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崩壊世界の最後の希望  作者: 榊原
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010【救助】

 心が誘い、迷宮に潜りってから一ヶ月。育真は再び迷宮へと一人足を踏み入れていた。自分から進んでという訳では決してない、管理局からの連絡と叱咤が合って初めて行動に移しただけである。

 そんな育真は到底やる気などある訳もなく適当に一回をうろつきながらゴブリンを倒してその持っていたナイフやボロボロのレザーアーマ―を剥ぎ取り集めて行く。



「(さて、大体三十体分も集めれば十分だろう。後十体分かぁ、面倒だがさっさと集めて帰るとするかね)」



 見つけたゴブリンの頭を矢で貫き、倒れたゴブリンからナイフを剥ぎ取りながら育真はそんな事を考える。次はどこかなと、育真が周囲の索敵をしながら迷宮を進んでいき、見つけ次第に次々にそれを射抜いていっていた。



「あ、流石にただの木の矢だと数回で限界か」



 また一匹新しいゴブリンが出てきたのを見て矢を射った所、頭に吸い込まれるように突き刺さった瞬間に矢の半場からぽっきりと折れたのが育真には見えた。使った矢はその都度回収して使いまわしていたがまぁ持った方だなとぼやきながら次の獲物を探していく。

 育真が迷宮に入ってからすでに六時間。



「(日が暮れる前に帰りたい所だな、まっこの調子でいけば問題なく帰れるだろうから適当にやるか)」



 育真はまだ明るい青い空を見上げながらそんな事を考える。時折申し訳程度にある罠を面倒ながらも解除しながら迷宮の中を歩き回る。

 そんな時だった。



「っ!」



 育真が突然駆け出し始める。



「(血の匂い! 結構濃いぞこれっ!)」



 血の匂いを感じ、駆けだしたのだ。その匂いは風に乗り偶然育真の鼻に僅かに届いたのだろう、育真が駆けだしてから数分もの距離がその血を流す者と離れていたのだから。育真は微かにまだ生きて動いているその人影を見てそれにおそいかかっているゴブリンの姿を確認する。



「(ゴブリンは三匹、人影は……一人? おい、まさかソロで潜ってたのかよ!)」



 自分の事を棚上げに、育真は馬鹿だっと思いながらまたナイフで斬りつけられる死にかけの人影に向かう。血がなお零れ落ち、倒れる人影の動きが徐々になくなっていくのが目に見えて解った。

 そして他のゴブリンが止めをと言わんばかりにナイフを振り上げた時に育真は間に合った。



「っ!」



 走ったままの勢いをそのままにナイフを振り上げたゴブリンの腕を斬り飛ばす。首を飛ばした所でその手の動きで振り下ろされる危険があるからと、命よりもまず倒れている人影に攻撃が加えられない方法を選んだのだ。



『GYAGYA!?』



 腕を斬り飛ばされたゴブリンは一瞬何が起きたのか理解が出来ておらず、血が噴き出してからそれに驚き戸惑い、痛みを感じ始めたのか悲鳴を上げる。続いてそれに気づいた他のゴブリンも育真に気付きそちらを睨み付けて来た。



「(間に合った! まだ息はあるな? っと、お前等は邪魔ださっさとくたばれ)」



 倒れた人影に息がまだあるのを確認しホッとしながら、無傷の二匹が育真に向かってナイフを振り回してきたので難なくそれを躱し、すれ違いざまにその首を斬りとっていく。弓は背中に背負い、今は腰に差してあったショートソードを使っている状態だ。

 そしてすぐさま倒れ悲鳴を上げているゴブリンに近づき首を斬り落として絶命させ、急ぎ倒れている人影に駆け寄った。



「おいっ、意識はあるか! おい! くそっ! 意識がねぇのかよ、ったく、恨むなよ?」



 近づき呼びかけその声に何の反応も返さない、それに毒づきながら育真は倒れた人影の近くに腰を下ろし、片手で抱き上げマジックリングからポーションを取り出していく。そしてそれを自分の口に含み倒れている人影の口へ直接流し込んでいく。

 中々呑み込まない中、辛抱強く何度も繰り返し二本のポーションの中身を流し込む。



「悪いな」



 育真は一言そう謝りながら倒れていた人影の衣服を府がしていく。そして血に染まる白い肌が露わになっていく。見た所まだ子供、良い所中学生か下手すれば小学生位に見える少女だ。顔立ちを見ても幼さをまだ残しており、その胸だけはその見た目に似つかわしくない程の大きさを持っている。

 だが今はそれをじっくり眺めている場合などではないと、育真はその脱がした衣服を地面に敷きその上に少女を仰向けに横たえた。



「集え集え空気の水よ、集いて此処に具現せよ」



 育真がその背中に手を向けながらそんな言葉を投げると、掌の先から水が溢れ傷口を洗い落としていく。



「重ねて集え、風よ光りよ害なる物をそこから除け」



 傷口と共に血塗れの肌が綺麗に水で流れ落ちた後、育真は続けて言葉を投げる。すると次はその傷口の周りの水を風が弾き飛ばしていき、傷口が輝きながら何かが消えて行っている光景が広がっていく。

 そして光が収まると育真はマジックリングから薬草と包帯を取り出し、薬草でナイフで刺され穴が開いて傷ついている背中の傷口をふさぐように置く。

 そのまま少しなじませるように幾つもの薬草を傷へと当てた後、きつくなりすぎないようにと包帯を巻いていく。その時に僅かに胸に手が振れたりしてその度にきちんと悪いと、意識の無い相手に謝っているあたり育真も律儀な物だろう。

 包帯を巻き終えた頃には失血も止まっており、包帯が赤く染まる様な事もなかった。地面にタオル代わりに敷いたせいと、元よりナイフで刺され血塗れの上にボロボロになっていた衣服を見ながら育真はどうした物かと考える。

 このまま放置は出来る訳もなく、このまま抱えて帰るというのも聊かこの子に悪いだろう、そんな事を考えていた。仕方ないと呟きながら育真は自分のマジックリングの中から毛布を取り出し少女に被せ覆っていく。



「取りあえず起きるのを待つとして、この服はどうするかなぁ」



 少女は取りあえずこれで良いというよりもこれ以上どうしようもないと思いつつ、育真はそのボロボロになった衣服を見る。そして考えても仕方がないかと諦めそれを少女の近くに水で一度軽く洗い、風で乾かした後に少女の上へとそっと置いておくことにした。

 少女の息は徐々に整い、一時間もした頃にはゆったりとした寝息を立てるようになっていく。それを見て育真はいつになったら起きる事やらと思いながら下手したら今日は此処でキャンプかと暮れ始めた空を見上げるのだった。

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