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 室内に光が射し込んでいる。痛む頭を押さえて、エスメラルダは起き上がった。記憶が曖昧で、周囲がぼんやりと見える。それでも、ゆっくり立ち上がるとふらつく体を支えながら甲板に向かった。


 エスメラルダが甲板に出ると強い陽射しが目を焼いた。太陽の傾きから午後の早い時間だと思われる。目が慣れてきて最初に見えたものは甲板に横たわる士官候補生達だった。

「……どう……したんです!?」

 慌てて揺り起こそうとした時に、舳先から声が掛かった。

「よせよせ。遊び疲れて眠っているだけだ」

「え?」

 エスメラルダが手近にいたサグレスを見ると安らかな寝息をたてている。舳先ではイーグルとシークラウドが眠っていた。こちらはどうやら酔いつぶれているらしい。イーグルは舷側に、シークラウドはゲオルグの背中にもたれていた。あたりには酒瓶が転がっている。

「どうして……?」

「風が無いんでな。修繕は終わっているはずだ」

 声の主はゲオルグだった。午後の日差しが眩しくて、エスメラルダにはその姿がはっきり見えない気がする。すべての帆が張られているが、どれも重く垂れ下がりそのままゲオルグを隠してしまいそうだった。

「風が……無い?どの位ですか」

 エスメラルダが手を伸ばしてもこそとも空気が動かない。ゲオルグは背中に凭れているシークラウドを起こさない様に立ち上がった。

「さぁ。そろそろ2日半って所だろう」

 ゲオルグは暢気に大きく伸びをした。そんなに伸びたら包帯が解けるのではと頭に浮かぶが、口にはしない。

「そんなに……」

「こればっかりは仕方が無い。海の神が他の獲物を見つけるまでは……とかいうよな」

「えぇ」

 だんだんと寝つく前の記憶が甦って来た。

「そういえば、随分な事を……」

「よく眠れたか?休む事も長い航海では大切な仕事だ」

 飄々と言われて、エスメラルダは苦笑した。すべてが上手く行く気がしている。大きな安堵感がエスメラルダを包んでいた。

 舳先にもたれながらゲオルグは呟いた。

「お前が呼んだらスレイ(西風の精)が来るんじゃないか?」

「スレイじゃ国に戻ってしまいますよ」

「そりゃそうだ」

 二人は声を立てて笑った。

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