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 2つに裂けた帆は風の呪縛から放たれ、大きくはためいた。船体にかかっていた強い力が弛み、今までの大きな揺れが嘘のようにおさまった。上方にかかる力が減った事で、<我が女神号>は船体の安定を取り戻したかに見えた。しかし、依然として海は大きなうねりを続けている。

「大丈夫?」

 よろよろとシナーラが立ち上がった。

「あぁ」

 続いてサグレスが立ち上がろうとした時だった。ちょうど、うねりの最下端にあたっていたのが災いした。巨大な高波に襲われた<我が女神号>の甲板は大きな波流に飲みこまれてしまった。誰もが頭まで海水に浸かり引き波に掬われた。皆、ロープがあったために辛うじて海に引きずり込まれる事は無かったものの、その暇が無かったサグレスとシナーラは背後からまともに波に攫われた。

 一瞬の事だったが、皆には長い時に感じられた。シナーラは冷たい水の中を流されて行く。誰もがなすすべが無いと悟った時、いつの間に巻き付けたのかゲオルグは左手を手近なロープに巻き付け、空いた手でシナーラをしっかりと抱き止めた。しかし、その横を無常にもサグレスが流されて行く。シナーラとサグレスは互いに手をいっぱいに伸ばしたが僅かに指先が触れただけで、サグレスの姿はあっという間に波間に見えなくなってしまった。


「サグレーース!!」

 水の引いた甲板には短剣が突き刺さっているだけで、サグレスの姿はどこにも無かった。シナーラが慌てて舷側に駆け寄って海上を探すが、暗いうねりの他には何も見えない。船は尚も揺れている。

「よせ!」

「でも……!」

 飛び込もうとしたシナーラをゲオルグが止めた。依然としてサグレスの姿は見えない。


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