を生かしてそれ位の年齢の奴等を一緒にってのは無理だったのか?」

「……私も、恥を忍んで試してみた事はありますよ。ですが、あの年齢の子供達は大人達、教師や親に強制的に決められたPTを組んでいる事が殆どです。極稀に自分達で決めた者達で潜る子達もいましたが、そういう子は自分達以外を入れるつもりのない子達でしたね。決められたPTを崩せないという事で一緒に組む事が出来ませんでした」

「お、おう」



 淡々と話しながらも少女は俯いて悲しそうにする。ならなんで迷宮に何て来たんだろうと育真は思いそれを尋ねた。この見た目と見た目通りの能力であるならば迷宮に潜らず違う仕事を割り当てられたりもしたのではないかと。



「出来れば、そうしたかったんですが、迷宮で怪我をする、もしくは元より動けない程の怪我をしている、病気で潜る事が不可能である、それ以外の健康に問題がない人は迷宮へ潜る事が強制されているみたいなんですよ。あれですね、ノアは大きいけれど小さいですから、人が増えすぎても困る、役に立たない助けを得られない者から少しずつ数を減らしていこうって考えなのではありませんか?」



 怪我をしている、病気である人も面倒を見て貰える人がいない限り、持っていたお金が無くなれば全て終わりですけどねと続けて少女は諦めたかのように答えていく。その辺りの事は育真も知らなかったようでそんな事になってんのかよとぼやいていた。



「私も、最後に両親が残してくれた貴金属のお蔭で今まで生きて来れてましたが、それも何時までも持つ物でもありません、こうしてぎりぎり、真面な衣服も売って残った衣服や布をつなぎ合わせただけのこんな物しかなくなって、どうしようもなくなり迷宮にいかざる終えなくなりって今に至るという事です」

「そうか、ってか少しいいか? もしかして金があれば迷宮に潜らなくても何とかなるのか?」

「え? あ、はい、少し多めにお金がとられますが、管理局に月に一回払う金額を多めにすれば免除して貰えます」



 育真はその答えを聞いて何で俺にそれが許可されてねぇんだよと、空を見上げる。そしてすぐに話しを遮って悪いと言いながら話を続けていく。



「もしかして、お前さんの持っているそのナイフ、何か見覚えがある様な気がすると思ったがゴブリンのやつか? そうするとお前さん何もそれまで武器を持ってなかったって事なんだろうがどうやって倒したのよ」

「はい、一匹だけのゴブリンを見つけて、穴を掘って、そこで転んだところを拾った木の棒で必死に殴り倒して手に入れたやつです」

「ほぅほぅ、まぁ真面な武器も無しで頑張ったもんだ」



 その答えを聞いて育真は少しだけ関心したように頷いた。色々と切羽詰まっているからなのか少女は必死に物を考え、それで生きようとすることが出来るのかと。死ぬか死なないかの瀬戸際で一番大事なのは生き残りたいと強く思うその心だからだ。



「(生きる事に必死で、生きていたいと強く思ってるんだろうなぁ。そうでもなきゃあの状態でまだ息を保って生き残れたりしねぇか)」



 育真はそんな事を考えながら焚火の火が小さくなったのを見て小枝を追加で入れていく。



「ヘレです。ヘレ=アリスティアと言います。先程からお前と言われるのも余り気持ちの良い物ではないのでお好きにお呼びください」

「おっと、そりゃ悪かったな。俺は折曲育真だ、取りあえず宜しくな」

「……宜しく、お願いします」



 どう返事をしたものかと考えた様子を見せたヘレで合ったが、少し考えた後に小さく息を吐き出し素直に宜しくお願いしますという返事を返す。それを見ながら育真は軽くか重くか解らないが人間不信っぽいなぁ等という事を考えていた。



「さて、飯を食って腹を満たしたらまた眠気があるだろう? 寝とけ、明日になったら入り口まで連れてってやるから」

「……流石にそこまでは、夜明け位まででしたら今まで寝ていたこともあって起きていられますので」



 バリバリに警戒している様子を見せて育真の言葉に首を振るヘレ、それに苦笑しながら言葉を続けていく。



「警戒すんのは解るし良いことだが、今の状態で無理しても良い事なんかねぇよ。お前っとと、悪い。アリスティアに何かするならアリスティアが寝ている間にどうこうしてるだろう? 此処から入り口までは歩いて帰るのに四時間はかかるんだ、寝ないで無理したうえで歩けるなら無理にとは言わんが、見る限り難しそうに見えるからな。信用も信頼も出来んだろうが我慢してくれ」

「そう、ですね。失礼な態度でした」

「いやいや、だからそれは良いんだっての、寧ろそれ位の方がこれからも良い位だ。人間一皮むけばどうなるかなんてのは出会って直ぐわかるもんじゃないからな。それで無理を言ってるのはこっちなんだよ。だから悪いな、無理をさせるが我慢して休んでくれ。そうでもしなきゃ俺がアリスティアを背負って帰るとかそういう手段を取らなきゃいけなくなる、嫌だろう?」

「っ、あの、嫌という訳では、でも、解りました。休ませて貰います」

「嫌な事位解るから一々こっちの態度を気にしなくて良いって、んじゃ取りあえず毛布はやるからあったかくして寝ときな」

「はい、あの、折曲さん、本当に色々ありがとうございます」

「おう」



 そしてそんなやり取りをしてヘレは少し距離を開けた場所で毛布に包まれ横たわる。警戒して育真の方へと神経を向けているのを育真は感じながらそれを気にせず焚火の明かりを保ち続ける。だがヘレの体力は一度起きて食事をとったとはいえ限界に近かった、すぐに警戒している余裕もなく眠気に襲われ眠りの中へと落ちて行った。

 すぅすぅと静かな寝息を立てるヘレを見ながら育真は小さく溜息を付く。



「こっちもこっちで大変なもんだ、仕方ない、仕方ない、仕方ない……ですませられるんなら俺は帰ってこれなかったんだろうな」



 眠りこけるヘレを見て育真は考える。俺はこいつを見捨てられるのかと、そしてすぐに答えはでる、無理だと。それが出来る位なら最初から助けたりなんてしていない、これがまだ一人で生きて行けるだけの力を持っているならそのままで大丈夫だった、助けてくれる知人、友人がいるのであれば任せる事もした、だが話しを聞く限りヘレにはその何一つないのである。

 育真は溜息をまたつくが、本人は気づいていないが少しだけその表情に生気が戻り瞳にただ沈みよどみ続けていたそれが元に戻り始めていた。



「(しょうがない、しょうがないな。助けちまったんだ、なら何とか一人でもどうにか出来るようになるまでは面倒を見るのが助けた俺の責任ってもんか、しょうがないなぁ)」



 そして日が開けていく。

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