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「うわぁーっ」

 すぐ近くで、ラディックの悲鳴があがった。慌ててサグレスがそちらを見るとラディックは半分溺れかけている。

「大丈夫か?!」

 向きを変えようとしたサグレスにもすぐにその理由が飲み込めた。向かおうとした方向とは別の方へ体が強く引っ張られていく。

 体が船に向かって引き寄せられて行くのだ。もちろんまともに泳げるはずは無い。ただ引かれるだけならともかく、体は時折深く水中に引きずり込まれ、油断をすれば海水を飲む羽目になる。運良く海面に顔が出た時に合わせて浅く呼吸を取るぐらいしかなすすべが無い。良く見れば、いつの間に取り付けたのかサグレスの体にロープが巻かれている。もちろんそのロープの先は、「我が女神号」の甲板に消えている。恐らく全員同じ状態なのだろう。既に周りを見る余裕はサグレスには無かった。


「やはり、泳げないか……」

 イーグルは張り切ったロープの先を見つめながら呟いた。そこにはグロリアの頭が浮かんだり沈んだりしている。しかし、イーグルの言葉の調子はそれを見てそれ程深刻では無い。

「暢気な事を言っている場合ですか。そんな事が出来るのはあの人ぐらいなものです。早く何とかしないと……」

 エスメラルダはヴァーサ副船長の方をうかがいながら、小声で言った。強い初夏の日差しが<我が女神号>の真っ白な帆を煌かせていた。


(こんな事で死ぬのか……)

 サグレスはぼんやりとそんな事を考えていた。目の前の光景は今は海中である。とっくに泳ごうなどという気力は失せ、今はただ僅かなチャンスに呼吸を取ること以外は引かれるに身を任せている。

(みんなは?)

 しかし辺りを見まわしても、それらしい姿は確認出来ない。

 と、突然……

(ぅわぁぁぁぁぁぁっ!)

 何度目かに海中深く沈んだサグレスの目に何か大きな姿が広がった。そのままだと激突しそうと判断し、慌てて泳いで体をかわす。

(??)

 サグレスは苦しいのも忘れて目を凝らして見ると、それは大きな鷲だった。

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