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 私室の奥で一人になってからもエディラの怒りは収まらなかった。心得たもので侍女達も姿を見せる事は無かった。

「あれで、私の護衛だなんてどういうつもり?」

 エディラにはソルランデットのやる事なす事が気に入らなかった。エディラより2歳年下という事を割り引いてみても、あの頼りなさは我慢がならない。

「あの子は本当にシスヴァリアスの子なのかしら?今頃ダイウェンが泣いているわ」

 ひとしきり喚き散らし、建国の英雄それぞれに怒りをぶつけおまけにクッションを壁に向かって投げつけてみても胸は晴れなかった。しかし、ふと我に返ったところで母とのやり取りを思い出した。

「あんな子でも、アーディよりはまし……よね」

 ふと、若いアーディの白い整った顔を思い出して、エディラの心は冷えた。窓外に目をやると、夏の青い空が輝いている。

「外へでも、行ってみようかな……」

 ぶるっと身震いをすると、エディラは立ち上がった。


 目立たない服に着替えて部屋を抜け出したエディラは、誰にも見とがめられることなくシェリアースの庭園へ足を運んでいた。女官達は先程の癇癪を恐れて暫らくは近寄らないはずだ。庭園はすっかり夏の暑さに包まれているが、水音が涼しさを演出している。エディラはこの庭園の奥にある抜け道を通って、城外へ抜け出そうと思っていた。しかし、意外にも先客がいる事に気付いてエディラは物影に身を潜めた。姿を見なくても判る。柔らかな竪琴の音色が響いていた。エトワールだった。大陸人に良くある暗い色の髪が風に揺れている。

 エディラはこのエスネンの若者が大嫌いであった。いくら現在は一人身とはいえ、母の愛人と噂される者を12才の少女が好めるはずが無かった。


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